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ハーミットなごちそう  作者: 白海レンジロウ
【下ごしらえ1食卓編】
12/59

下ごしらえ3 夜の来訪者

こんな遅い時間に客とは。


院長の知り合いだろうか。


ただ、一つ言えるのは普通の客ではないだろうな。

「ふうう」


「なあにしてんのスパークくん」


「グリム院長いらしてたんですね」


ああ、この茶めっけのある声は。


また院長が私の部屋に入ってきたみたいだ。


私は趣味の手記をやめた。


あえてMAG端末でなく。


手のひらサイズの手書きのメモ帳で。


筆記するからいいのだ。


院長の前では流石に恥ずかしくて無理だが。


「ノックしたのに返事ないから入っちゃった。今週で二回目だよ」


「すいません、手記に夢中になっていって」


この孤児院出身で。


二十三歳の青年である私からすれば。


よわい六十二のグリム院長は父親のようなものであり。


未だに私より大きな背丈と口周りを覆う白髭は。


子供の頃から安心感を与えてくれる。


「ちょっと風変わりなお客さんが来てね」


「ほう、こんな夜に」


「しかも、訪れたのは灰色のグリフォンに乗った少年だ」


「子供ですか」


「見た感じうちの子供達と変わらないくらいの子だ」


「そんな子がグリフォンに乗っているなんて」


もう九時を過ぎ、院内の子供たちは寝ている。


そんな彼らと変わらない年頃の少年が。


しかも、灰色のグリフォンに乗っているなんて。


興味深い。


「お出迎えしようにも人手が足りなくてね」


「なぜ私に?」


「他の職員は忙しそうだし、暇そうなキミに声をかけたんだ」


「手記を書いていたのはたまたまですよ」


少々遺憾だが、院長の言うとおりだ。


たまたま暇を持て余していただけだ。


だからこそ、来訪した少年も気になる。


手記のネタにもなるかもしれない。


なにより彼をあまり待たせるのも良くないだろう。


私は院長と共に少年が待っている孤児院の正門へと向かった。


疑っていたわけではないが。


確かにそこには院長の言う通り。


灰色のグリフォンに跨った一人の少年がいた。


「こんばんは。久しぶりですね、グリムさん」


「失礼ですがどちら様で」


「おっと、この姿を見せるのは初めてでしたね」


少年がそう言うや。


彼から眩い白い光が放たれた。


そうして、私の前に現れたのは。


ヘルシィ・ハーミット。


この国では知らぬ人などいない有名人だった。


「ヘルシィさん」


「グリムさん、改めてこんばんは」


再びの挨拶をするとヘルシィ氏は。


グリフォンの背から一人の小さな子供を抱きかかえた。


「たまに運動がてら森の上を飛んでたら見つけてね」


彼が抱えているのは子供であり。


十歳ぐらいだろうか。


ここに来たということは。


目的は一つしかない。


「この子を預かってくれない」


「それは構いませんが、この子はどこで拾われたのです」


「エンペル川で流されたのを見つけたんで保護したんだ」


「つまりはこの子が何者かは存ぜぬと」


「まあね。昔も今もここに寄付しているし、いいでしょ」


「分かりました」


押し付けられてしまったが。


まあいい。


ヘルシィ氏はここの支援者で一人で。


多額の寄付もしてくださっている。


子供一人を預かるのも。


気にはならない。


私はヘルシィ氏の手から子供を受け取り。


彼に替わって子供を抱きかかえた。


「じゃあ、よろしくね」


そう言い残し。


グリフォンの背に跨ると。


ヘルシィ氏はこの場から去っていった。


残された私と院長は。


ここの新しい住人となるだろう。


託された子供を一度見つめて。


その子の無事を確認すると。


孤児院の中へともどった。


私の腕の中で子供は安らかな寝息をたてながら。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

少しあっさりとした回になりましたが。

このお話は本編でヘルシィがレオナに会う一か月ほど前のお話になります。

人に見つからないように。

彼は姿を変えて夜な夜なモナに乗って空中散歩をするのが趣味です。

私にしては珍しく後書きでキャラ紹介をしてしまいましたね。

では、次の更新は1/22の17:00になります。

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