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アリシアとしてのこれから -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 謁見というか会食は無事に終わり、アリシアとヒルダとルビィは中庭のベンチで話をしていた。アンナマリーが久しぶりに会った父親に個人的な報告をしている最中だから、それが終わるのを待ってから帰るのだ。


「マーロン様も納得してくれたものね」


 前王様に言われていた報酬は爵位と土地だった。世界の危機を救った英雄として、地位と名誉と土地を与えて、この国の行く末に貢献して欲しいという事だったのだが。


「あんなにいらないよー」


 結局、王立魔法学院に戻るので、魔術の発展とこれからの魔術士の育成にあたるので、ルビィと同じ条件でいいとなった。という事で、爵位と報酬と王都ラスタルに屋敷用の土地を貰う事になった。


 アリシアは現在やどりぎ館の管理人をしている。そもそも神々の事業を任されているのだからと言われてしまうと、いかに国王といえども弱い。王家はオリエンス教を信仰しているので、その神の意志に異を唱えるという考えは出来ない。


 ただ、国の重要な事業である魔法学院に再び関わってくれるワケだ。ルビィには劣るものの、国内外でも魔術師としての評価が高いアリシアも学院の運営に参加してくれるのであれば、とお許しは出た。


 あの場にいた大賢者タウも魔法学院の責任者として助け船を出してくれた事もあり、「英雄の一人として、王国に留まり、その力を存分に活かすのだ」という着地点となった。


 領地としての土地は貰わないけれど、学院の職員としてお給金は貰う。何も貰わないというわけでは無いし、爵位持ちとして、国の事業に関わる場合は働きに応じて報酬も出すという。依頼があれば、王都の騎士達への教育にも協力しますと、同席した3人の将軍に約束もした。


 貰うはずだった土地は引き続き王族の領地となったが、折角なので、料理好きなアリシアが望む農作物があれば、記念事業として耕作を行おうとなり、冬の間に提案する事にした。


「何を栽培するの?」

「お茶とか芋とかハーブとか考えてるけど。お米か小麦もいいかなー」


 習得した地球の料理をこっちに持ってきたい、という話をしたら、王様達も前のめりになって聞いてくれた。この英雄アリシアが料理好きである事は承知しているし、魔女戦争時に同じ戦場に立った家臣や騎士達からの評判も良かった。


 ヒルダもモートレルで行っている食堂改革の事を説明したので、アリシアらしくてなかなか面白そうだと納得してくれた。では何が足りないのか。足りないのであれば用意していた土地で優先的に作ろうとなった。


「とりえず何とかなったー」

「良かったわね。なぜかルビィがだんまりしてるけど」

「え、いや、そノ」

「ああは言ったけど、ボクも向こうの生活があるからね。今のところそこまで学院に関わるような事はないよ」

「そ、そうじゃなくて、だナ。私の階位は知っているナ?」

「8位でしょ。すごいなー。やっぱり冒険中も色々助けられたしねー。ボクに出来ない無茶振りも聞いてくれたし」


 ルビィとは長い付き合いだけど、魔術に関しては一度も勝ったことはない。学院でも常に1位と2位の関係だったから、アリシアはルビィの方が魔術師として上である事は昔から認めている。


「うちの城壁もそうだし、学院に帰ってきてからもそれだけの事はしてるじゃない?」

「アーちゃんは27位だったナ」

「何もやってないしねー」


職員だった1年間は、賢者達のサポートをしたりをしていたが、これといって何もしていないし、冒険に出てからはもっと何もやってない。そしてこの3年半はフラム王国にいないのだから本当に何もやってない。


「私が8位なのはアーちゃんのおかげでもあるのダ。学院に戻ると、冒険中にアーちゃんが考えついた改良魔術を纏めよと言われて、それを纏めた功績も含まれてテ」

「でもルーちゃんだって出来るかどうかで付き合ってくれたし、上手くいかないとアドバイスもくれたじゃん。ボクだけのモノじゃないでしょ」


 冒険中のアレンジ魔法は全部が全部無かったことにはなってなかった。学院には記録として残されている事にちょっと安堵した。


「その言葉が辛イ」

「ボクは嬉しいけど。どの程度までかは解らないけど、ちゃんと残してくれて。イリーナの方は教団内だけだったから、がっかりしててね。良かったー」


 事件が終わって、事後処理もあって忘れていたけれど、ルビィの中ではずっと煮え切らなかった思いが、アリシアと面と向かった事で戻ってきてしまった。


「ルビィ、どうかしたのか?」


 アリシアに感謝されればされるほど泣き出しそうになっているルビィに、事後の打ち合わせから出てきた大賢者タウが声をかけてきた。


「あ、アーちゃんの功績を、私が独り占めしているみたいで、情けなくテ」

「何を言う。お前に頼んだレポートは連名で出ていたではないか。纏められる人間はこの世界にはお前しかいなかったのだ。だが当然、当事者であるアリシアが帰ってきた時の対応は準備してある。お前の評価にアリシアの分は加味されてはいない。天望の座の名にかけて言うが、8位という階位はお前だけで掴んだ物だぞ」

