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戦いは終わりを告げる -2-

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  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「うわ、ラスタルってこんなに人がいるんだっけ?」


 テラス脇にある窓から外を見ると、式典の為に開放されている外庭はびっしりと町の人で埋め尽くされている。長年住んだ王都は何万人も住民がいることは知っているが、それが一同に揃うとこんな事になるとは思ってもみなかった。


 実際の所、住民の全員がいるわけでは無いけれど、わざわざ自分達を一目見ようと他の町からも来ている人もいるとかで、かなりの人数に膨れ上がっている。


 魔女戦争の最中に、国民達を安心させる為に「フラム王国の勇気ある者達」ということで王様の演説の際に紹介された時も、ここまでは集まらなかった。


あれから3年ちょっと、国も平和になって、娯楽も少ないところにこの国を挙げた一大イベントなので、住民達もこれを楽しみにしていたのだろう。ただ、前の時の王様と今の王様はもう違う人なんだなと考えていたら


「アリシアよ、よく帰ってきてくれた」


 3年前に王様だったジョナサン二世が、療養先のお城からやって来ていて、車いすに乗って現れた。


 体調は良くなっているとは聞いているけれど、退位をするくらいだからと心配していたところ、顔色はなかなか良さそうだ。一応車椅子に乗ってはいるけれど、アンナマリーも言ってたとおり、体調は大夫戻っているのだろう。


「お久しぶりです。アリシア=カリーナ、遅ればせながら帰還しました」


 もう王様ではなくなってしまったけれど、子供の頃から王様だった人に、アリシアは跪いて挨拶をした。


「今日は式典で忙しいだろう。また今度、我が城に訪れて、今のお前の話を聞かせて欲しいモノだ」

「は、はい。必ず」


 王を退位して国の中心から去ったからか、以前はあったピリピリしたような緊張感は無くなっていて、柔らかな印象になったジョナサン二世は、満足そうに笑顔を浮かべていた。


 そうこうしていると式典の時間になり、マーロン国王がやって来てそのままテラスに出ていき、外庭に集まった国民達にまずは式典の趣旨を話し始めた。


 このテラスで行う話は、マイクのように設置されている拡声用の装置を通し、外庭の壁にスピーカーのように設置されている拡声装置に転送されて、結構遠くまで届くようになっている。映像も幻影系魔法を応用して、遠くでも見えるように学院の講堂と同じスクリーンが設置されている。


「ラスタルの市民、または他の町からはるばる足を運んでくれた国民達よ、第一報から長々と時間を取ってしまったが、長い休息から帰還したアリシアと共に、本当の意味での魔女戦争の終わりを祝おうではないか」


 王様はもう告知をしてあるとおり、帰還したアリシアを含めた6人と追加1人の英雄の活躍を称え、あの魔女戦争が本当の意味で終わった事を祝福する事と、この度帝国の復活を阻止した功労者を表彰する事を話した。


 そうすると集まった国民達から大歓声と拍手が挙がる。


 そして、国王に招かれてアリシア達6人と、先程呼び寄せたシスティーがテラスに現れると、さらに歓声が大きくなる。


 《もー、こういうのが苦手なんだよねー》


 でもこの人達だって、直接の戦いはしていないけれど、あの時を生きて、出来る限りの生活を維持して、どこかで自分達の戦いを支えてくれたのだ。


 アリシアはそちらの方に思考を変えて、そのお礼をする事にしている。自分が今やどりぎ館の管理人をやるに至ったのは、この人達を見てきたからだ。そうでなかったら、誰かの手助けをする生活という答えは出なかった。


 国王直々の紹介の後、アリシアがテラスの中央に立つと、歓声も拍手も止んだ。アリシアの言葉を待っているのだ。そしてアリシアは言葉を紡いだ。


「ボクはその、英雄だなんて、そんなに格好いい人間じゃないんですけど、こんなに国の人に迎えて貰えて、本当にありがとうございます」


 それから自分が大きなケガをして、神様の元で休んでいた事。戦いの傷を癒やすために、やどりぎ館という世界をまたぐ下宿を任されている事。つい最近アンナマリーがやって来て、先日の事件を通して、またアリシアとしてこっちの世界に帰ってきた事を話した。


