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戦いは終わりを告げる -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 とうとう王都ラスタルでの式典の日を迎えた。


 魔女戦争が終わって3年が経ったとはいえ、魔女を倒し、戦いを終結したことになっているアリシアと、その仲間であるヒルダ達5人にシスティーを加えた7人を迎えて、本当の終わりを祝おうというのがテーマとなっている。


 そして、先日モートレルで起きた帝国残党による占領事件の解決を祝うという、もう一つのテーマもある。


 アリシアは仕立てて貰った式典用の軍服を着て、アンナマリーと一緒にヒルダに屋敷に向かった。


「絶対似合わないよー」


 アンナマリーはエバンス家の、式典向けの服を着ている。ギャバン教の式典で着ることはあるが、国家的な式典では始めてだ。


「そんな事は…」


 女顔で長いポニーテールにしたアリシアは、やっぱり男装した女に見える。


「最後に着てたドレスがいいのにー」

「それはダメですよ。アリシア様はもう貴族なんですから」

「ええー」


 爵位を持った貴族。土地は拒否したけれど立場は貴族だ。魔法学院所属の魔導士で、階位11位。フラム王国ではかなりの地位にあると言ってもいい。それが国王主催の式典で、大勢の国民の前で女装とか、それはやってはいけない。


「霞沙羅先生はすごいよなー」


 普段はだらしないお姉ちゃんだが、大佐としての仕事中は、多くの部下が付き従う軍人だ。アリシアが側で見ていても格好いいし、見習うところはいっぱいある。


 国の中心から逃げてきても、自分がやるべき事はやっている。


「あの人を見習って下さい」

「はーい」


 不満たらたらでたどり着いたヒルダの屋敷には、ヒルダとレイナード、オリビアにサーヤ、神官のフロイトが待っていた。


「システィーは掃除をやって貰ってるから、式典の時だけ呼ぶよ」


 エリアスとフィーネは来ないことは王宮に伝えてある。最初の時点で「無理っぽい」と言ってあるので、そこは了承してくれた。なので後日に御礼のいいモノが贈られるそうだ。


「じゃあ行くよー」


 アリシアはヒルダ達を連れて王宮の中庭に転移を行った。


   * * *


 王宮に着くと、今日の身の回りの世話をする使用人達が待っていた。


「ルビィ様は今ハルキス様とライア様を迎えに行っておられます」

「イリーナは?」

「イリーナ様は神殿間の転移装置がございます故、そちらで来られます」


そっかー、久しぶりに3人に会うのかー、とのんびり構えようとしたけれど、そういえば鏡で連絡をした時に「殴らせろ」と言われたことを思いだした。


 《ああー、しまったー》


 ルビィは魔術師だから可愛いモノだが、残り3人は全員ガチの戦闘タイプだ。仲間として2年間も一緒にいたから、3人の恐ろしさは充分に理解しているだけに不安だ。


どうなる事かと身構えていたら、まず聖騎士という物騒な称号を持っている肉体派神官イリーナがやって来て、助走をつけて殴られた。


「まったく、すぐ側にいたのに」

「ごめーん」


さすがにアリシアも超一流の剣士だけあって上手に殴られて鼻血も出ないが、痛いモノは痛い。


 そしてすぐにルビィが2人を連れてやって来た。


「ひー」


 まずは一番体格のいいハルキスに殴られ、次にライアにもにこやかに殴られた。


「ひどーい」


 《事情は神様から聞いてるはずなのにー》


「側まで来てたんなら言えよ」

「ほんとそうね」


 でも3人とも1発ずつで許してくれた。結局アリシアの悩みに誰も気が付かないまま冒険を続けてしまったことは自覚している。


「ヒルダはどうだったんだ? あいつが一番酷いだろ」

「そういえば私は殴ってないわね」

「もーやめてー、式典に出られなくなっちゃうよー」


 3発も殴られたのに鼻血どころか腫れてもいないのが、この国の英雄のすごいところだ。


 それでも殴られた頬は、念のために自分で治癒魔法を掛けておいた。


 そしてシスティー以外の主役達が揃い、久しぶりに元冒険者6人が揃った事もあって、積もる話もあるだろうと王宮内の一室を控え室として用意してくれていた。それも6人だけの方がいいだろうと気を使ってくれて、アンナマリー達は他の部屋へ案内されていった。


