下ごしらえ42【車窓編】意識外
戦いは終わったが。
敵の残骸がイクラジオの地に被害をもたらそうとしていた。
そんな状況を前にしてもMAILの上級騎士達は。
人々を守るために動くのであった。
暴走したブギーとの戦いは終わったものの。
魔力の核を失った氷雪の怪物の残骸は崩壊の一途を辿っていた。
『こっちも頑張っているが限界がある』
ショックウェーブEにより雪の怪物の体表を削ってはいるが、それでも削っているだけ。
全体を細く分解するまでには至っていない。
更に二人を悩ませる理由があった、残骸が形を留めていられる時間だ。
『なあ、バロット。あとどれくらい持つと思う』
『もって一分といったところか』
『上等だ。やるしかねえ』
残された時間はあまりない。
両腕を崩壊させた時と同じ要領でグラシャは鎧の大鋏と大針で全身を崩すつもりでいた。
そんな時。
『スプレッドマイン』
念波通信でバレルズの声をグラシャとバロットは聞いた。
同時に磁気を帯びた弾丸が数発雪の怪物に飛び込んだ。
胸に三発、両足に四発。
数秒後、電磁波と共に弾丸が命中した箇所から爆発した。
飛散した怪物の残骸はまだ雪塊ではあるもののバロットとグラシャの攻撃でも細かく粉砕できるほどだった。
もちろん二人はその意図をすぐに察して行動に移す。
「ショックウェーブE」
「らあああ」
バロットが胴体部分をグラシャが地上付近の両足の部位の雪塊をそれぞれ粉砕して、怪物の残骸の崩壊による被害は出なかった。
上空からバロットは地上の無事を確認し。
グラシャが失神しているブギーのもとまでもどったところで二人は同時にバレルズへと連絡を入れた。
『『バレルズ、お前どこにいる』』
『ん、イクラジオの聖騎士団の詰所だよ』
現在バレルズは駅から離れた地点にある聖騎士団の詰所に停めている自身の魔導車のコンテナの上にいた。
右腕の鎧に大砲を装着し、コンテナの上から狙撃していたのだ。
『二人ともご苦労さん』
『おい、バレルズそんな便利なもんがあるなら最初から使えや』
『いや、僕さっきここに来て武装したばっかだし』
『ちょっとよ、こっちは苦労したってんのによ』
『大体僕の出番はないとかグラシャ言わなかったっけ』
『ふざけんな、模擬戦より先にここで戦ってやろうか』
『いい加減にしろ、お前たち』
グラシャとバレルズの口論をバロットが諌める。
『グラシャ、バレルズに色々言うのは後だ。まずは聖騎士団の詰所に行くぞ』
『あいよ』
『犯人を忘れずにな』
『ああ』
念波通信はそこで終わり。
グラシャは雪の怪物の内部の時と同様に鎧から生えた尻尾をブギーに巻き付けて、イクラジオの聖騎士団の詰所までバロットと一緒に飛んでいった。
聖騎士団の詰所の医務室にてレオナは眠っていた。
氷雪の怪物との戦いやその残骸の散り様など。
ワッツを筆頭に聖騎士団員やMAILの者達、イクラジオの人々など
誰もが外の様子に目を奪われる中で彼女だけは眠りの中にいた。
そんなレオナの額に黒い魔力の靄が入っていた瞬間を目撃した者は誰もいない。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
前回の後書きを受け今回は聖騎士団の入団試験と制度についてです。
その前に聖騎士団はオープンスクール卒業した男女ならば。
誰でも入団試験を受けれますが。
その資格は法律により一回までと定められており。
筆記や実技として体力測定などがあります。
ここでは魔力を持たざる者であっても剣術や格闘術など武芸に秀でていれば。
試験さえ突破すれば入団できるため。
MAGが誕生する前の時代では魔法が使えない人々にとって。
安定した収入が見込める憧れの職業でした。
次の更新は7/12の17:00になります。




