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アリシアとしてのこれから -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「マスターの晴れ舞台ですからね、留守はお任せ下さい」

「我はゆっくり温泉に入っている故、気にするでない。お主は堂々と、己の成した事を誇るがよい」

「私は自宅でレポートを書いているだけだから、気にすんなよ」

「お掃除くらいならやっておくわ」


 住民の皆にフォローされて、伽里奈、もといアリシアはアンナマリーを連れてヒルダの屋敷に向かった。


「王城の行儀作法はまかせてください」

 王城の騎士団ではないにせよ、将軍の娘としてあの堅苦しいお城の雰囲気に慣れているアンナマリーもついて来てくれるから、アリシアが変な動きをすれば指摘してくれるだろう。


 いつもは頼りないアンナマリーも、今日はとても頼りがいのあるお嬢様だ。


 そのアンナマリーは軽装の鎧姿だが、下に着ている服はエバンス家の家紋が刺繍された純白の礼装だ。いつか王に呼ばれることもあるだろうと、父親が持たせてくれていたのだ。


 だったら、呉服屋兼ファッションブランドをやっている、霞沙羅の実家から貰った袴でもよかったんじゃないだろうかと思ってしまった。でも女物の袴だ。となると、やっぱりダメかもしれない。


 エリアスに見送られて屋敷にたどり着くと、ヒルダは領主っぽい、ゆったりとしたローブ姿で待っていた。


 同席するルビィは魔導士的なローブとマントだ。


「なんかボクだけ浮いてる?」

「それは仕方がないでしょ。でも異世界人から見ても、きちんとした服には見えるわよ」

「似たような服といえば、冒険者時代のアーちゃんの黒スーツ姿は人気だったナ」


 貴族のご令嬢を警護する仕事を受ける事もあって、側にいるために男の使用人的な黒いスーツを着た事が何回かあった。さすがに服は返却したけれど、そのエピソードはルビィの冒険譚で特に人気があるとか聞いた。


 無事に仕事が終わった後に、そのご令嬢から引き留めがあったくらいには似合っていたらしいが、男らしさにこだわっていなかったのであまり自覚は無い。


「とにかく、待たせるわけにはいかないから行くゾ」


 ルビィの転送魔法で、4人はラスタルにある王宮の中庭に転移した。


 そこには国王を中心として、まさに国の中心人物達が並んで待っていた。


 事前に聞いていたとおり、かつてのマーロン王子は、マーロン国王としてそこにいた。


 残念ながら、いち国民として馴染みのある先代のジョナサン二世の姿は無かった。現在住んでいるのは王都ラスタルとは別の、王家領の別のお城。ただ、体調が戻っているようなので、いつかは会う機会もあるだろう。


それにしてもまだ27歳の王様は、なんというか、感覚的には若すぎて違和感がある。


「アリシア=カリーナ、この度フラム王国に帰還しました」


何はともあれ、アンナマリーからの指示を受けて、アリシアは王の前に跪いて、挨拶をした。


 昨晩アンナマリーと特訓したから角度もバッチリ決まった。


「アリシアよ、よくぞ王国にへ戻った。そして早速の活躍聞いているぞ。まずはこの3年の話を聞かせるのだ」


 一応は戦友という事になる元王子、そして現在の国王様は、口調としてはお堅いけれど、気さくにニッコリとした表情で帰還したアリシアを迎えてくれた。


 機嫌も良いようで、すぐに中庭から来賓用の広間に案内されて、そこでの会食となった。


  * * *


 テーブルには飲み物やお菓子が並べられて、和やかな雰囲気が作られている。ただ、そこにいるのは国王と、大臣や将軍といった国王に仕える重鎮おじさん達と宮廷魔術士の大賢者タウで、ご年配プレッシャーがすごい。


 けれど今日はアリシアを叱責する場ではない。緊張感はあるけれど、それなりに和やかな雰囲気となっている。


アリシアは、世界の禁忌に触れてしまわないように用意していた、嘘と真実が入り交じった3年間の話をした。つまり、魔女と相打ち状態になり、神によって保護され、目覚めてからリハビリのために異世界にあるやどりぎ館で、神々からの依頼によって管理人をしている、という話だ。


