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日常と非日常 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 元冒険仲間達3人の今の生活を見に行った後、やはりというかなんというか、モートレル騎士団の面々から「カレーが食べたい」という意見が出たとヒルダが言い出したので、今日もアリシアはモートレルへ引っ張り出された。


 実際のところ、後始末の晩に出したカレーなら長時間の作業にはならないので、騎士団のランチ用に作りに行くことになった。


「お前も忙しいな」


 やどりぎ館用のランチの下ごしらえを終えて、霞沙羅もついて来た。


 今日の霞沙羅はヒルダと一戦やるようで、練習用の長刀と刀を持ってきている。それと「ファンタジーな世界で浮きたくない」と、霞沙羅が本気で任務をやる時に使用している、新城大佐専用の戦闘服を着ている。


 高さのある帽子と、胸のところが大きく開いていて中のインナースーツが見えている、マント付きの上着。それと正面真ん中がスリットにもなっている長いスカート、白いニーソと黒いショートブーツ。全体的に白いカラーには紫のラインが入り、霞沙羅の色黒な肌が映える。


 ちょっと品のいい神官のような見た目の、霞沙羅お気に入りの戦闘服だ。この姿の霞沙羅は女性らしさが増していて、エリアスだけでなくアリシアも羨ましいと思ってしまう。


 なお、中のインナースーツは上下に分かれていて、素材的にもビキニの水着のようになっていて、下着では無い。


「でも浮いてますよ」

「日本で着るよりは目立ってねえだろ」


 実家が呉服屋兼ファッションブランドなので、そこそこ服のデザインも出来てしまい、厄災戦も自分がデザインした戦闘服でこなしていたという。


 そんな綺麗なお姉さんを連れて、アリシアは騎士団の敷地に入っていく。


 中では今日の日を楽しみにしていたヒルダが、また仁王立ちで待っていた。


「待たせたなあ」


 伽里奈時代に行った「試験」と違って、2人揃って鍛錬専用の武器を持っているので、一体どうなってしまうのかと見学者達は戦々恐々としている。


「じゃあボクは結界を作るよー」


 カレー用のスパイスは、厨房担当者に指示をして買いに行かせているし、量を用意しないといけないナンについては、パンと大きくは変わらないし、前回も一緒に作ったので、もう作り始めてもらっている。


