下ごしらえ15【車窓編】紫の鉄仮面
MAILの男とぶつかったものの。
事なきを得たレオナだが。
男は不機嫌そうにレオナと同じ便へと乗車する。
切符を購入し。
ワクワクしながら駅のホームへと。
レオナは向かっていたが。
その最中に一人の男と。
運悪く鉄仮面の男と彼女はぶつかってしまった。
「すいません」
「ああ、気をつけな」
「はい」
怖い。
威嚇でもしているような低いくぐもった声で。
自分に呼びかけてきた男にレオナは怯えていた。
MAILという武力を扱う存在に。
騎士団に、馴染みが薄い彼女にとっては。
悪事を働いていなくても。
彼らに粗相をおかしてしまおうものなら、と。
どうしても脅威を感じずにはいられなかった。
「おい」
「はい」
紫の鉄仮面の男はしゃがんで。
なにかを拾うと。
それをレオナへと手渡した。
男の手に握られていたのはWOLFのエンブレムだ。
どうやら、彼とぶつかってしまった際に。
レオナはコートのポケットから。
父から預かった大切なエンブレムを落としてしまっていたのだ。
「大事な物じゃないのか。もう気軽に落とすんじゃねえぞ」
「ありがとうございます」
怒られたけど、捕まったりはしない、よね。
レオナはビクビク震えながら。
男からエンブレムを受け取り。
駅構内の行き交う人々の邪魔にならないスペースで。
旅行用のトランクにそれをすぐにしまった。
彼女がWOLFの印を入れる頃には。
もう既にMAILの男はその場にいなかった。
(早く行こう)
胸が締め付けられてしまいそうな思いをしたものの。
浮かれていた自分に反省しつつ。
軽く身なりを整えてレオナは駅のホームへと向かっていった。
『メロディアス山岳鉄道、三分後に発車します』
構内のスピーカーからは。
駅員のアナウンスが流れ。
目当ての便もそろそろ発車寸前だ。
誤って別の路線に乗らないように。
ホームの駅員に目の前の列車の行き先を伺い。
慎重になりながらレオナは山岳鉄道に乗車した。
『もう間も無く発車します。駆け込み乗車はお止めください』
アナウンスは注意喚起に変わり。
そろそろ出発の頃合いだ。
駅員も流石に誰も乗らないだろうと思っていた矢先だ。
「悪いな。ギリギリになっちまって」
「ひっ」
気が緩んでいたところに。
殺気だった紫の鉄仮面の男から。
呼びかけられた駅員は小さな悲鳴をあげてしまった。
悲鳴を聞かれたら面倒なことになる、と。
気の小さな駅員は不安になってしまったが。
MAILの男は既に列車に乗っており。
ホームからその姿は消えていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
読者の皆様の中には。
新年度で環境が変化された方もいるかと思います。
不安だらけかもしれませんが。
私の物語でその不安が少しでも和らげば。
なんだか人の役に立てた気がして嬉しいです。
次の更新は4/16の17:00になります。
あの人の手記に相当します。




