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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【運命の輪による二人の巡りあわせ】
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第二話 寂しい魔法使い

第二話 寂しい魔法使い

銀世界の中で独り朝焼けを楽しみながら朝食をとる男がいた。

この男こそがヘルシィ・ハーミット(37歳)である。

冬の朝焼けが雪山を(きらめ)かせる。


一面は純白に光り輝き。


昇る朝日は山の天辺(てっぺん)から見下ろせる。


絶景を臨みながら彼は朝食を頂く。


「いい天気だ」


彼が(まと)う真っ白なローブは雪原に溶けているようで。


白く長い髪は日の光で輝いていて。


「本当にいい景色だ」

 

頂点から火を噴く三角錐型の機械。


その火に熱されている耐熱性の器具に吊るされた飯盒(はんごう)


山の(いただき)での朝食。


傍らにはランタンを上に吊るした白い杖を立てかけ。


椅子代わりに固い四角形の箱に座って彼は待つ。


ごちそうが出来上がるのを。


「こっちはどうかな」


銀色の魔導式バーナーは青い炎をあげて。


黒い飯盒(はんごう)は熱せられて白い湯気をあげて。


色とりどりに彩られて食材が炊かれている。


煮込みも充分。


もうすぐ食べごろだ。


「頃合いだな」

 

彼は(ふた)を開いた。

 

こもっていた香りが噴き出す。

 

同時に解放された蒸気が彼の顔を包みこむ。


ほんの少しだけ()らされた後。


ようやく極上の一品が姿を現す。

 

具材は鶏肉と玉ねぎのシンプルなシチューだ。

 

「いただきます」

 

木製のスプーンで彼はシチューをすくって味わう。

 

香ばしく焼けた小麦の風味。

 

細かく舌触りの良い鶏肉の食感。

 

様々な大きさの玉ねぎの噛み心地も忘れてはならない。

 

「至福ですな」

 

絶景で最高の食事を楽しむ。

 

それが彼の毎朝の日課だ。

 

「ヘルシィ。客だぞ」

 

白い彼、ヘルシィの頭上に(たか)が一羽飛んで来た。

 

男の子とも女の子にも聞こえる少し高い声を発しながら。

 

「知っているよモナ。でも、僕は食事中だぞ」

 

「おいおい」

 

モナと呼ばれた鷹がヘルシィのもとへと舞い降りる。

 

全身を白く細かい大量のキューブに変えながら。

 

翼が前足に。(くちばし)(たてがみ)に。

 

降下するにつれてモナは四肢を持つ獣へと化していく。

 

「結界にも反応していたが入り口の前で待っているぞ」

 

「嫌だよ。モナが行ってきて」

 

「ゴーレム遣いが荒いんだから」

 

着地したモナの姿は鷹から灰色の獅子へと姿を変えていた。

 

「この性悪」

 

「はいはい、性悪ですよ」

 

昔はこんなに口悪くなかったのに。

 

寂しさを覚えつつヘルシィは食事を続けた。

 

主の命を受けて雪肌の先にある崖へとモナは駆けていく。

 

崖から飛ぶや再びモナはその身を鷹に変えた。

 

自由自在な変身能力を持つゴーレムのモナならではの芸当だ。

 

山頂から(ふもと)に向かってモナは飛び去っていく。

 

昇る朝日に照らされながら。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

エピソードが少々短くなってしまいましたが。

ここからいよいよ本作が始まります。

まだメインキャラが全員登場しておりませんが。

私なりのファンタジーを。

お楽しみいただければ嬉しい限りです。

次回の更新は11/13の17:00を予定しております。

また来週も。

読者の皆様と物語を通じてお会いできるのを。

とても楽しみにしております。

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