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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【下ごしらえ2車窓編】
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下ごしらえ32【車窓編】グラシャ・ディアボラス

ターゲットを発見し。

グラシャは奇策に出る。

標的がそれに応じれば戦いの幕開けだ。

ラウトロボーンからイクラジオまでは時間がかかる。


前駅間であるトラトロンボからラウトロボーン以上だ。


二時間ほどかかる。


できるだけ、安全な行路を模索した結果。


崖や峠の迂回路となってしまったからだ。


しかしながら、そのおかげか。


北方のフォルティシモ山脈の河川や湖を目にできる。


冬季ならば凍りついた河川と湖が自然が作り出すガラスアートとして。


山岳鉄道の旅客者を感動させるが眠りについているレオナはそれをまだ目にしていない。


景色が綺麗なんだけどな、と。


折角の絶景にレオナに声をかけようと思ったものの。


親切心とはいえ寝ている彼女を起こすのも気が引ける上に。


なにより、これから獲物を仕留めようかという矢先に。


下手に隣で騒がれるのも面倒。


レオナに気遣ったとはいえ景色にほんの少しの間でも。


景色に見惚れていた自分にグラシャは心の中で喝を入れ。


すぐに思考を切り替えて獲物を仕留める算段を再開した。


相手は老人だがなにをしてくるか分からない。


そこでグラシャは老紳士に本日二度目の挨拶をした。


「俺の隣の嬢ちゃんを介抱してくれてありがとうな」


「えっ、ああ。ゴホン、当然のことをしたまでだよ」


実質いきなり声をかけられたも当然のため。


ブンドールはびくついたものの。


咳払いをして呼吸を整えると。


すぐに笑顔でグラシャに対応した。


「そうだ。さっきは先に名前を聞こうとしたけど、俺から自己紹介しないとな」


「別に構わないよ。無理して名乗らなくても」


「いいや、名乗らせてくれ。俺はグラシャ・ディアボラス。あんたの名前は」


強引に己の名前を口にしたグラシャに対して。


雰囲気を察したブンドールもまた名乗らざるを得なかった。


「私はブンドールです」


笑っているが。


どこか居心地悪そうに返事をするブンドールに。


グラシャは満足し。


今度はブンドールが膝に置いているチョコボンボンシューの入った紙箱を指差した。


「もし、よければそれ一つ俺にくれないか。金なら払うからよ」


「構いませんよ。なんならお金も入りませんし、全部差し上げますよ」


ブンドールは紙箱を手にするとグラシャにそれを差し出した。


「いいのかい。悪いねえ」


「ほんのわずかにお酒も入っているので勤務中は控えた方がいいですよ」


「忠告ありがとうな。ところでなんで俺が勤務中だと分かった」


「カジュアルな服装とはいえその仮面はMAI Lでしょ。勤務中はそれを被らなくちゃいけないでしょ」


「まあ、そうだけどよ。俺の任務ってのを聞いてくれるかい」


「いやいや、守秘義務とかもありそうですし、ご遠慮しときます」


「なら、俺もこれ以上はなにも言わねえよ」


焦りを見せ始めるブンドールにこれ以上深入りはせず。


チョコボンボンシューの紙箱を持ってグラシャは自席にもどった。


そうして、ブンドールが俯いて目を閉じたのを見計らい。


グラシャは箱から菓子を取り出すと見せかけて……。


『後々役に立ちますよ』


ジェシカから託されたチョコと同じ色に半分塗装されたドラゴンの卵の模型を革ジャケットの内ポケットから取り出した。


模型のため本物と違いもやも出ていない。


「なんだぁ、こりゃ」


大きな声とともにグラシャは卵の模型を上にかざした。


彼の声には演技のわざとらしさよりも粗暴さが目立ち。


目当ての菓子が食べらないことに苛立つようにしか周りには聞こえなかった。


ただ一人を除いて。


「あっ」


先ほどまで俯いていたブンドールは顔を上げて。


グラシャの持っている卵の模型を注視した。


待っていたとばかりに、その反応にグラシャは満足した。


「こいつがどうかしたかい」


「いや、なんでもない」


取り乱すようブンドールにグラシャはダメ押しと言わんばかりに。


語り続けた。


「こいつはただの模型だよ。それよりさっきの自己紹介の続きだ」


「えっ」


「俺の任務はドラゴンの卵の密輸犯の逮捕だ」


そう言うやグラシャの右手に魔力が集まり。


魔力は彼の鉄仮面と同じ紫の光を放つオーラとなった。


「ちょっと話を聞かせてもらおうか」


チラリとグラシャはレオナを見る。


ぐっすりと彼女は眠っている。


それを確かめるとグラシャはブンドールへと近寄っていった。


列車がイクラジオに到着するまで、あと三十分もかからない。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

【車窓】編も後半に入りましたが。

まだまだ続きます。

先のパートを楽しみにしてくださる読者の方がいるのなら。

申し訳ございません。

ちなみに【ぼくとダグ】は前中後編の三つ。

【私のたからもの】は上下の二つ。

それぞれ予定しています。

また、活動報告も新しく更新していますので。

このエピソードを読んだ後に。

そちらも読んでいただければ嬉しい限りです。

さて、次回の更新は7/2の17:00の予定になります。

そして、活動報告に関して。

気が早いですが。

今作も作品全体のあとがきを書く予定です。

そちらでペンネームについても。

ちょっとしたエピソードを。

交えながら補足します。

それに伴い6/16更新の活動報告も。

ペンネームの注意事項の箇所を。

一部編集しましたので。

併せてご覧いただければ幸いです。

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