プロローグ
やあ、こんにちは。毎日楽しく過ごしているかい?
……そうかいそうかい、楽しく過ごしているなら、それは結構なことだ。うん、なによりだよ。
……ん? 私はそうじゃない?
毎日同じことの繰り返しで、つまらないって?
いつも「何か楽しいことはないか」って、探してばかりいると。
ほうほう、「俺は毎日がつらい」と。
「生きるのは、どうしてこんなにつらいのか」って?
――そうだよな。
人によって、全然違うもんな。
よく言うじゃないか、「この世界はあなたの認識でいかようにも変わる。だから、ポジティブに考えよう」ってさ。
でもさ、前向きに生きられる人って、それだけで幸運だよな。そりゃ、楽しいさ。世界が明るく見えるってのは。
でも、つらいことが多いと、どうしてもネガティブになっちまうんだよな。
ネガティブだから、世界がつらく見えて……つらいから、もっとネガティブになって……。
そりゃあ、ループだよな。
「ポジティブに考えられたら、誰も苦労しない」――まさにそのとおり。
現代は、「つらいな」って言ってる人の方がずっと多い気がするよ。
ところでさ、「大人」なんて、本当はどこにもいないって知ってた?
子供のころは、身の回りにいっぱいいたよな。
両親、先生、近所の誰か――「大人」って、子供とは違う存在に見えてた。
ちゃんとした経験を積んでて、立派で、正しいことを知っている人たち。
もちろん、全員がすごいわけじゃないけど、少なくとも一人や二人は、「この人は尊敬できるな」って思える人がいた。
でも、自分が大人になってみると……あれ? ってなるんだよ。
いつまでたっても、「ちゃんとした大人」になれる気がしない。
周りを見れば、自分よりすごい人は山ほどいる。上を見たらきりがないし、かといって下を見て安心するのも違う気がしてくる。
結局のところ、人ってのはいつまでも『途中』なんだよな。
いつまでも「なりたい自分」があって、でもそこにはなかなか届かなくて。絶望するか、それとも「そういうものだ」と受け入れて、心穏やかに歩き続けるか。多分、「この世界はあなたの認識でいかようにも変わる」っていうのは、そういうことなんじゃないかな。
……何か、掴めたかい?
ん?よく分からない?
そうか、それなら――もう少し、具体的な『例え話』をしようか。