 ちょっと記憶が曖昧になっていて帰ってくるのが遅くなってしまったけれど、こうやって自分なんかの顔を見に来てくれた人達が沢山いる事への感謝を伝えると、大歓声がわき起こった。


 アリシアは何度もぺこぺこして、ラスタルの市民達から相変わらず変わっていないと笑いが起きたが、魔女戦争を終わらせた元冒険者達が全員揃い、あの戦いを生き延びた人達はようやく、戦争の終わりを実感することになった。


そしてまた国王が中央に立ち、先日のモートレル占拠未遂事件の概要と、功労者の話をした。


 なにせこの国に住む人間にとっては長きにわたって戦いを繰り広げた憎き国だ。その復活を阻止した事はとても喜ばしい話題であり、そこにもまたアリシアとヒルダとルビィの3人の英雄とシスティーが関わっているのだから、これほど痛快な話は無い。


「ではモートレル奪還に尽力した、勇敢な者達をここに紹介しよう」


 国王に招かれてアンナマリー達も出てくるとワッと歓声が起きる。


 テラスに続く室内では、アンナマリーの祖父と父親は、騎士修行の為に家から出て行ったばかりの娘が、早くもこんな晴れ舞台に立った事にちょっと泣きそうになっていた。


 この2人を良く知る前王のジョナサン二世も、かつての家臣が喜んでいる姿を見てにこやかに笑っていた。


 カリーナ家の人達もこの人混みの中にいるのだろうか。それは解らないけれど、アリシアも大きく手を振った。


「それではパスカール領主ヒルダ=パスカールから説明するわ」


 続いては領主として、ヒルダがあの事件の話をする。さすがにヒルダは立派なもので、アリシアのようにぺこぺこするようなことはなく、堂々とした口ぶりであの事件の顛末を語った。


 残念ながらワケがあってこの場に来る事の無かった、フィーネとエリアスの力添えがあった事も述べる。


 事件の中心人物から事の真相が語られ、その勝利の報告に、集まった国民達は飽きる事無く歓声を上げ続けた。


 まだ式典は続くけれど。


  * * *


 テラスでの演説を終えて、今度は全員揃ってのパレードが始まった。


 王都の兵隊達に連れられて、数台の馬車に別れて、城の正門から出てきて、王都ラスタルを大きく周回し、再び正門に入っていく。


 その間、アリシア達を近くで一目見ようと多くの人達がコースに集まり、その歓声を浴びた。


 カリーナ家の面々は特別に、魔女戦争の終了を祝うモニュメント近くに特等席として最前列を与えられていた。


 歓喜ので湧き上がるくラスタルを アリシア達は馬車の中から笑顔で手を振って町を練り歩いた。



 続いて、謁見の間で家臣達が集まる中、まずはアリシアから、国王から正式に褒賞を受け取る事になった。


 他の5人は3年前に終わっているので、アリシアだけ爵位を貰い、褒賞として相当額のお金と宝石を受け取った。


 また、用意されていた領地の代わりに王都ラスタルに将来の屋敷建築用の土地を貰い、替わりに魔法学院の職員として国の事業に関わる事でフラム王国への忠義を示すことを約束した。


 そして、領地となるはずだった土地では、記念事業としてにアリシアが希望する作物が栽培される事が改めて説明された。


 これからもう冬になるので、春に向けて近いウチに何を植えるか指定せよとの事だ。


 そこで栽培された農産物は「アリシア農園産」という名義で市場で売られるという。


 続いてラスタル奪還に尽力した件で、アンナマリー達も褒賞を受け取った。


 ここにはいないフィーネとエリアスは「ワインでいい」という事になり、後日国王が選んだワインを取りに来る事になった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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