 だから厨房のことは今は忘れて、戦闘の余波で周りの建物が壊れないように。2人の周囲を四角く囲った結界を張る。今回はかなり本気だ。


 エリアスにやってもらえば良かったのだけれど、館の掃除を頼んでいるので、今日は無理だ。


「やっぱりアリシア君はすごいな」


さすがに階位11位の魔導士だ。何気なく作ったけれど騎士団に所属している魔術師では到底真似できない。


 レイナードの楯とは比べものにならないほど強固な結界でも張らないと、この2人のせいで、建物が壊れかねないし、また町が大騒ぎになってしまう。


「もう大丈夫ですよー」


 アリシアのその声を勝手に合図にして、ヒルダと霞沙羅の2人は突然斬りかかり始めた。


 お互いに様子見の一撃だったが、重機がぶつかり合うような重たい金属音がした。


 長い長刀に対して剣ではあるけれど、ヒルダは大きなバスタードソードなので、そのリーチ差は そこまで大きくは無い。


 ややヒルダの方が間合いには入れていないけれど、構わずに2人はガンガン打ち合う。


「あら、なかなか」

「前衛専門相手は、やっぱキツいな」


 武器的には長刀の方が有利だけれど、さすがにラシーン大陸屈指の歴戦の勇士、ヒルダは槍との戦闘経験も多いので、リーチのハンデをモノともしない。


「たまにハルキス君が来たりはするのだが、本当に自分の娘なのかと思ってしまうな」


孫が出来てもまだまだ武人な前領主様は今日も娘の稽古を見に来ている。


 戦闘のレベルが違いすぎて、見学者達も唖然としている。異世界から来た人物が、ここまでヒルダと互角に斬り合えるものなのかと。


 実際の腕はヒルダの方が上なのだが、霞沙羅も自分より強いチームメイトと戦い慣れているだけあって、きちんと対応できている。


 しかも、2人ともいい練習相手が見つかったと、笑っていたりもする。


 異世界とはいえ、何と言っても館から徒歩5分だ。例えば20分くらい体を動かしたいなと思って、気楽に呼ぶことだって出来る。


 しばらく打ち合った頃、急に霞沙羅が距離を取って、結界ギリギリのところに、長刀を刺して、腰にぶら下げていた刀を抜いた。


「あらどうしたの?」


 武器が短くなってしまったので、大丈夫かしらとヒルダが心配するが


「これ剣じゃ無いから、動きが大きく違うぞ」


 ゆっくりとヒルダに近づいていって、刀を構える。


「刀を作れる異世界人が入り込んでいる可能性があるから、こういう武器があるんだとちょっと頭に入れておいてくれ」


 刃が潰されている練習用の刀ではあっても、霞沙羅の技量で作ったモノなので、その刀身は芸術品のように綺麗で、氷のような冷たい印象さえある。


「じゃあ行くぜ」


 剣とは足さばきがまったく違う。

 見たことのない動きに、ヒルダは驚きつつもしっかりと対処する。


「やっぱりアリシアの前衛だけあって強いな」

「あなたも中々やるわよ」

「まあこれでお前は自分の間合いでやり合えるわけだ。こっちは不利になったが、もうちょっと思いっきりやり合おうぜ」

「ちゃんと見ていたのね」

「あんな長物を持ってればな」


 お互いに笑いながら、刀を持った霞沙羅との斬り合いが始まった。


「あんな細い剣で、ヒルダの剣を受け止めるとは」

「刀って言うんですけど、剣とはまったく作りが違うんですよ」


 リーチ差が無くなって、ヒルダが断然有利になってしまったけれど、霞沙羅も食らいつきながらも、ちょっと吹っ飛ばされたところで、斬り合いは終わった。


「いやー、シメがこれでわりいが、今度は剣でも持ってくるわ」


 霞沙羅か刀を鞘に収めた。


「とりあえず、あなたの言うとおり、異世界人には気をつけておくわ」


 ヒルダも剣を鞘に収めた。


 刀の持ち主に出会うかどうかは解らないけれど、ヒルダ的にもいい経験にはなった。人が変わればその剣筋は大きく変わる。霞沙羅だって超一流、つまらないわけが無い。


「地面が滅茶苦茶になっちゃったねー」


 打ち合いの衝撃波もあるし、両者の足の踏ん張りもあって、試験の時よりも地面が凸凹で大変な事になってしまった。


 これを直す人が不憫だ。


  * * *


「うーん、これこれ」

「これがまた食べたかったんだ」


 団員達は待ちに待った昼食のために、食堂に並んでいる。


 食欲を誘うスパイシーなカレーの香りに包まれた食堂で、またあの晩と同じカレーが食べられて、皆とても満足している。


 アンナマリーはいつものアリシア製のサンドではあるけれど、オリビアやサーヤ達に同じテーブルでカレーを食べられてしまうと、味はわかっていてもなんだか負けた気分になる。


 それを気にしてか、今日はチキンフィレバーガーを用意してくれたけれど、バーベキューソースが挟まっていて、カレーとは違うちょっとスパイス感のあるバーガーになっている。


 アリシアならではの心遣いだ。


「あの異世界人だが、ヒルダ様とあそこまで渡り合うとは」

「格好いい人だったー」


 霞沙羅は女性騎士団員にも好意的に受け止められている。同じ女性として、強い女性には憧れが湧く。


「占領事件の時にあの館に不在だった人だろう?」

「あの人はまた別の場所で仕事があったので、そちらで戦ってたんですよ」

「もしあの人もいたらと考えると、さらに大変な事になっていただろうな」


 霞沙羅の本気、かどうかは解らないけれど、英雄アリシアと互角という力の一旦は見せて貰った。確かにいつも自信に満ちた態度なのもよく解る程の斬り合いだった。


「カレーは好評ね」


 これからはカレーがメニューに載るぞ、と上機嫌の団員達を、今日もヒルダは見に来ていた。


 先日泊まった時に食べたカレーは別次元だったけれど、これはこれで美味しい。出来を見る為に、今日はヒルダもちゃんと同じモノを食べている。


「ヒルダ様、先程の方はどうですか?」

「中々いいわね。武器は違うけれど、アーちゃんと互角というのは解るわ。帰る前に何人かの剣の研ぎまでしてくれたし、そこは面白い人ね」


 ルハードも愛用の剣をピカピカにしてくれたのでとても喜んでいた。


「手入れが上手なのですか?」

「あの人鍛冶でもあるのよ。今日持ってきた武器もそうだし、自分で魔剣を作れるのよ。アーちゃんの魔剣も改良してくれたから、今度私のも見て貰うの」

「すごい人なんですね」

「向こうの世界の英雄の一人だものね」


 ただ強いだけでは無いのかと、とオリビア達は英雄という言葉に頷く。


「ところで今日は何かおまけは無いの?」

「入れ物がやたらと大きいと思ったら、ロールケーキが入ってました」


 冷蔵の札の作者なので、身バレしてからやりたい放題になって来た。しかも、時間調整までしていて、効果がお昼過ぎに終わるようになっている。


 渦巻き状の、普通に生クリームが巻かれているロールケーキ。こっちでも作れそうだが、まだ試していないので、日本で製造されたモノだ。


 アンナマリーはもう何回か食べているけれど、ヒルダはさすがに初めてだ。


「は、早く頂戴」

「わ、解りました」


 ヒルダは何を食べに来ているのだろうかと、付き合いの長いオリビアは呆れた。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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