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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【下ごしらえ3思い出と旅たち編】
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下ごしらえ47【ぼくとダグ】中編・幻獣と魔獣

流石の僕も小さかった頃の思い出を。

一字一句憶えているわけじゃないからね。

こんな感じのこと言っていたなあ、くらいの感覚で話しているからね。

っと、そうだった。

お話の続きだったね

黒いなにかを見つけた僕はその日の昼食で早速父さんと母さんにそれについて話した。


「ヘルシィ、今朝お母さんが言ったこと憶えている?」


「まあまあサーリャ。それよりその黒い犬みたいなのはまだいるのかな」


「うん、まだいるよ」


「よし、じゃあお父さんと一緒にそれを見よう。危ないかどうかはそれからだ」


「ちょっとあなたステラさんが午後に来るでしょ」


「ステラが来るのは三時過ぎだし、まだまだ時間ならある」


「もうケイン、そう言ってるけどあなたもヘルシィが見たものが気になるだけでしょ」


「バレたか。まあ泥だらけになるわけじゃないし、遠目で見るだけさ」


呆れる母さんとは対照的に父さんは僕が見つけたものに興味津々だった。


ん、レオナ。


本日二度目の「それって」ってだね。


そうだよ、ステラさんって今の魔導教皇のエメラ・ステラさんだよ。


あの人がまだ二十後半か三十くらいの頃だよ。


まだ法務枢機卿でもないし、魔導具局の局長くらいかな。


で、話戻るけど、いい?


んじゃ、戻るね。


「あれか」


「うん、あれだよ」


庭の壁の前に立って、僕は父さんと一緒に鉄格子越しに黒いなにかを五分くらい様子見した。


「特に動きもないな。よし、近寄ってみるか」


「ぼくもついていっていい」


「いいだろう。ただし、お父さんの後ろにいるんだぞ」


「うん」


寝ているのか、動こうとしない黒いなにかに痺れを切らした父さんは接近を試みたんだ。


たまらず僕もついていった。


父さんと一緒なら、なにか面白いことが分かるかも知れないと思ってね。


そうして、二人で黒いなにかへと近づいていって近くでそれを観察し直したんだ。


「ぶっ、だぐ」


僕たちの存在を察知したのか黒いなにかは起きて僕らをその単眼で見つめてきた。


どうしたのレオナ。


もうダグって分かっているんだから。


黒いなにか呼ばわりしなくてもいいんじゃないの、って。


まあまあ。


名前の由来がーーって。


えっ、もう予想できたって。


んじゃあ、言っちゃおうかな。


そうだね、近寄ってからしばらくして。


ああでもないこうでもない、と言っている父さんに後ろから僕は呼びかけたんだ。


「ねえ、この犬っぽいのなんて言うの」


「うーん、父さんが知る限りじゃ初めて見る生き物だな」


「じゃあぼくがおなまえ決めていい」


「構わないよ」


「だったら、ダグってよんでいい。だぐ、とか鳴くから」


「ダグか。いいだろう、にしても新種の魔獣か、こんな生き物見たことない」


やっぱりって顔しているな。


ところでレオナ、幻獣と魔獣の違いって分かるかい。


同じ魔力を持つ動物だけど?


