新しい出会いと久しぶりのおもてなし -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
魔物の襲来に対して、早速レイナード率いる『第一騎士団第一部隊』が飛行体に対して迎撃態勢を整えて町に出て行った。
中と外のどちらを襲撃するのかは解らないので、ルハードにも連絡を走らせているから、外の町は別に動いているはずだ。
「隊長、観測出来ました」
望遠鏡を覗いていた一人が馬上のレイナードに報告する。
「アーちゃんの魔工具が早速威力を発揮したわね」
ヒルダも軽装だが、一応武装をして出てきている。この魔獣感知用の魔工具を確認するためだ。
「来た来た。ジャイアントバットだねー。数は11体。感知器の感度は想定通りだから、上手くいってるみたい。こっちの世界でもちゃんと動くもんだねー」
ここまでの確認が出来れば持ってきた甲斐はあるというもの。
素材は日本で集めたモノで、アシルステラのモノは一切含まれていない。元皇女達が持っていた魔工具も素材的には別世界のモノだったので、作った人間もこの事実を知っているのだろう。
やっぱり霞沙羅が持っている技術はすごいと今更ながら思う。
「こんなものを持ってきてくれたアリシア君には感謝だな。よし、警報を鳴らせ。全員弓と槍を準備せよ」
隊員の一人が走り、町に備えられた警報装置からラッパのような音が鳴り響いた。それを聞いた住民達は建物に逃げ込むか、路地裏に逃げ込むなどの避難行動を取った。
「こんなの作ったの?」
「ルビィが設置していったのよ」
「へー」
王都にも無かったけれど、じゃあ今はもう設置されているのかなと思う。階位8位だけあってルビィも色々とやっている様子がうかがえる。
そして、ようやくたどり着いた魔獣ジャイアントバット達はモートレルの上空をぐるぐると飛び回り始めた。人影は少なくなったが、どこを狙おうかと考えているようだ。
「とりあえず一匹は貰おうかしら」
近くにいた兵隊から矢を一本拝借すると、ヒルダはそれを投げる。音速を軽く数倍は超えた矢は狙いを誤る事無く、1体の脳天を貫いた。
「ヒ、ヒルダ様」
冒険者を引退しても元英雄の腕は衰えていない。人間離れした技に、騎士団の誰もが驚嘆した。
変わって、いきなり群れの一体がやられてしまったので、ジャイアントバット達の動きが止まった。
「我らも続くぞ」
騎士団達は一斉に矢を放ったが、まだ高度を取っているので、飛び回っているジャイアントバットにはなかなか当たる事は無く、当たったとしても、羽の皮膜に刺さるか、速度が落ちて弾かれるだけだ。
「アンナ、【風の加速】」
アンナマリーが目に入ったので、つがえていた矢に風の魔法を付与する。
何となくだが、アリシアとして退治してはいけない気がしたので、手助けだけにして、こういうやり方もあるとアンナマリーの経験にさせる事にした。
「ギィッ!」
アンナマリーが放った矢は風の力を纏っていつもの数倍の速度で飛び、一匹の足に深々と刺さった。ただ飛行タイプなのでそんなことでは撃墜には至らない。
「もう一匹貰おうかしら」
ヒルダがまた矢を拝借しようとしたところ
「いやー、やっぱ部下にやらせた方がいいぜ」
「なんで先生がいるんですか?」
声の主は霞沙羅だった。しかも一緒にエリアスまでいる。
「こいつがアンナマリーの様子を見てこいと言うんでな」
「え、アーちゃんこの人って」
「あの日、館にいなかった英雄さんだよ」
どうもエリアスが霞沙羅を連れてきたようだ。まさかエリアスが自主的にこっちの世界に来るとは思わなかった。
「お前がアリシアの冒険仲間か。強すぎる一旦は見せて貰ったが、領主様は手本だけ見せて、配下にやらせるべきだな」
「でも霞沙羅先生、飛んでるのって厄介なんですよねー」
ジャイアントバットはまだ諦めてはいないけれど、かなり警戒していて、中々いい位置には降りてこない。魔法を放つ者もいるが、距離が足りなかったり避けられたりもしているけれど膠着状態になってしまっている。
「あれコウモリ関係だろ。ちょっと怯ませてやるから、一斉に叩け。なあ馬上の隊長さん、今からあいつらが落ちてくるから、突撃の指示をしろよ」
霞沙羅は前に出てくるついでに、レイナードの腰をポンポン叩いた。
「エリアス、馬に聞かせないようしてくれ」
「急に言うのね」
霞沙羅は持ってきた長刀を杖代わりに、アリシアが教えたアシルステラ側の魔法を利用した魔法を空に放った。ぱっと見何も見えないけれど、上空を飛ぶジャイアントバットがいる空間を中心に超音波が荒れ狂った。
「ギャアッ!」
「グエアーッ!」
エリアスは霞沙羅とタイミングをあわせて、ある程度の高さから下を超音波から遮断した。これをやっておかないとレイナード達が乗っている馬達にも聞こえてしまい、下手すれば振り落とされてしまう。
突然の超音波の直撃をくらい、ジャイアントバット達は地面に落下して苦しそうに悶え始めた。だがそれでも自分に有利な空に飛び立とうともがく。
「ほれ、チャンス到来だぜ」
「あ、ああ。総員、とどめを刺せ」
何をやったのかは解らないが、とにかくチャンスだ。レイナードの指示で隊員達が槍と剣を持って、ジャイアントバット達に殺到した。
数匹ほど、空中に跳び上がったのもいるが、フラフラとしか飛行出来ないから、槍から逃れる事は出来ず、抵抗むなしく全てが退治された。
「これがファンタジーな世界か。フィーネのところに行った事はあるが、こっちの方が私にはしっくりくるな」
シャツとジーパン姿の霞沙羅は世界から浮いてしまっているが。
「これがアリシアのところの剣士か。こいつは強そうだな。腕前で言えばウチの奴と同等くらいはあるな」
「この人が向こうの世界の英雄さんなのね。そちらも強そうじゃない」
「戦力的にはそこのアリシアと同じタイプで、まあ同等くらいだぜ。剣技だけでやったらお前には勝てないな。ところで手に持ってるそれは何だ?」
「あのー、こっちの世界の魔獣レーダーです。この町の設備が壊されたから、携帯用ですけど代用品を持ってきたんです」
「前になんか作ってたヤツか。地球側のもあるんだろうな?」
「そっちがオリジナルです」
「ならあとで貸せ。あれば学校で使えるかもしれん」
あの馴れ馴れしいアリシアが敬語を使っている霞沙羅にヒルダは興味が沸いた。謙遜か真実か解らないけれど、アリシアと同等の能力があるとすれば、相当のモノだ。剣だけではアリシアはヒルダに勝てないが、全部の技能を使われたら互角以上の相手だ。
自分の実力を存分にぶつけられる仲間と遠く離れてしまい欲求不満気味なヒルダは、詳しく話しを聞く為に霞沙羅を屋敷に招く事にした。
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