 部屋に入るなり、アリシアは持ってきていたリュックからカステラと焼きドーナツ、水筒からレモネードをそれぞれ用に準備をした。


「アリシアの奇跡だな」


 出されたカステラを食べながら、ハルキスは呆れたように言った。少し前に鏡の魔工具で話しをしているけれど、魔女戦争の終わらせ方はやはりおかしい。


「よく魔女をつれてこの世界からいなくなろうだなんて提案したわね」


 女装をしたり、食事に並々ならぬ情熱を注いだりと、色々とおかしなリーダーだったけれど、久しぶりに会って、ライアも苦笑いしかない。


「だって、部屋に入ったらエリアスが泣き出しちゃって何か可哀想なんだもん。やりたくないのにって言われたらシンパシー感じちゃって」

「オリエンス神も笑ってたわよ」


 神官として立場的に近い位置にいるイリーナには、オリエンスも少しフランクな態度を示したようだ。


「結局システィーの出番は最後の最後で無しだったのか。あいつは元気にしてるのか?」

「先に会っておく? ひょっとすると式典中はまともに話が出来ないかもしれないしねー」

「ひゅこく、かはっへるはよ」

「ヒルダ、そろそろそのリスみたいな食べ方やめなさいよ」


 出されたとたんにドーナツをモリモリ食べ始めたヒルダにライアもあきれ顔だ。


「あーひゃん、ふで、腕を上げてるのよ。5人で集まった時に食べたでしょ」

「それは食べたわよ。あれアリシアなんだって驚いたわよ。旅の料理もよかったけど、やっぱりちゃんと台所のある家に定住すると、あんなに腕が上がるのね」

「あのプリン、嫁と子供に食わせたいから今度作りに来いよな」

「まあ、それぞれの今の生活とか見たいから行くよ」


 声がけして、システィーの準備が整ったとのことなので、アリシアは青の剣を呼び出した。


 今は仕事中なので、本体では無く、柄の所に上半身だけ人型をとって登場した。


「3人ともお久しぶりです。私は今マスターの元で建物管理のサポートをやっているんですよ」


 挨拶もそこそこにシスティーが喋り始めたので、性格が大きく変化した事を知らない3人は驚いた。


「アンナマリー様意外は中々癖のある入居者ですが、それぞれが快適に生活できるよう日夜マスターと一緒に館を切り盛りしています。最近は料理…」

「これホントにシスティー?」


 システィーとの付き合いは半年程度。とはいえ、こんな性格だったとはライアは知らない。アリシアが操っている人形か何かのようにも思える。


「モートレル事件の時に普通に会話してきて、私も驚いたわよ」

「メイドみたいな服着てるんだゾ」

「おいおい」


 会話を遮られたシスティーは久しぶりに全員揃って嬉しいのか、まだ話を続ける。


「最近は料理も任される事もありまして、それで私は今スープカレーという料理にはまっているんですよ」


「ええと、システィー、お久しぶりね」


「イリーナも元気そうですね。今は司祭をされているとか。私が一緒にいた期間はあまり長くはありませんが、皆さん望んだ場所にたどり着けて良かったですね。私自身はまさか…」


 久しぶりに顔を見て嬉しかったのだろう。アリシアも呆れるほどに一方的に自分のことを喋って、システィーは帰っていった。


「なあアリシア、あいつに何があったんだ?」

「あのねー、食料の買い出しとか食事でお店に行くようになって、色んな人と喋るようになっていって、いつのまにかああなってたんだー」

「星の剣も成長するのね」

「でも、モートレル事件の時に出番が欲しいってうるさかったんだよー」

「好戦的な所は変わってないんだな」


3人はシスティーのあまりの豹変ぶりに若干引き気味だったけれど、以前は見せなかった笑顔は印象的に残った。楽しそうだし、あいつも良いところにたどり着けたんだな、と思うことにした。


「どこかのタイミングで、アイツも含めて七人でメシでも食おうぜ」

「その時はアーちゃんに料理でもてなして貰うわ」

「そうしましょう、そうしましょう。更に出来るようになってるじゃない」

「いいけど」

「ところでアーちゃん、それ食べないなら頂戴」

「こっちは変わってないゾ」


 それぞれの個人的な話として、ハルキスは多少は料理をする人だったので、次期族長が決まった今でもやっているそうだ。


 ライアも結婚して旦那がいるようになっても料理はさっぱりだけど、劇場で貴族向けの食事を出したいので、今は勉強中だとか。


 イリーナは偉くなってお付きの人がいるから、神殿では台所から遠ざけられてしまって、更に料理から離れてしまったそうだ。


 そうしてみんなの近況を話していると、お城の使用人がやって来た。そろそろ式典の時間だと告げられたので、全員テラスまで移動を開始した。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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