うん、幻獣は比較的大人しくて。


魔獣は凶暴な動物だって。


世間的な回答で言えばそれで間違っちゃいない。


でも、より正しい答えは……。


魔獣とは魔力によって変異したあるいはそれが具現化して誕生した生物だ。


魔力の暴走や魔力の汚染された環境で生まれたり。


黒い魔力のオーラ。


つまりは善悪に関わらず強い意志が込められた魔力が動物に取り憑いたり。


強すぎる魔力が意志を持って動物や人型に具現化して動き出すから。


魔獣に対して世間の人々は凶暴なイメージを抱いたんだろうね。


実際、魔獣は危険だし。


ついでに、幻獣の定義は生まれながらにして魔力を持つ自然界の生物あるいはそれらの交配によってできた生物だ。


だから、幻獣の中にも獰猛なものもいれば畜産や交配などで人為的に生まれてきたものもいるよ。


おっと話が逸れちゃったね。


だから、初めて見る生き物のダグを父さんは魔獣として考えたんだろうね。


もっと言えば近くで魔術師が強い魔力を行使した。


つまりは僕の家の近所で物騒な事件が起こったんじゃないかって。


そっちの方面を疑っていたんだろうね。


もちろん小さかった頃の僕はそこまで考えていなかったから、難しいことばかり考えている父さんにとんでもない提案をしたんだ。


「ねえ、ダグを家で飼ってもいい」


「いやあ、そりゃあダメだろう。多分母さんが許さない」


「えええ」


「そうだ、今日ステラさんが来るから。ステラさんに一度ダグを見てもらおう」


「はあい」


こうして僕と父さんは家にもどり店先でステラさんが来るのを待った。


看板には写真も撮れる雑貨屋ってあって、写真を撮るための白い撮影部屋もあったけど。


父さんが基本的にいたのは店先で。


他国からの輸入品が主に棚に並んでいて海を渡った先の国々の機械とかも置いていたね。


憶えている限りだと。


東洋のアグニ国の香辛料を細かくするためのすり鉢。


サーモニカで採れた鉱石の欠片。


極東のヤマタイの墨絵。


新大陸のネクストリー国で発明された電球とか小さな機械とか。


どれもメロディアスには無い物ばかりで。


行商の人が来て新しい物を入荷するときはもちろんだけど。


とにかく子供の頃の僕は父さんの店にいるのが好きでたまらなかった。


その日も僕は父さんが店番をする中で商品を見ながらワクワクしていると約束の時間がやってきた。


金髪なのは今も昔も変わらないけど。


ベージュのローブをマントみたいに軽く羽織って黒いズボン姿。


今の格式ばった印象とは大違いなラフでカジュアルな服装でステラさんはやって来た。


「やっ、ケイン先輩。こんにちは」


「おお、ステラ。元気にしてたか」


「そりゃ元気が取り柄ですからね」


「相変わらずだな。それで今日は蓄音機の修理だったね」


「はい。最近ネクストリーで流行していて自分も一つ現地まで行って買ってきたんですよ」


「そして、早速解析という名の分解をしたら元に戻せなくなったと」


「まあそうなんですけど、やっぱり仕組みとか気になるじゃないですか」


「お前なあ、職業病かもしれんがもう少し物を大切に扱えよ」


「まあまあ。この国で修理できそうな所と言えば自分の思いつく限り先輩の店しかなかったし」


「うちしか知らないの間違いだろ」


「あれ、バレちゃいましたか」


「お前自分のファミリアーツ使ったけど、それで自分の腕じゃ元に戻せなかったいつものパターンだろ」


「そこまでお見通しとは恐れ入りました」


一応僕も店先にいたけど父さんとの話に夢中で。


ステラさんは持ってきた蓄音機を父さんに渡してから暇を持て余している時分に僕に話しかけてきた。


「やあ、こんにちは。ヘルシィくんだね」


「こんにちは」


「あはは、去年一度会ったけど憶えている?」


「ええと、おじさんだれ?」


「忘れちゃってたかあ。エメラ・ステラ。キミのお父さんのお友達かな」


「エメラ・ステラ、おじさん」


「ふふ、小さい先輩みたいだ」


「おじさん、あのね、ダグを見てほしいの」


「ダグ?」


疑問に思うステラさんに蓄音機を様々な角度から見ていた父さんが声をかけた。


「ああ、ちょっと家の近くに変なものが流れついちゃってね」


「はあ。それで聖騎士団には連絡は入れましたか」


「いいや、ヘルシィが飼いたいと言い出してね」


「まあ魔獣と判断されたら即処分されるでしょうしね」


「そこでだ。お前さんのファミリーアーツの出番ってわけだ」


「ええ、そんなことのためにスプリガンドル使うんですか」


「私が魔導院勤めの頃、お前を何度助けてやっただろう」


「まあ、そうですけど」


「うちの息子のためにも力を貸してくれ」


「ウルフランド様の頃から使われてきた魔法なのにな」


「おじさん、ついていってもいい」


「えっ、なんかローブ握られているし」


「ほうら、息子もこんな感じだし行ってこい」


「もう分かりましたよ」


蓄音機を調べている父さんを店に残してステラさんを幼い僕はダグの所まで案内した。


「この子がダグだよ」


「へえ、変わった生き物だね、多分魔獣だと思うし、おじさんのそばから離れちゃダメだよ」


「はあい」


「スプリガンドル」


こうして休んでいるダグの前でステラさんは、ステラ家というか。


あの人の母方の家系、スプリガンド家のファミリアーツ、スプリガンドルを発動した。


レオナも知っているかもしれないけど。


この魔法は財宝の番人の精霊の力で宝箱を具現化してそこに入れた宝を保管するんだけど。


能力はそれだけに留まらず、中身がどんな物なのか。


もっと言うと物に宿った記憶や情報まで読み取る魔法なんだ。


オープンスクールの教科書にもあるけど。


建国時の内乱の際にウルフランド様が宝箱の中に入って敵から身を守ったって伝説もこの魔法が由来らしいよ。


あっ、また話逸れちゃったね。


ステラさんのファミリアーツで現れた木造りの宝箱を……。


多分、さっさと終わらせたくて。


現在のパフォーマンスとかで大衆に見せるような。


赤や金で派手な装飾の本気で出す宝箱じゃなかったんだろうね。


あっ、でだ。


宝箱がパカっと開いて、ダグ目がけて箱の中から風が吹いたんだ。


ダグを宝箱に入れるための、吸い込むための風がね。


風が渦を巻いてダグを宝箱の中に入れると、ガシッと音を立てて箱が閉じられたんだ。


「ほっ、と。では、ちょっときみの記憶を読み取らせてもらうよ」


五分くらいかな。


ステラさんは宝箱を通じてダグの記憶を読み取ってたみたいだけど。


途中一人でぶつぶつと、ニヤついた顔で。


「これは、ほうほう」


とか。


「ふふ、なるほどね」


なんて独り言を呟いていてニヤニヤしていた。


正直幼い僕はそんなあの人がどこか怖かった。


そうして読み取りが終わったのか宝箱がまたパカっと開いてそこからダグが現れた。


するとダグに近寄らないように僕の前を手で遮ってきてステラさんはこう言ってきた。


「この子、危険はないみたいだよ」


「本当に」


僕には「動いちゃダメだよ」と言いつつ。


宝箱から解放され木の幹に体を預け休んでいるダグの所まで近寄って、その頭をステラさんは優しく撫でた。


「そうだ、危なくないと分かったし一度お父さんの所にもどろうか」


「うん」


ダグは危なくない。


もしかしたら、家で飼えるかもしれない。


このままずっと友達になれるかもしれない。


そう思ってダグを振り返って見ていた。


僕はステラさんと一緒に店にもどったけどダグを見たのはそれっきり。


うん、僕がダグを目にしたのはそれが最後だった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

魔獣について今回説明がございましたが。

黒い魔力のオーラに関しては。

善悪など関係なく強い人の強い感情。

メッセージが込められているため。

この魔力に触れて魔獣化した普通の動物が。

人語を介して人と話せるようになるケースもあります。

それでは次の更新は7/17の17:00になります。

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