下ごしらえ10 ストレングス家の食卓
ヘルシィについての欲しい情報を手に入れ。
旅立ちはレオナにとって金と時間の問題。
職場の都合は問題ないだろうが。
レオナにとっての一番のハードルは家族。
今回の旅について。
それを月に一度の家族そろっての。
夕飯の場で両親に伝えなければならない。
レオナの欲しい答えは簡単に見つかった。
ダメ元で頼ったMAG端末が功を奏したのだ。
検索する項目に読んでいた本の内容を入力した件も答え探しの一助となっていた。
(疑っていたわけじゃないけどビーンズさんごめんなさい)
ビーンズからの助言を信じていなかったわけではないが。
ここまでMAG端末に有名人とはいえ。
個人を特定できるとは思っていなかったのだ。
更にレオナの予想以上の成果はあった。
トランシープ駅からフルート山までの。
経路が記された地図のプリントアウト。
交通手段や費用に目的地までの時間など。
思っていた以上の情報をレオナは入手できた。
地味に彼女が懸念していた暴動や治安についても。
二、三年前まではデモがまだ少なからず起こっていたものの。
今ではそのような騒動もなく。
月に一度物好きが。
ヘルシィのいるとされるフルート山の山門まで訪れるという。
観光スポットになっている事実までレオナは知れた。
つまりは金と時間さえどうにかなれば。
本人に会えるかどうかは分からないが。
レオナはヘルシィの住む場所へと行けるのだ。
だからこそ、図書館の帰り道にレオナは両親への説得に思い悩んでいた。
(旅行っていう建前として、お金はどうしよう)
職場についてはリ店長のリブに。
ビーンズの占いの件も話しているため。
一週間から十日の休みならば。
直近であるが許可を得られるだろうが。
問題は家庭、両親の説得だ。
仕事を休みのはもちろん。
旅行、金を使うとなれば。
おいそれとはいかないだろう。
しかも、一泊二泊なのではなく。
一週間以上かかる可能性もあれば。
簡単に許するはずもないだろう。
(せっかくチャンスを掴めるのになぁ)
図書館からの帰り道、レオナは物憂げだった。
単純に旅についての問題点だけではなく。
今日は両親が珍しく揃って家にいる日であり。
ストレングス家にとっては月に一度あるかないかの。
父、母、娘の三人での夕食を囲む機会なのだ。
言い換えると、今回の旅について。
両親を説得できる最初で最後のチャンスなのだ。
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりなさい、レオナちゃん」
集合住宅の一室で。
暖かく両親に迎えられ。
レオナはその日の夕食に臨んだ。
献立はミートボールスープパスタ。
彼女の父レオルドの好物だ。
温かな料理の湯気が漂い。
パスタのかぐわしさと美味さのあまり。
発言のチャンスを逃してしまいそうだ。
だからこそ、普段の団欒とは違う。
緊張感を失わないようにレオナは気をつけた。
「いただきます」
ストレングス家の月に一度の。
一家揃っての夕飯が始まった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ストレングス家の食卓ということで。
食事つながりで。
今回はレオナの店の賄いについてお伝えします。
ホースダムの意向で厨房での食事ができないため。
従業員は休憩室という名の二メートルの机が。
ポツンと一つあるだけの部屋で賄いをとります。
たまたま小休憩で立ち寄ることはあっても。
店のシフトの都合上で二人以上での賄いはございません。
来週はアウロラの賄い料理について後書きに記します。
次回の更新は3/12の17:00になります。




