下ごしらえ26【車窓編】気まずい相席
時は戻り現在の山岳鉄道。
レオナの前にグラシャが再び現れる。
気まずい相席が始まる。
山岳鉄道は間も無く最初の停車駅のトラウトロンボに差し掛かろうとしていた。
日常から離れて目にする眺めの数々にレオナは見惚れ。
この旅行に満足感を既に覚えていた。
ヘルシィ・ハーミットに会うという目的ですら。
束の間忘れてしまうほど。
車窓から覗く景色は美しくもあり雄大であった。
遠のき小さくなっていく町の景観。
登っていく雪山の風景も。
列車がレールを進むに連れてその様相は変わっていき。
遠く離れていく街並みから。
雪化粧された山林。
更に暗いトンネルを通ると。
今度は開けた雪原に出て。
列車から離れた場所に小さな野鹿の姿を見た。
変わり映えのない日常とは大きく異なる景色の数々に。
レオナは年相応に喜びを隠せなかった。
はしゃぎはしていないものの。
(すごい。こんな風景町中じゃ見れないよ)
内心喜びで口元も綻んでいた。
お父さんとお母さんにも見せてやりたいなあ、と。
カメラや撮影機能のあるPMAGを持っていない自分に。
レオナがガッカリしていると。
突拍子もなく横からグラシャの声が耳に入ってきた。
「ちょっと隣いいか」
「うわあああああ」
びっくりして大声を出してしまったレオナは周囲を見渡す。
他の乗客は彼女を気にしておらず。
寧ろ異様な威圧感を放つグラシャに視線が集まっていた。
「どうしたお嬢ちゃん」
「あ、ああ。列車をブラついているんじゃ……」
「なあに、気が変わっただけだ」
「は、はは」
たどたどしくなるレオナに対し。
グラシャ自身は気さくに接しているつもりだが。
どうにも二人の溝は埋まらない。
「楽しく行こうや」
「は、はい」
どうなるんだろう。
もう自分に関わらないと思っていたグラシャが。
こうして自分の隣に座っている現実にレオナは不安を抱かずにいられなかった。
『間も無くトラウトロンボ。トラウトロンボ』
MAGを搭載した車内ではスピーカーで旅する人々に。
現状を教えてくれるのだが。
異様なMAILであるグラシャの相席は。
一度は回避できたと思っていた分余計に。
レオナの肩身を狭くした。
(なんか怖いんだよなこの人)
できるだけ怯えを隠そうとするものの。
たどたどしさはレオナに作り笑いをさせるばかり。
グラシャはそんな彼女の様子を見抜いていたからこそ。
彼なりに気を遣ったつもりだが。
上手く伝わっていないようだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
よく洗ったじゃがいもや生姜にごぼう等の野菜の皮と白髪ねぎを使ったサラダを食べています。
皮まで食べるなんて、と思うかもしれませんが。
キレイに洗っているのを前提として、案外おいしいですよ。
大根や生姜の皮が好きですかね。
洗った後にもみこんで柔らかくするのもポイントかもしれません。
次回、連投最後の更新は5/21の17:00の予定です