「アンナマリー、その館は本当の事なのだな?」


 同席している父親、フラム王国三大将軍の一人、ランセル=エバンスは娘に尋ねる。アリシアの語るやどりぎ館は彼だけでなく、出席者全員がにわかには信じがたい話だ。


「はい。私は毎日モートレルの騎士団とその館を往復する生活を送っております」


 この事は間違いなく聞かれるだろうと、館で撮った写真を持ってきていて、アンナマリーはそれを父親に渡した。


「こちらが館での生活風景になります」

「恐ろしく精巧な絵だな」


 デジカメで撮ってプリントアウトした写真なので絵ではない。こちら側の人間が見て、あり得ないほど細かで鮮やかな絵に見てるのは仕方が無い。


「絵ではなくて、異世界にある写真というモノで、これはその時の場面の記録なのです」

「う、うむ」


 見た事もないテカテカに光る紙には、まさに愛娘が自分の部屋でくつろいでいる画が描かれている。それも何枚も。他の住民だろうか、見知らぬ人達に囲まれて、テラスで食事をしてる画もある。


 それを回し見する王様達も、あまりにも綺麗な絵に映るモノに唸るしかない。


「青い髪の人物は事件当日は不在だったのですが、その他の方々は今回のモートレルの件で協力してくれた人達です」


 霞沙羅(かさら)も写真に映っているけれど、今回の事件とは関係ない。


「ヒルダ殿、そうなのか?」

「ええ。その内の一人はアリシアの剣システィーですが、銀髪と金髪の2名もかなりの力の持ち主で、事件の際には快く力を貸していただきました」

「ほう、そうなのか」


 我々と戦っていた元魔女が混ざっているのですよ、とは言えないヒルダであった。


 その二人は女神なんですよ、とも言えないアリシアだった。


「そうか、アンナマリーは本当に奇跡的にアリシア殿と出会ったのだな」

「怪我の関係で記憶が曖昧になっていて、言い出せずにすみません」


 国に帰りたくなくて他人のフリをしてましたとは言わない。


「何はともあれ、アリシア、よくぞこの世界を混乱させた魔女を打ち倒してくれた」

「は、はい」


 エリアスの事はもういい。とにかく今は何を言われるのかなと身構える。


「其方の帰還についてはこのラスタルだけでなく、国中に広まっている。魔女戦争は既に終わっているが、其方の無事だけが私だけでなく国民全員の心に引っかかっていたのだ。あの魔女戦争の本当の終結を祝う事が、死んでいった者への鎮魂ともなろう。ついては其方達6名の英雄全員を呼び、この王都で式典を行う」

「は、はい」


 死者への鎮魂とかそういう事を言われてしまうと断る事は出来ない。なんというか、両肩に重しを乗せられたように、逃げていた3年間が申し訳なく感じる。


 平民であっても、戦闘も出来ない人達も、めぐり巡れば自分達の冒険を支えてくれた人達とも言える。せめて今生きている人達の喜びに答えないと、今後この国を歩く事は出来そうにない。


「では早速準備を始めましょう」


 と王様の側にいた大臣の一人が答えた。


「それから、此度の旧帝国残党による事件を阻止した中心人物も式典に招待したい。何と言っても我が国だけでなく同盟国も100年間苦しめられた、あの憎き帝国の復活をくじいたのだ。国民達も非常に関心を持っている」

「それはどこまでになるのでしょうか?」

「聞けば一時占拠されたモートレルへ反攻作戦を敢行したという。その時の参加者を集める事は出来るか?」

「私の方は、アンナマリーを含めた全員が騎士団所属ですから、必ず出席させましょう」


 自分もですかと、アンナマリーがビックリしてヒルダと父親である将軍を見た。将軍は事前に聞かされていたので、一つ頷いた。


「ルビィは式典の主役の一人であったな。アリシアよ、館の住民をこの王都に呼ぶ事は出来るか?」

「システィーはボクの、私の剣ですから大丈夫でしょう。エリアスはどうでしょうか。説明しましたが、古代神聖王国の巫女ですから、現在の人の前に出たいとは思わないかもしれません。もう一人のフィーネさんは、更に別の世界の魔法使いですから、難しいかと思います」

「うむ」


 話を聞いて王たちは考え込んでしまう。さすがに国民ではないから、国王が無理に「来い」とは言えない。


 エリアスはそもそも魔女だし、魔女戦争終結の式典がメインなので絶対に来たくはないだろう。


「アリシアよ、無理強いはせぬ。だが話だけはして貰えないだろうか」

「はい。あまり期待は出来ませんが」

「良いのだ。ただ私の感謝の念は伝えて欲しい。この国の王として、その活躍に報いたいだけなのだ」

「はい、国王様のお気持ちは存分に伝えます」


 女神様2人は間違っても来ないだろうけれど、それはそれで返事は伝えておこう。


「そして其方へも、この国の英雄として報いなければならない。我が父から、魔女との戦いから戻ってきた時の報酬を預かっている」


やっぱりその話が来たなー、とアリシアは事前にヒルダ達に相談してある事を話そうと決心した。



読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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