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霞沙羅とファンタジーな世界 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 日本では日常生活を送りつつ、霞沙羅(かさら)とお互いの視点からの疑問点をクリアにしながら、世界を越えた4つの魔工具(まこうぐ)についてのレポートは完成した。


 今は談話スペースでお互いに内容を確認し終えたところだ。


「私は明日にでも本部に連絡を取るか。お前はどうするんだ?」

「一先ずルビィを経由して、日程を決めて貰います」


もう夜9時が迫っているという時間だ。明日も平日なので時間が取れるかどうか解らない。


「とりあえず連絡を取ってみたらどうだ? 何かあるんだろ?」

「ありますよ」


 先日ルビィから貰った鏡を部屋から持ってきて連絡をしてみた。文明的に夜が早い世界だけど、魔術師だし、起きているかもしれない。ダメならまた明日、学校から帰ってきてからにすればいい。


「こういうのはファンタジーって感じだな」


 霞沙羅(かさら)が横に来て鏡を覗き込んできた。


対象者に呼び出し的な信号を送り、向こうが反応すれば鏡にお互いの姿が映し出されるという作りだ。


「こっちじゃスマホかPCでだろ。セキュリティーとしては完全双方向だから良さそうだな」


このお姉さんはオシャレな感じだけど、そんなにオシャレはしない。化粧も香水もしないし、ソープもシャンプーもこの館に据え付けられているモノしか使わないから、ここまで近づかれても世に言う女性らしい香りが薄いのがちょっと残念だ。


「お、出たぜ」


 ルビィが反応してくれて、向こうの映像が映された。見覚えのある室内だと思ったら、学院の職員棟にある個室だ。こんな時間なのにまだ研究か何かをしているのだろう。


「ルーちゃん、今いい?」

「隣にいるのは誰ダ?」


 どうやら霞沙羅が映り込んでいるらしい。


「霞沙羅先生だよ、あの晩いなかった人」

「その人がそっちの英雄カ?」

「この鏡に興味があるみたいでね。まあいいんだけど、錫杖とかのレポートが出来たよ、って報告」

「こんな短い期間デ?」

「この霞沙羅さんがいるし。先生もこっちの世界で同じ制作者が関わってるって疑いのある事件を解決しているから、一緒に作ったんだよ」

「すごい人なんだな、その人ハ」

「だから発表の日程決めてね。あと、こんな時間に学院で何やってるの?」


横にいる霞沙羅が鏡を触ってくる。動作状況を確認し始めた。


「小説を書いているんだが、出版部から早く次を出せと言われテ」

「ボクらのやつ? アンナマリーが下宿に持って来てる冒険譚の事かな?」

「そうダ。アーちゃんが帰ってきたから、急かされテ。なんかノって来たから、執筆しながら今日はここに泊まる予定ダ」


 アリシア達の冒険は、一度はダイジェスト版で出版が終わっていて、それが好評だったので、細かいエピソードを追加して物語としたシリーズが学院から出版されている。


 著者はルビィだ。


「そうなんだー」

「ところでお腹が空いタ」

「だったら何か作って持って行くよ、ってどうやって行こう。時間的に正面から学院には入れないし、まだ細かく転移出来ないし」


 謁見の時に転移先として王都ラスタルの座標は思い出したが、まだ大雑把すぎて町の中の細かいイメージは思い出せない。


「エリアスに頼めばいいだろ。あいつのことだからお前らの世界くらいならどこでも行けるだろ」

「そ、その人、真実を知ってるのカ?」

「霞沙羅さんはエリアスの正体を知ってるよ」

「聞いてきてやる」


 ええー、あんまりエリアスの力を借りたくないんだけど、と思っていると、笑顔のエリアスを連れて霞沙羅が帰ってきた。


「ルビィさんの部屋なら、問題なく送ってあげられるわよ」

「何だかんだ言っても、パートーナーの力になりたいという女心を汲んでやれよ。大事にするというのは箱の中に閉じ込めておくという事じゃないぜ」

「はーい。じゃあちょっと聞きたい事もあるから。ちゃんと夕飯は食べたんでしょ?」

「気が付いたら夜になっていタ」


 つまり食べていないという事だ。


「じゃあちょっと、冷凍してあるシチューと揚げ物とパンでも持って行くよ」

「カレーがまた食べたイ」

「あの、5人で集まった時に持って行ったシチューなんだけど」

「シチューがいイ」

「じゃあちょっと待っててね」


パウチして冷凍していたビーフシチューを暖めて、同じく冷凍していたコロッケを一つ揚げてバターロールに挟み、そのままのバターロールをいくつか箱に纏めた。後はお茶を水筒に入れて、ちょっとお菓子も用意した。ヒルダのような大食いではないのでこのくらいの量でいいはずだ。


