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追放されたおっさん、ハズレスキル【構造解析】で崩壊寸前の貧乏村を開拓する〜俺を捨てた勇者たちが今更泣きついてきても、もう遅い〜  作者: あもる
村の復興編

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22/37

21,タイムリミット

 工房は、俺がこの村に来て以来、最高の熱気と喜びに包まれていた。


「すげえ……本当に、光ってる……」

「これが、魔石……。伝説でしか聞いたことのねえ代物だぞ……」

「やったな、ガス!」

「へへ……俺は、ケンさんの言われた通りにしただけだって!」


 テーブルの上に並べられた、数個の輝く魔石。


 その奇跡のような光を、仲間たちが、代わる代わる手に取っては感嘆の声を漏らしている。


 ドルゴは「うむ、完璧な仕上がりだ」と、我が子のように魔石を眺め、ボルガですら、その口元に珍しく満足げな笑みを浮かべていた。


 皆が、成功の余韻に浸っている。

 当たり前だ。俺たちだけの力で、この世界の理を覆すような、歴史的な大発見を成し遂げたのだから。


 だが、俺の頭の中は、すでに次のステップへと移行していた。

 手帳を片手に、この数週間のデータを整理し、計算を繰り返す。


(スライムの培養速度は、一日あたり……。癒やし草の消費量は……。魔石一つを錬成するのにかかる時間は、約半日。そして、橋を浮かせ続けるのに必要な、一日の魔石の消費量は……)


 計算を進めるにつれて、俺の顔から、仲間たちと同じような笑顔が、すうっと消えていくのが分かった。


 導き出された数字は、あまりにも、冷酷だった。


「ケンさん……?」


 俺の異変に、最初に気づいたのはリーリエだった。


「どうかしたのですか? 顔色が……。魔石に、何か問題でも?」


 彼女の声に、ドルゴやボルガ、ガスの視線も、一斉に俺へと集まる。


 工房の空気が、再び緊張に支配された。


 俺は、一度、大きく息を吸い込むと、手帳を閉じて、仲間たちに向き直った。


「朗報と、悪い知らせがある」


 俺の言葉に、皆がごくりと唾を飲む。


「朗報は、俺たちが造り出した魔石のエネルギー効率が、俺の想定を遥かに上回っていたことだ。これなら、間違いなく、あの巨大な橋を浮かせ続けられる」


「おおっ!」と、ドルゴが安堵の声を上げる。


「だが……」


 俺は、続ける。


「悪い知らせは、その魔石の生産効率だ」


 俺は、計算結果を皆に共有した。


「粘菌の培養、薬草の収穫と加工、そして魔石の錬成。今のやり方で、この村の労働力を全てこの作業に注ぎ込んだとして、俺たちが一日に生産できる魔石は、たったの二つだ」


「そして、橋を一日維持するために必要な魔石の数は、三つ」


「……どういう、ことだ?」


 ガスが、震える声で尋ねる。


「言葉通りの意味だ。俺たちの生産量は、橋の消費量に追いつかない。今ある備蓄と、これからの生産量を全て合わせても……」


 俺は、結論を告げた。


「この橋のエネルギーは、一年もたない。計算上は、もって十ヶ月がいいところだ」


 しん、と静まり返る工房。

 せっかく手に入れた希望が、目の前で、砂のように崩れ落ちていく。


 一年足らずでエネルギーが尽きる橋など、造る意味があるのか?


「……無駄骨だった、というわけか」


 ボルガが、自嘲気味に、吐き捨てるように言った。

 その言葉が、俺たちの心を、絶望の淵へと突き落とした。


 しかし、その時だった。


「いいえ、無駄骨ではありません!」


 凛とした、リーリエの声が響いた。

 彼女は、強い意志の光を目に宿し、うつむく俺たち仲間を見回した。


「十ヶ月……。十分すぎます」


「り、リーリエ……?」


「それだけの時間があれば、この村は必ず変われる。町との交易を再開し、新しい産業を興し、次のエネルギー源を見つけることだってできるかもしれない!」


 彼女は、俺の目を、まっすぐに見つめた。


「ケンさん。これは、破綻までのカウントダウンじゃない。私たちが、村の未来を自分たちの手で掴み取るための、猶予です!」


 リーダーとしての、リーリエの決断。

 その言葉は、俺たちの中に、再び闘志の火を灯した。

 そうだ、不可能を可能にしてきたのは、いつだって、この諦めの悪さだったじゃないか。


「……ふん。面白い」


 ボルガが、不敵に笑う。


「乗ってやろうじゃないか、その無謀な賭けに」


 ドルゴも、ガスも、力強く頷いている。

 俺は、そんな頼もしい仲間たちの顔を見回し、ニヤリと笑った。


 こうして、俺たちは「一年未満」という、あまりにも厳しいタイムリミットを背負いながら、橋の建設へと突き進むことを決意した。


 俺たちの、本当の戦いが、今、始まった。

俺たたエンドってやつですね。

あ、橋はまだ完成してないので、村の復興編あと少し続きますよ!


続きが気になる方!このお話に満足してくださった方!

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