「もー、大賢者様だってそのくらいは見てるって」

「そ、そうか、良かっタ」


 長いことアリシアの手柄を奪った事を誰にも相談できず悩んでいたのか、天望の座に所属する大賢者に真実を告げられてホッとしたルビィは、崩れるようにその場にへたり込んだ。


「誤解も解けて良かった」

「アーちゃんも人が良すぎるわね」

「勝手な事情でいなくなってたしねー。文句は言えないでしょ」


 罪の意識にさいなまれた女神と一緒に異世界に住むことになるなんて、全く想定していない。勝手な行動をしたのだから、もし全てルビィの功績になっていたとしても、アリシアは文句を言う気は無かった。


「そこでだ。日程が決まれば連絡をするが、お前は一度学院に顔を出せ。お前がいつまでも27位では王にもメンツが立たないし、学院が大陸中の笑いものだ。後日改めて階位を言い渡す」

「良かっタ…」

「そんな泣かないでよー」

「そしてお前には別のレポートを依頼する」

「ええー、こっちに帰ってきたばっかりなのにー」

「学院に復帰すると言ったのはお前ではないか。国王もしかと聞いている」

「それはその、今さっき言ったばかりじゃないですかー」


 言ってしまったのは確かだが、まだ正式にいつから復帰するとは言っていない。何とも気が早いことだ。


「例の、冷蔵の札を作ったのは結局お前だったな。あれの解説書を作れ。やっていることは解るが、我々では誰一人意図が理解が出来ない」

「あー、まあ、確かに。あれは日本で生活しながら作った術式ですからねえ」


 向こうには電化製品が溢れているので、それを参考に色々と作成した術式がある。こっちに機械を持ち込むのは無理だから、せめて代用品でもと思って作った一つだった。


「あれ、そんなに重要ですか?」

「お前達の冒険譚に触発されて、騎士団や軍が部隊の移動に際し、生鮮食品を持ち歩けぬものかと王からも持ちかけられておった。ルビィのレポートにある冷凍術は料理知識のあるお前にしか使いこなせないしで、悩んでおったのだが、あの符術は別格の完成度だ。その制作者がアリシアと解った以上、王宮として今後使用したいと仰せだ」

「まあ、日本の軍でも採用されてますし」

「何?」

「あの、さっきの写真にいた青い髪の人が向こうの国の軍人さんで、ボクは管理人の仕事としてその人が所属してる部隊に協力しているんですよ」

「ならば話は早い、すぐにでも提出せよ。王も早速お前が動いた事で、さぞお喜びになるだろう」

「アーちゃんは向こうの世界で何をやってるの?」

「一応、あの館に住んでる人の協力をするっていう条件で管理人をやってるんだけどね、それでアンナマリーの事を見てるんだ。青い髪の人は新城(しんじょう)霞沙羅(かさら)さんて人なんだけど、あの人が管理してる部隊の技術者として、兵隊さんに色々と教えてて、その一環で」


機械文明がはびこってるけれど、現場で調理用の機械が壊れないとも限らないから、バックアップ用として採用された。


「そこの演習に参加する時にキャンプ食を作ったり、駐屯地の食堂メニュー作りに参加させて貰ってるから、ヒーちゃんの所で多人数向けの食堂料理を作れてるんだよ」

「アーちゃん、その経験をウチの騎士団に活かしてくれない?」

「その事実は王にも伝えておこう」


 いきなり2人が食い付いてきた。会食での話ではあまり細かい事まで話しをしていないので、余計なことを言ってしまったかもしれない。


「アーちゃんが領主にならなくて良かったわ。お隣さん同士だし、料理沢山持ってきてね」

「うわあー、アーちゃん、学院で待ってるゾ」


 まだ泣いていたルビィが急に抱きついてきた。


 錫杖の解説もあるし、いきなり大変な事を押しつけらられてしまったアリシアであった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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