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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【運命の輪による二人の巡りあわせ】
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第六話 否定と新しい技術

朝、レオナは自身の魔術の腕を磨いていた。

オーソドックスな魔法ながら彼女の魔法の技は見事。

そんなレオナのもとにダグはゴーレムのモナと共に現れる。

モナは最新式のゴーレムで本物のグリフォンとそっくりだった。

改めてMAGのもたらす技術の急激な進歩と。

旧来の魔法との差にレオナは動揺を隠せずにいた。

朝日が雪原を煌かせている。

 

傾いて差す冬の()は雪解けさせない程度の優しさしかない。

 

外に出たければしっかりとした佇まいでないと。

 

「やっぱり少し寒いわね」

 

ダグに起こされるまでもなくレオナは目覚めていた。

 

PMAGウォッチは画面上で朝の六時を表している。

 

着替えを済ませ屋外で朝の日課を始めようとしている。

 

魔法の修練だ。

 

「サラマンド」

 

右手を前にかざしレオナは火のための詠唱をする。

 

火トカゲが描かれた魔術(スペル)紋様(グラフ)が出現し小さな火球が放たれる。

 

飛んでいった火球は数秒後には何もない虚空へと消え去った。

 

「いい感じ」

 

やっぱり魔法といったらこの感じよ。

 

詠唱しレオナは自らの魔法を実感した。

 

MAGではない純粋に人が行使する魔法だ。

 

「ちょっと本気出しちゃおうかな」

 

深呼吸しレオナは精神を研ぎ澄ませる。

 

先ほどより高度な魔法のために魔力を練り上げるためだ。

 

「オルフェ」

 

両手を前にかざしレオナは幻奏の詠唱をする。

 

勇敢な奏者が描かれた魔術紋様が出現し周囲が藍色に染め上がる。

 

海原を彷彿させる雄大なメロディが流れ出す。


レオナの足元が雪から波かおる砂浜に変わっていく。


雪山のオーシャンコンサート。

 

彼女の周囲は幻想の海による演奏会場と化していた。

 

「すごいですねお客様」

 

「ダグ。あれ、どこにいるの」

 

ダグの称賛にレオナは魔法を止めた。

 

声の主の姿が見当たらないのも理由の一つだ。

 

「上ですよ、上」

 

「上って、うわあ」


グリフォンじゃない。

 

レオナが見上げた先には灰色の獣に(またが)ったダグがいた。

 

(たか)の頭と翼、大きな獅子の体。


幻獣グリフォンだ。

 

「降りたいので退()いてもらえると助かります」

 

「えっ、あ、うん」

 

ゆったりとダグを乗せたグリフォンが舞い降りる。

 

それに併せて幻想の海が消えていった。

 

「灰色のグリフォンなんて私初めて見た」

 

「いえ、これはゴーレムのモナです」

 

「ゴーレムって。嘘、本物そっくりじゃない」

 

こんな生き物っぽいゴーレムがいるの。

 

レオナの固定概念が崩れた。

 

彼女は自身の記憶を振り返る。


ゴーレムといえば無機質な魔導機械や人形。

 

しかし、今眼前にいるものは生き物にしか見えない。

 

「モナ、お客様にご挨拶だよ」

 

「グア、グア」

 

アヒルに似た耳障りな低い唸り声をモナはあげる。

 

「これも最新のMAGによるものなの」

 

「そうですよ」

 

「へえ、そうなんだ」

 

「それよりもお客様、朝食にしませんか」

 

「うん。そうね。お腹空いてきたんだ」

 

モナとレオナはミラージュの中へと入った。

 

その際にレオナはずっとモナの方を見ていた。

 

(私が学んできた魔法ってなんだろう)

 

従来のゴーレムとモナは一線を画している。

 

新しい技術がレオナの努力を否定する。

 

「上着をお持ちしましょうか」

 

「いい。いい。自分でやるから」


ダグの誘いを断りレオナは自分で上着を脱いだ。


料理が出てくるまでの間彼女はずっと上着を抱きしめていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

クリスマスシーズンで外は賑わい。

自分も美味しい物が食べられたらいいなと思う今日この頃です。

次回更新は12月11日の17:00になります。

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