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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【下ごしらえ2車窓編】
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下ごしらえ19【車窓編】敵を騙すには誰から

グラシャはMAILの仲間であるバレルズに。

利用されていたことに気づく。

更にはMAILとは別組織である聖騎士団も。

今回の事件に協力している事実を。

バレルズから聞かされる。

「もう、よろしいでしょうか」


車掌が怯えながらグラシャに尋ねた。


ここは運転室。


機関室を調べ終え。


最後に辿り着いたこの車輌にも。


グラシャの目当ての品である大量のドラゴンの卵は、ここにはなかった。


「ああ、すまねえな」


謝罪の言葉とは裏腹に。


グラシャは苛立ちながら足のつま先で床を何度も突いていた。


どこを探しても見つからない。


本当にこの列車に密輸品が積まれているのか。


そんな疑問がグラシャに浮かんだときだ。


「私服捜査の聖騎士団の人達もここに来られましたが、あなたも彼らの関係者なのですか」


「聖騎士団、だと」


車掌の言葉にグラシャの苛立ちが冷める。


同時に裏で糸を引く人物に心当たりを覚えた。


「すまねえ、もうちょっとここにいさせてもらうぜ」


困惑する車掌を無視し。


グラシャは運転室の隅へと行き。


自身の被る紫の仮面の顎下のスイッチを押した。


仮面に搭載されたMAGによる念波通信の魔法。


MAIL専用の無線だ。


それも特殊無線用にスイッチを三回押している。


上級騎士用の通信網であり。


即ちグラシャの連絡相手はMAILでも実力者。


『バレルズ、お前ちょっと今いいか」


『何、大事な話』


念波であるため話し声は出ず。


車掌達から見れば。


部屋の隅でグラシャが棒立ちしているという。


どこか不気味な状態だ。


『今回の潜入任務だがよう。バレルズ、オレに嘘ついてねえか』


『ええ、なになに。なにそれ』


疑り深くグラシャが問いただす相手、バレルズは明るい声で飄々と受け応えている。


『惚けるな、この列車に聖騎士団を送り込んだのはお前だろう』


『なんでそう思っちゃうかな』


『元聖騎士団長のお前くらいしかできねえだろ、そんな芸当』


『昔のコネを使って、ね。彼らに情報提供したのさ』


『アクセルさんはこのこと知ってんのか、アぁ』


『もちろん。あと、今回の件は珍しく聖騎士団から僕宛に頼まれたんだ』


念波とはいえ。


声色を強めてグラシャはバレルズに問い詰める。


しかし、バレルズは冷静に熱くなる仲間へと返答を続けた。


メロディアスの聖騎士団といえば。


魔導院が管轄する警察組織及び軍隊であり。


自警団であるMAILとは似て非なるもの。


事件や犯人を巡って対立することさえしばしばある。


『おいおい、オレに仮面着けて私服で山岳鉄道に乗れっていうのは、なんだったんだよ』


『目立つし怖いしで、犯人も列車から降りたくなるでしょ』


『……もしかして、この列車にゃ犯人はいるが物はないってか』


『よく気づいたね。百点あげちゃう』


『ふざけんな』


大きく吠えはしなかったものの。


小さな怒声と共にグラシャは運転室の壁を叩いた。


これには思わず車掌も彼のもとへと駆け寄った。


「申し訳ございませんがここではお静かにお願いします」


「すまねえ。もう出て行くよ」


車掌から注意されたグラシャは。


運転室と客室車輛との間である、外の連結部まで出ていった。


『あらら、車内じゃ静かにしないと』


『誰のせいだと思っているんだ』


引き続き念波でのやり取りだが。


どんなに苛立っていてもグラシャは声を上げようとはしなかった。


バレルズに弄ばれている気がして。


悪態をつくのも。


彼の掌の上で踊らされている気がしてならなかったからだ。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

一旦列車から離れ。

スパークの手記が次の話となります。

あまり触れられてこなかった魔導車についてです。

さて、次回の更新は5/2の17:00です。

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