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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【下ごしらえ2車窓編】
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下ごしらえ29【車窓編】微笑みながら名乗る

車内販売員と老紳士の後を追うグラシャ。

不審な点がないかグラシャは尋ねるも。

二人は純粋に商品の売買をしているだけだった。

レオナとグラシャのいた客席室を通り過ぎ。


アコーディオンを思わせる蛇腹状の連結部を抜けて。


車内販売の女性は次の車輌へと入ろうとしていた。


そんな時だ。


「すいません」


「いかがされましたか」


少々慌てた様子で老紳士が女性のもとへ駆けつけてきた。


「洞窟ミントのチョコボンボンシューをくれないかね」


「かしこまりました。五個入りですか、BOXですか」


「BOXで、できれば表に出しているのでなく、在庫のほうで」


「はい」


「昔から好きなんでね」


老紳士の注文に女性は台車の下にある引き戸を開け。


注文された品を取り出した。


長方形の取手のついた大きめの紙箱であり、箱には十二個入りと記載されていた。


「2480ゴルになります」


「ん、ちょうどで」


「はい。確認しました」


女性が頼まれた品を用意している間に老紳士は代金を財布から出しており。


すぐにお目当ての品を受け取れるようにしていた。


「ところで、他に車内販売の者はいるかね」


「いいえ。本日の販売員は私だけです」


「それじゃ、キミと同い年くらいの女の子は休みかね」


「申し訳ございません。詳しくは分かりかねます」


商品を購入したにも関わらず老紳士は焦った面持ちで販売員の女性を問い詰める。


その時、二人の背後からグラシャが声をかけた。


「おい、そこにいる二人止まってもらおうか」


グラシャの呼びかけに女性は冷静だったが。


老紳士はビクついた。


「MAILだ。少し調べさせてもらうぜ」


左耳の透視魔法のスイッチを押し、グラシャは二人に不審な点がないか調べた。


車内販売の商品についてはまだチェックしておらず。


台車の中に密輸品が隠されていると彼は思ったが。


その読みは外れた。


商品が積まれた台車のワゴン内には生体反応や熱源はなく。


食料品や工芸品のキーホルダーしかなかった。


肩透かしか、ともう一度スイッチを押して。


透視魔法を解除するとグラシャは二人に謝罪した。


「疑っちまって、すまねえ」


「お気になさらず、MAILの方」


「うん、もういいかね」


「いや、もうちょっとだけいいか」


「えっ」


驚く老紳士にグラシャは頭を下げてこう尋ねた。


「名前、なんていうんだい」


「ああ、名乗るほどでもないですよ。では、失礼」


そう言い残し老紳士は自らの席へともどっていった。


「私のお名前は聞かないのですか」


「一応聞こうか」


頭を上げグラシャは女性へ視線を向けた。


正直どうでもいいと思っているものの。


彼女はグラシャの興味に関係なく己の名を打ち明けた。


「ジェシカ・P・ハングドマン」


「ハングドマン。バレルズの言っていたイベントって……」


微笑むジェシカを見てグラシャは両手で自分の両膝を軽く叩いた。


バレルズの本名が、バレルズ・P・ハングドマンだと。


思い出したからだ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

ここ最近オートミールが自炊で地味にありがたい存在になりつつあります。

量を増やすのにちょうどいいんですよ。

さて、次回の更新は6/11の17:00です

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