どんな願いも叶えてくれる魔神
モクモクと黒い煙が立ち上るのを魔法陣の中から眺めていた女性は歓喜と興奮に体を震わせていた。
ついにどんな願いも叶えてくれる魔神の召喚に成功したのだ!
煙の中から現れた魔神は言う。
「吾はどんな願いも叶える魔神だ。どんな願いでも一度だけ叶えてやろう。さあ、願いを言え」
女性はゴクリと唾を飲み込む。そしてある願いを口にした。
それからしばらくの時間が経ち、女性の前にまた煙が立ち上る。
「吾はどんな願いも……」
「あ、ごめん。醤油とって。あとこれからご飯だから座って」
魔神は食卓についている女性の前に醤油の小瓶を置くと、自分も女性の向かいのいつもと同じ席に座る。
いただきますと手を合わせる女性に合わせて手を合わせた魔神に対して女性はこう尋ねた。
「ところで願い言うときのその召喚演出、スキップとかできないの?」
「可能だ。吾はどんな願いでも叶えるからな」
「あ、じゃあ次からスキップで」
願いによりどんなに食べても太らない上に健康も害さない女性は大盛りのご飯を食べながらスマートフォンを確認し、あ〜、と残念そうな声をあげる。
「抽選ハズレたぁ……」
「願えば当たったことにしてやれるぞ」
しかし女性は首を振りながら笑い、こう答えた。
「ハズレるのも楽しんでるから良いよ。チートっていうのは持ってるだけで楽しいもんだし」
そして明日からの仕事も面倒だなと愚痴る女性の姿を、魔神はなんとも言えないような表情で眺めていた。
女性が魔神を召喚したときに叶えた願いとはもちろん「その願いを無限に叶えれるようにして」である。
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