騎士は愛しの姫の重装を剥がす。
機械歴2270年。
「末の姫、ジバクシロ」
そう呟いた転がる王の首。
ワシは、それを怒りに任せて、硬い金属の義足で踏み潰した。
硬い基盤の破片が床に散らばる。
破片は青い冷却液と絡まる。
王がロボットだったことを改めて確認した。
しかし、怒り、混乱している間もなかった。
「ここから出ていけ!反逆者ども」
その言葉とともに姫が玉座のステンドグラスの窓を突き破って入ってきた。
姫は眉間に皺を寄せて、レーザーブレードを振り回していた。
胸の心臓コアに張り付くようにある青の自爆装置を見せながら。
手当たり次第、姫の自爆を止めようとする周りの機械や人間を切っていた。
切られた全員機械や義体だから真っ二つにされようがほとんど問題はない。
けれどそれを持たない人間は距離をとらせて逃した。
王を油断させるためにワシは本体で城に来ていた。
ワシはもちろん逃げるべきなのじゃがここで姫が自爆してしまったら本当に取り返しがつかない。
義体は本体ほど器用でないし、ここに連れてくるまでに時間がかかりすぎる。
ならここでやるしかない。
姫の自爆を止めようとする仲間を囮に、姫に一気に近づく。
「こんなもの外せ!」
姫から自爆装置を取ろうとしたら、胸の装甲を閉じられた。
抵抗する邪魔な姫の手足を力の限りワシは引きちぎっていた。
そこからは、人の筋肉ではなく、金属の導線が垂れる。
たとえ、ほとんどが機械であれど、わしにとっては愛しの姫だ。
自爆なんてさせない、させてたまらるか。
床に押さえつけて、胸の装甲を引き剥がした。
心臓のコアに張り付くようにある自爆装置。
それを爆発しないように壊す。
何度も自爆しようとしたのをワシは止め見たことがあるだからわかる。
けれどその威力は強力だ。
自爆すれば姫の命さえない。
「こんなものまでつけて、ティオラは本当に死ぬ気なのか。」
電気信号の停止によって爆発する仕組みの爆弾。
姫が心臓を損傷して死ねば爆発するようにできている。
父様を守るために必要なものなの。奪わないで!」
「貴様の父親は、このワシ、ガロナスが殺したんだ。最後まで金や権力、過去の女にすがりまくった愚かな男だった。」
「父様も母様も馬鹿にしないで!」
姫は動かない体で強く反論する。
あまり動かないで欲しい。
やっと爆弾を心臓から分離できた。
安心して、ワシは笑った。
あんなに姫を縛っていたものを取ることができた。
今はわしの電気信号で動いている。
あとは遠くに捨てるだけだ。
「そうか。けどしばらくおやすみ。愚かな死にたがりで、頑張り屋さんの姫」
そう言って姫の首に電気を流して気を失わせた。
姫は力なくなり、気絶した。
爆弾が張り付く手を姫が入ってきた割れたステンドグラスに向けた。
そうして、腕を切り離して空にロケットパンチした。
反乱は王のエネルギーが、少ない夜に決行した。
真っ暗な空をワシの腕が飛ぶ。
とにかく威力が強いことはわかっていたからできるだけ空高く宇宙に飛ぶようにはした。
もうそろそろ、腕の燃料が切れて、電気信号が止まり、爆弾が爆発する。
ドンと耳のセンサーが花火のような音を拾う。
衝撃波もきて、城の窓が揺れた。
空には、もう一つ小さな太陽ができたのかと思うくらい赤い光があった。
飛ばした方向はモンスターだらけの誰もいない海だし、大気圏に発信機では出ていたから、ワシのバラバラになった腕の部品も燃え尽きるだろう。
ワシは自分の主である王に手をかけた。
そして、その子供の愛しの姫の命を救うことができ、手に入れた。
次に姫が目覚める時は、姫を幸せにする。
赤い光に照らされた魂が抜けたように気絶する姫の頬を撫でた。