下ごしらえ17【車窓編】見つからない探し物
MAILの鉄仮面の男は少々苛立っていた。
任務の対象物が見つからないことに。
一方でレオナは列車が出発してから。
しばらく経ち。
ようやく自席にたどり着けた。
山岳鉄道の列車がトランシープの街を出発して、しばらく。
サーモニカへと車両は順調に進んでいた。
乗員は必ずしも終点を目指しているわけでない。
毒々しい紫の鉄仮面を被ったMAILの騎士もまたその一人だ。
彼はその途中の駅であるイクラジオを目指していた。
「できれば、むこうに着くまでに捕まえておきたいとこだな」
MAILの権限を使い、特別に入れてもらえた貨物車輌内にて。
誰もいないMAILの男は一人今回の任務について呟いていた。
「野良ドラゴンの卵の大量密輸なんて、俺らが見逃すはずねえだろ」
彼の鉄仮面には透視魔法がMAGによって内蔵されており。
人体の左耳に位置する箇所にそのスイッチがある。
「くそ、ここにもねえ。どこだ」
透視魔法で車輌内の多くの積荷を鉄仮面の男は見る。
魔法により箱の中身を。
内部にある物体の輪郭を捉えるも。
見えるものといえば民芸品やPMAGばかりだった。
「食料貨物にもねえ、こっちの雑貨物資の方にもねえ」
一番に狙いをつけた場所にも目当ての品はなく。
ダメ元で足を運んだここにもなく。
残る車輌はというと。
「旅客車両か機関室あたりか」
鉄仮面の下で男は静かに。
それでいて不敵に笑った。
「大胆な奴だ。物と一緒にいるかもしれないなんてよ」
男はその場を後にし。
民間人のいる一般車両へと向かった。
「ええと、私の席は、と」
慣れない鉄道での旅路で。
未だに切符に記載されている自分の席を。
レオナは探している最中だった。
「あった。ここか」
やっとだ。
嬉しさのあまりレオナは喜びの声を出した
窓際席で美しい景観を眺められ。
隣の席は空いていて。
手を広げられ、くつろぎもできる。
いい席だ。
(なんか、ようやく旅行してるって気がしてきた)
トランクを上の荷物置きの棚にのせて。
一息ついてレオナは自分の席についた。
落ち着いて、ゆっくりできる、と。
気も楽になり。
辺りを見渡すと。
通路を挟んだ向こう岸の席に座っている。
杖を持った老紳士が。
自分を見てにこやかに笑っているのを目にし。
「ん、んぐ」
奇妙な咳払いをしてレオナは姿勢を正した。
まだ旅行は始まったばかり。
浮かれすぎていたら。
他の人に笑われてしまうと。
自らの気を引き締めようとしたタイミングで。
紫の鉄仮面の男が彼女のいる車両に乗り込んできた。
前を向いてるレオナはまだMAILのその男には。
気がついていない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
鉄仮面の男の名前は次回にて明かされます。
引っ張るつもりはなかったのですが。
この物語において。
レオナの感情を掘り下げる面もあり。
彼女が知るのと同じタイミングで。
読者の皆様にも伝えたかった思いがありました。
では、次回の更新は4/30の17:00です。




