第一話・老い先短い老人にだって、若い時代がある
異界大陸レザリムスの東方地域『牛喰村』──天然温泉が名物の、この村に住む一人の老婆の家に、遠縁の孫が訪ねてきた。
十五~六歳の孫娘は、牛の角と牛の尻尾を振りながらスナック菓子代わりの、ムギワラをモグモグ食べている。
夏休みを利用してやって来た牛娘の孫は、夏休み中は、祖母の家に滞在するコトになっていた。
牛娘の孫が整理をしていた屋根裏部屋から持ってきた、埃まみれの宝石箱を机の上に置いて言った。
「おばあちゃん……夏休み中に泊まる、屋根裏部屋を片付けていたらコレが出てきた」
鼻輪を付けた牛娘は、開けた宝石箱を祖母に手渡す。
手渡された宝石箱の中を見た、元剣拳士の『ファイナル・アン・サー』は、シワが刻まれた両目を細めた。
「こんなところに入っていたか……いくら、探しても見つからなかったのに」
牛娘の孫は凶器にもなりえる黒光りしている角を布で磨きながら──宝石箱の中にあるモノを懐かしそうに眺めている、祖母に訊ねた。
「おばあちゃん、その古い写真なに?」
「これかい、昔一緒に旅をした仲間と一緒に撮影した、記念写真だよ」
アンは宝石箱の中から取り出した、写真立てを机の上に飾る。
そこには、セピア色をした写真の中に、娘時代のファイナル・アン・サーと、その横にある戦車が写っていた。
戦車の乗員は軍服姿の女性エルフで、アンの隣には気弱そうな女性戦士が立っていた。
レザリムスの東方地域は現世界との交流が昔から盛んな地域で、さまざまなアチの文化が異世界に流れ込んできていた。
牛娘の孫が祖母に、古い写真について訊ねる。
「その写真に写っているの誰? その戦車またいなのナニ?」
「この戦車はね【真核機アルフヘイム】世界を向こうに回して戦った戦友……神にも悪魔にもなる、神魔機とも呼ばれていた」
アンの長い昔話がはじまった。
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小国の城の地下で爆風が吹き荒れる。
「娘ファイナル!」
ファイナル・アンが横に振るった剣から発せられた、剣波の衝撃波がレンガの壁を破壊する。
それを見て逃げ出す城の兵士たち。
「冗談じゃねぇ! あんな化け物娘と、まともにやり合えるか!」
「止められるワケがねぇだろ、城の主が相手をしろよ!」
逃げていく兵士たちを眺めながら、左右の髪色が異なるファイナル・アンは鼻で笑う。
「腰抜けどもが……さてと、隣国の王さまから奪い取る依頼を受けた、異世界の戦車はどこにあるかな?」
アンがそう呟いた、次の瞬間──壁を突き破って、紅色の戦車が現れた。
思わず叫ぶアン。
「これが【真核機アルムヘイム】」
飛び下がったアンが剣を横に振るう。
「娘ファイナル!」
剣波は戦車の装甲に弾かれる。
「なんて、固い装甲」
砲口がアンの方を向いて火を噴いた。
間一髪で弾丸をかわしたアンの横をかすめた、弾丸は城の壁に大穴を開ける。
アルムヘイムから拡張器を通して、女性の声が聞こえてきた。
「邪魔をするな……これから、世界を敵に回した戦いをするんだから……邪魔をしたら、おまえも倒す」
そのまま、アルムヘイムは壁の大穴をさらに拡大させて、城外に走り去ってしまった。
剣を鞘に収めたアンが苦笑する。
「世界を敵に回した戦いか……おもしろいコトを言う」