 あとは、貸してくれと言われていた、ヒルダから回収した通信用のクリスタルを部屋から持ってきた。


「じゃあ行くか」

「霞沙羅さんも行くの?」

「ファンタジーな魔法使いの部屋を見てみたいじゃねえか」

「あのー、すぐ帰りますからね」


  * * *


 エリアスに転移を頼むと、そこはさすが女神様。王都ラスタルにあるルビィの研究室に正確に送り込んでくれた。


「今日は帰りも頼めよ」

「はーい」


 転移して解った事は、この部屋は職員時代に、ルビィと2人で共同で使っていた部屋だ。だけど今はルビィだけの研究室になっているようだ。


「整理はしようよ」


 2人で使っていた時は、アリシアのエリアは綺麗に整頓していたのに、ルビィが整理もせずに本や道具や素材を置くので、場所を侵略されたくらいだ。


 今は一部屋全部使えるはずなのに、それが全体に広がってしまっている。かろうじて応接用のソファーセットは無事のようだ。


「ぬお、異世界の英雄もいル」

「おう、部屋の写真撮らせてくれ」

「写真とハ?」

「謁見の時に持ってきたあの綺麗な絵があるでしょ。あれの元になるものだよ」


 霞沙羅(かさら)はポケットからデジカメを取り出して、ルビィの部屋の写真を撮り始めた。


「まあごめんね、とりあえずご飯を食べよう」


 ルビィの作業机は原稿と書類で埋まっているので、応接のテーブルに食事を広げた。


「まさにあの時の牛肉シチューじゃないカ」


 しかも今日は一人前なのであの時より量が多い。


「材料は向こうの世界のモノだけどね。ボクもアンナマリーも同じの食べてるから大丈夫だよ」


ルビィが遅い夕食を食べ始めたので、アリシアは霞沙羅の相手をした。部屋の外には出ないようにしてくれているけれど、窓からは暗いながらも色々なモノが見えているからはしゃいでいる。


「城壁だぜ。上でランタンが動いているが、衛兵がいるって事か?」


 城壁の上では今日も見張りの兵が警戒を行っている。


「他の部屋にも人がまだいるのか?」

「夜は静かですからねえ、集中したい人がいるんですよ」

「すげえなあ。ヨーロッパに行った事はあるが、こういう町は残ってないからなあ」

「アーちゃん、お肉が柔らかいゾ」


 はしゃぐ霞沙羅、またあのシチューが食べられたとモリモリ食べるルビィが落ち着いた頃、アリシアはクリスタルの通信アイテムを渡した。


「ルーちゃんから貰った鏡の方が出来はいいと思うけど」

「いやいや、そういう事じゃ無イ。アーちゃんはそういうのを解っていなイ」


 食後のお茶を楽しんでいるルビィはアリシアから通信アイテムを受け取った


「今は使わないけど、何かあったら使うから適当に返してねー」


この部屋の中に埋まらなければいいけれど。


「それで、この人はどんな感じの人なのダ?」

「口は乱暴だけど、いい人だよ」

「そういうのじゃ無くテ」

「ボクと同じタイプかな。剣も出来て、魔法も出来て、神官魔法も出来て、幅広い感じ。強さ的には、先生の方が強いかなー」

「同じくらいじゃねえか?」


 デジカメのデータを確認して、ニコニコしている霞沙羅はそう言った。実際には10回戦って、アリシアが4回勝てるくらいだ。


「この人が王者の錫杖を解析したんだロ。それはすごいじゃないカ」

「先生はいくつかの世界の魔法を習得してるからねー」

「たまたま、前の管理人の所だったってだけだぜ。まあ何日か後にこいつが解説をするだろうが、私もその件の相談をしたい。講義が終わってからでいいが、ここのお偉さんを紹介してくれねえか?」

「どうしてなんダ?」

「事件に共通性があるからだ。こっちで次に何かあった時に情報が欲しい」

「こっちは多分先生を紹介しろって話になると思いますよ」

「そうか、なら私はいいぜと伝えておいてくれ。こっちの魔術はこいつのおかげで習得済みだからな。話も合わせてやれる」

「すごい人じゃないカ」

「こいつだってウチの世界と、錫杖が来た世界の魔術は習得済みだぜ。私の部下達の教育も担当しているくらいだからな」

「他の世界の魔法とか羨ましすぎるゾ」

「まあボクが選んだ仕事だからねえ」


そこで部屋のドアがノックされた。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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