下ごしらえ24【車窓編】パルスインパクト
任務の目的遂行のためバレルズは。
敵が仕掛けた罠である。
工場の地中に潜んでいたカルマワームと戦うことに。
「ひい、なんでこんな目に」
「ご安心を、自分がついています」
怯えるマダダネのもとにMAILの団員の一人が辿り着き。
彼を保護し安全な場所へと連れて行っていた。
「大丈夫。あなたもこの工場も無事に済ませますから」
顔の見えないMAILの仮面騎士だが。
その声色は一般人を安心させる落ち着きのあるものだった。
騎士と共に避難するマダダネだが。
社屋から離れていくほどに不安が募っていた。
「本当にあんたのところのリーダーはあの怪物と一人でやり合う気なのかい」
「ええ、もちろん。下手したら我々が足手まといになるくらいです」
「でも、建物の周りにあんたらの仲間がいるぜ」
「彼らは社屋を守るための防護要員です」
カルマワームが小さく見える距離まで避難し。
マダダネはなんとか身の安全にホッとするも。
今度はその怪物と戦うバレルズの心配をしていた。
「いやさ、殺しはしないから。大人しくしてくれるかな」
「キシャアア」
「ああ、やっぱ無理か」
言葉が通じるわけもなく。
カルマワームがバレルズへと襲いかかる。
怪物は凶悪な己の顎のハサミで。
獲物であるバレルズの両断を試みる。
しかし、それは失敗に終わる。
「キミの飼い主とキミのお宝に用があるんでね。キミ自身に興味ないんだ」
巨虫の得物を受け止めるは。
琥珀の騎士の二つの拳。
バレルズは両手のガントレットでカルマワームの凶悪なハサミによる切断を止めていた。
二つの刃が止められてしまい。
怪物もその場で硬直してしまう。
「シャアアア」
「ねっ、疲れるだけでしょ。だから、もう止めよう」
「アアアア、シャアア、シャアアア」
「えっ、ちょっ、そんなやる気出されると困るな」
先ほどよりもハサミが閉じる力が増し。
ゆっくりとだがバレルズの身も縮こまっていく。
「もう、キミがやる気なら。僕もやる気出すよ」
言葉の通じない相手でも。
一応は穏便に済ませたい。
今回門を壊したのは必要経費だとしても。
後処理や片付けに労力を取られたくないバレルズにとって。
戦闘とは避けるに越すはないが。
避けられないのならば別だ。
「パルスインパクト」
業を裁く二つの刃を受け止める琥珀のガントレット。
両手の拳から再び青白い光が炸裂し。
カルマワームへと流れていく。
「キシャアア、アア、ア……」
「ようやく大人しくなってくれた」
バレルズの使用する魔法、パルスインパクト。
表面で磁気を発生させるだけでなく。
物体に触れることにより音波を発生させ。
ときにはソナーとして索敵を。
ときには内部より敵を破壊する攻撃となり。
応用を効かせている。
更にバレルズの鎧にはその磁気や音波を調整し増減する機能を持ち合わせている。
「念の為、もう一回喰らってもらうからね」
地に伏せるカルマワームの額へと。
バレルズが拳を叩き込もうとしたときだ。
「ジャアアアアアア」
獲物を確実に仕留めるべく。
カルマワームは地中に隠していた半身を表へと出し。
工場の敷地内を取り囲むように。
全身で円を描いてバレルズ達を囲い込んだ。
もちろん逃げ道である正門は虫の巨躯で塞がれている。
「防護班」
PMAGが使えず。
大声でバレルズが建物を守る防護班へと呼びかける。
MAILと聖騎士団の混合であり。
黄金のオーラで結界を張り。
それぞれ、自身の身はもちろん。
カルマワームの巨体による建物の倒壊も防いでいた。
「大丈夫みたいだね。良かった」
仲間や社屋の無事を確認するも。
バレルズは安堵できない。
戦いはここからが本番。
もう楽な戦いはしない。
「ファミリアーツ。テロスクイザ」
バレルズの琥珀色の馬の仮面から。
小さな磁界が放たれる。
それは馬の鬣を彷彿とさせ。
この仮面の変化はバレルズの真の武装を呼び起こした。
今回の戦いで。
その武装の起動を最初に目にしたのは。
戦場から退避していたマダダネ達だった。
「なんかデカイ魔導車が通り過ぎていったんだが」
「やば、バレルズさん、本気だ。もう少し遠くまで避難しますよ」
バレルズの真の戦い方を知るMAILの団員は。
一般人のマダダネの安全のため。
更に彼の足を急がせた。
決着は近い。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
連投についてはいかがでしたでしょうか。
ストックが溜まった際など。
やるにしても突発的になるでしょうが。
不定期的にまたやってみたいものです。
さて、連投ラストである次回の投稿は5/7の17:00になります。




