下ごしらえ13【車窓編】旅行の始まり
ヘルシィのいる地へと赴こうとするレオナ。
彼女の移動手段は山岳を進む鉄道。
決意を胸にレオナは自宅を発った。
トランシープの街から雪国へと行きたい。
そう言ったら、トランシープの駅員はこう言うだろう。
『山岳鉄道があるので、ホームまで案内しますね』
北にある山々を越えるには一苦労。
そうでなくとも。
様々な街へと続く路線を有しているその駅には。
北の山を進むためのルートは唯一しかない。
険しい山路に敷いたレールを登り。
道中山をくり抜いて出来たトンネルを通って。
人々はフォルテッシモ山脈にあるメロディアスの山々を越えていく。
専ら北方の国々の集まりである。
サーモニカ共和国が旅の終点なのだが。
山岳鉄道において、トランシープからそこまでかなりの時間と距離がある。
途中駅のイクラジオから。
駅名の由来にもなった町である。
イクラジオの町を経由してヘルシィの住まうとされる地へと赴くことができる。
レオナにとっては。
トランシープの駅を発つのは。
長い道のりの序盤も序盤に過ぎないのだ。
昨夜、旅支度を終え。
現在、母のお下がりのコートを着て。
父から借りたトランクを手にし。
いつもの仕事に行くときと同じように。
一人、レオナは。
ビーンズに占われた自らの運命を知るために。
旅に出ようとしていた。
(鍵も閉めたし、よし、行こう)
自宅の入り口の扉が閉まっているのを確認すると。
レオナは前を向いたが。
(行ってきます、お父さん、お母さん)
すぐに扉へと振り返り。
しばらくその場に立ち止まっていたが。
目を瞑って。
自分がなぜ旅行に行くのか。
目的を思い出すと。
彼女は前を向き直して。
歩き出した。
レオナが進む理由は一つ。
ビーンズの占いの先にあるものを知るため。
自分の未来に関するなにかを掴むためだ。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
もうすぐ新年度が始まろうとしています。
読者の皆様もまた新しい歩みを踏み出そうとしているかもしれません。
そうであれば。
私は作品を通して皆様を応援していきたいです。
さて、次の更新は4/2の17:00です。




