下ごしらえ21【車窓編】メロディアスを行く足・後編
馬やドラゴンといった動物や幻獣を用いた手段から。
魔導車や鉄道へと人々の足は変わっていった。
いずれ様々な魔導車が出て。
安価で庶民にも入手しやすくなるだろう。
そうなったら。
日々の買い物や子供たちの遠足も楽になるだろうな。
人の流れと物流の変革において交通手段の面は外せない
特に聖騎士団とMAILの存在は語らずにはいられない。
現時点ではMAILのアクセル団長が有するゴールデングリフォンが。
最速かつ耐久面も含めて最高だ。
一般人が利用できるのは海路まで。
メロディアスからヤマタイまで航路を使って十日かかる。
しかし、アクセルは空を制する。
彼のグリフォンならば天を駆け。
海路ならぬ空路を走り。
そのおかげでメロディアスとヤマタイまでの往復を三日で済ませてしまう。
ただ、ゴールデングリフォンだけがMAILの目玉ではない。
近年、彼らは魔導車を大量に所有するようになり。
独自の改造を施しているらしい。
車体の大型化や鉄道のように荷台専用の車輌を作ったようだ。
更にはタイヤも整備されていない道や。
底の浅い河川や砂漠を走行できる車輪も開発して運用しているようだ。
いずれは民間の車輌にも搭載されておかしくないものばかりで。
魔導院とは独立して。
未だに自警的な側面が大きいものの。
この国の治安と平和を守るMAILの技術が。
やがては一般の人々の生活を豊かにすると考えれば。
技術的特許やその技術がもたらすパフォーマンス。
つまりは娯楽にも通じるだろう。
一方で魔導院が直轄する聖騎士団は。
魔導車の運転の最適化に力を入れているようだ。
理屈はよく分からないが。
車体のエンジンなどの機構を制御するものとは別に。
運転手をサポートする機能を。
精霊や妖精のように人間と会話し。
目的地や燃料、走り方などを自動で調整する仕組みに注力しているらしい。
まるでMAILが車体を向上させてくれるのを見越して。
聖騎士団。いや、魔導院側は車の内側に手を加えようとしているようだ。
まだ魔導車用の道路の舗装や開拓といった。
公共事業を大々的にやってもいないのに。
車に擬似的に人格を持たせるのは何故だろうか。
奇妙な考察だが、魔導車を精霊にでもする気だろうか。
PMAGのニュースや院長の世間話に世の噂の数々など。
不確かなものを含めても。
現状、入手できる情報から考えても限界がある。
ただ一つ確かなことは。
魔導車の普及を見越して。
この国は動いていることだ。
MAILの技術の一般層への普及や。
聖騎士団の技術も喜ばしいが。
それが市街地以外の道路の整備を差し置いてまでのものなのか。
自分には判断できかねる。
馬や幻獣、果てには鉄道に依存しない移動手段が確立するのも時間の問題かもしれない。
そうなったときには。
子供達との遠足も今よりも楽になるかもしれない。
スパーク・ガルムズ副院長の手記、『メロディアスを行く足』の後半より。
キャロットラバーズ孤児院にて。
スパークは自室で昼食を済ませると。
空いた時間でかつて自身が書き記した手記を読んでいた。
「たまには前に書いた手記を読み直すのもいいなあ」
ふふ、と小さく微笑むスパークを。
グリム院長は部屋の扉の隙間から温かな眼差しで眺めていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は魔導車についての補足です。
まだ魔導車はメロディアス国内でしか流通されていません。
理由は燃料にあります。
原動力は魔石を用いたエンジンで。
燃料は特殊な魔法液であるため。
特許や他国との法律の都合上。
魔法液の精製の増産。
つまり燃料を補給するためのスタンドを。
メロディアス以外では作れない状態にあります。
一方で鉄道は機関室にある巨大な魔石に。
火炎系や電撃系の魔法を与えて。
車体を動かすものとなり魔法液が必要ありません。
しかしながら、そのような魔石は巨大かつ。
動力を車体に伝えるパイプ等の機構も大きすぎるため。
魔導車には搭載できない現状です。
以上が魔導車についてです。
次回の更新は5/4の17:00です。




