フランス書院文庫 官能大賞コンテスト応募前の改稿作業を振り返って
応募からしばらく時間が経ったので、次回のためにも今回の執筆と改稿作業を振り返っておこうと思う。
今回のコンテストに向けて、初めて本格的な長編官能小説を書き上げた。総文字数はおよそ156,000字、自分の欲望をすべて詰め込んだ「性癖の闇鍋」。結果、完成した瞬間は大きな達成感があった。しかし、いざ「賢者モード」で作品を見返してみると、不満な部分が次々と目につき始めた。
そんなとき、たまたま目に留まったのが、わかつきひかるさんの「文章を仕事にするなら、まずはポルノ小説を書きなさい」 <https://amzn.asia/d/a120Auu> だった。試しに購入して読んでみると、そこには官能小説を書く上での実践的なアドバイスが多数書かれていた。また、わかつきさんのnote <https://note.com/wakatukihikaru/n/ndc8a70d255db> を購入して読み込んだところ、「応募用小説としては避けるべきこと」が数多く書かれていた。自分の原稿は、まさにその“やってはいけないこと”をかなりやってしまっていたのだ。
フォーマットの問題
まず最初に直面したのは、基本的なフォーマットの問題だった。
私はウェブ小説投稿サイトでの執筆経験しかなかったため、紙のコンテスト用原稿のルールを知らず、Word原稿の名前と題名を黒枠で囲んだり、「!」の後すぐ改行したり、「」の前に余計な改行を置いたりと、いわゆる“ウェブ小説的な書き方”をそのままやってしまっていた。これらはすべて修正対象になり、まずは原稿全体のフォーマットを整えるところから始めた。
構成上の課題
次に問題だったのは、作品の構造だ。
私の初めての長編は、時間軸があちこちに飛び、回想が頻繁に入り込む作りになっていた。また、最初の濡れ場までが約6,000字と長すぎた。官能小説としてはテンポが悪く、読者を引き込む前に離脱されかねない構成だった。
さらに致命的だったのは、ターゲット読者を意識していなかったことだ。
想定読者層は「45歳以上の、家庭を持つか独身の、中間管理職から非正規労働のサラリーマン男性で、理不尽な社会人生活によるストレスを溜め込んでいる者」。にもかかわらず、私は個人的な趣味でハードコアポルノやオカルト要素を大量に盛り込みすぎていた。改めて読み返すと、読者が“引いてしまう”要素がかなり多かった。
取捨選択の基準
そこで一念発起し、作品の「本質」を見直すことにした。
わかつきさんの本やnote に書かれていた「最低限ここは守ってほしい」を参考に、長編を短編に改稿する決断をした。
•過激なバイオレンス描写(ナイフでの脅迫・過度な鞭打ち・シャワーホース入れて水浣腸など)は削除
•次回作への伏線になるオカルト要素はカット
•想定読者が共感しづらい、悲惨すぎる状況描写は極力抑える
•サブヒロイン視点のエピソードを大幅に削除
•コメディ寄りのシーン(男性器ハンマー投げエピソードなど)も泣く泣くカット
結果として、登場人物も整理され、メインヒロイン一人に焦点を絞ることで、物語はシンプルになった。
再構成とプロローグの導入
構成を見直す過程で、プロローグを新しく追加した。
ここで「ヒロインの提示」「物語の概要」「読者を惹きつけるフック」をコンパクトに盛り込み、最初の濡れ場までの距離を短縮した。また、説明的な文章を削り、モブキャラの会話や行動で背景を“察せられる”形に変更した。
例えば、ヒロインがなぜ調教されているかについて、以前は延々と設定を説明していたが、今では一文で済ませている。
「極めて多額の寄付金が必要だから」——それで十分だった。
改稿を終えて
最終的に、156,000字あった原稿を大幅に削り、なんとか短編に近い中編サイズまで縮めることができた。結果として、視点はヒロイン中心に統一され、物語のテンポも改善されたと思う。
そして迎えたコンテスト。一次審査を無事通過したときは、本当にホッとした。カテゴリーエラーを起こさず、応募要項に沿った形で仕上げられた証拠だ。もちろん、この先どうなるかは分からない。だが、今回の経験を通じて「自分の趣味と読者ニーズのバランス」「コンテスト応募用小説の書き方」を多く学べたことは間違いないと思った。
あの作品がどこまで行けるのか?
結果が今から楽しみで仕方がない。
しかし、彩花パイセンの「男性器ハンマー投げ」エピソードは書いていて楽しかった。
いつかなんかの形で絶対に使おう。