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これからもやどりぎ館で -9-

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  地球      :アリシア

  アシルステラ  :アリシア

「あれはドラゴンか? 背中に人が乗っているようだが、小さめだな」


 そういえば隣のザクスン王国に竜騎兵なんていうのがいたなあ、と霞沙羅が思っているとそれがこのモートレルの上空を通り抜けようとしている。


「お、あいつはキールとレミリアだな」


 そういやあいつらと会うのは久しぶりだな、と思っているハルキス。国家間の移動をしなくなってからは、魔女戦争の後に一回くらい会った程度だ。


「何しにこの国に来たのかしら」


 ザクスン王国の竜騎兵(りゅうきへい)が国境を越えてくるようなことは、普通は無い。戦争であれば偵察とかもあるだろうけれど、今は平和。いくら知り合いといっても、勝手にヒルダに会いに来るような事ではないだろう。


「おー、あれがドラゴンか」

「そんな生き物が見られるなんてね」


 モガミもアリサも初めて見るドラゴンに興味津々だ。乗っているのはどうやらここにいる人間の知り合いのようだから、大丈夫なのだろうと考えている。それに大きさもそれほど無さそうだ。


「えー、アンナ、あれが本物のドラゴンなの?」

「ウチの国にはいないが、隣のザクスンにはドラゴンに乗った騎士がいるんだ。大きさはそんなでもないぞ」


 シャーロットも、地球では創作上のキャラクターでしかないドラゴンの本物が見れるとあって、早くこっちに来ないかと期待し始める。小さいとか大きいとかは関係ない。


「なんか、焦ってるみたいね」

「え、そうなのー?」


 アリシアにはそこまで解らないが、エリアスには竜の表情が読み取れたのか、手で招くとここに降下してきた。乗っているのはやっぱりキールとエミリアだったが、焦りの表情をしている。


「あらどうしたの?」

「ああヒルダか。すまない、大きなドラゴンから逃げ回っていたら国境を越えてしまっていたのか」

「大きなドラゴン?」

「なんか黒いのが追いかけてきたのよ。あんなのがいるなんて聞いてないのに」

「おい、という事はそいつはお前達を追跡しているのカ?」

「そうなってしまうな」


 2人には解らない顔も混ざっているけれど、これだけのメンバーが揃っていればどうにでもなりそうだ。とはいえ、町に被害は出てしまうかもしれない。


「キェーッ!」


 逃げ回ってお疲れ気味の騎竜(きりゅう)がひときわ大きな悲鳴を上げると、遠くにドラゴンの姿が現れた。


 まだ遠くなので大きさは解らないけれど、恐らくあれはかなり大きい。翼を広げた全幅でシスティーの通常サイズよりもずっと長いかもしれない。


「あれは大きいですねー、私の出番ですか?」

「彗星の剣よ、あれには手を出すでない」


 そこにフィーネが前に出て来て、左腕を軽く上に上げる。


「フィーネさん、何をするんです?」


 あれ、ひょっとしてこっちに呼んでないかとアリシアは訊く。ここは人が多く住んでいるモートレルの町なのに。


「ここにいる事情を聞こうとおもうてな」

「まあフィーネさんなら大丈夫だと思いますけど、大きすぎません?」

「我をなんだと思うておる?」


 まあ創造神に属する女神様なんですけど。


「大丈夫よ。ただ降りてくるだけ」


 エリアスの方はフィーネの意図がわかったようで、慌てる騎竜を撫でて落ち着かせて、とりあえず場所を開けるように移動させた。


 騎竜の方もこのエリアスが何者なのか察したようで、これなら安全だと従うことにしたようだ。


 さすがに町の方からも「巨大なドラゴンだ!」という声がするけれど、このドラゴン、近づいているのだろうけれどそのシルエットはぜんぜん大きくならない。


「おい何か、小さくなってねえか?」

「我がやっておる」


 さすが邪龍神様。そんな事まで出来るのか、と霞沙羅はキャンプチェアーに座って、システィーから受け取った熱々のフランクフルトを食べ始めた。


「ちょちょちょ、大丈夫なの?」

「あいつに任せておけば大丈夫だろ。エミリア達もまずは落ち着いてジュースでも飲め」

「時間的にもお腹が空いてそうだし、なんかつまんでてよ」


 料理はまだたっぷりある。時間的にも、ドラゴンからずっと逃げてきたんだろうし、お腹が空いているだろう。


「アリシア、大丈夫なのか?」

「あの人なら大丈夫だよ。まあピザでも食べててよ」


 アリシアはキールとエミリアの二人にピザを乗せた皿を手渡した。


 この余裕な態度には2人の方も腑に落ちないけれど、どうにも大丈夫そうなので、その皿を受け取った。


「こんな時だけど、美味しそうね」

「小麦粉の生地とお芋とベーコンとチーズだから」

「そ、そうなのか?」


 まあ自分達よりも強いアリシア達が誰も慌てていないしと、とりあえず2人は美味しそうに焼けているピザを口にした。


「チ、チーズが」

「新感覚ね」


 熱々のチーズがびろーんと伸びる。上にたっぷり乗っている芋とベーコンの具合も良い。


「このドラゴンは焼いた肉も食べるでありんすか?」

「こっちもお腹空いてるみたいだし大丈夫よ」


 エリアスがそう言うので、吉祥院(きっしょういん)がレアな感じに焼けたちょっと大きめの肉を騎竜の方のドラゴンに投げると、美味しそうに頬張った。


 そして段々と、大きかった黒いドラゴンは小さくなりながら屋敷の方に飛んできて、最後には大鷲くらいの大きさになってフィーネの左腕にとまった。


「やはりか。何があった? なぜお前がここにおる?」

「キエー」


 小さくなった黒いドラゴンはどこか安心したように、フィーネに対して何かの説明を始めた。


「大丈夫そうね。それにしてもあの人はすごいわね」

「そうだねー」


 創造神に属する女神様だからねー、何でも出来ちゃうんだろうねー、というのは皆にも秘密だし、この宇宙の禁忌事項だ。


 でもあの黒いドラゴンはなぜか他の星、というか異世界というか、ラーナンの女神と知り合いのようだ。


 フィーネはアシルステラに行く事は無いから、いくらなんでもそれは変じゃないか、と思っていると話が終わった。


「あい解った。何者の仕業かはともかく、元いた場所に帰るがよい」


 フィーネは小さくなったドラゴンに右手を向けると、その巨体は小さな玉のようになり手の中に収まった。フィーネはそのまま豊満な胸の谷間に玉を入れると、その玉は消えた。


「すまなんだな。我の大地の住民がなぜかここに流れておった。元に戻した故、許すがよい」

「それって事件じゃないんですか?」

「そうじゃよ。何者かがラーナンからこのアシルステラにドラゴンを移動させおった。方法も動機も解らぬが、恐らく他の大地へ何らかの悪意を向けておるのだろう」


 あんな簡単に何万光年離れているのかも解らないラーナンへドラゴンを移動させたフィーネの女神っぷりに内心驚きつつも、なんか変なことを言った事に引っかかった。


「えー? この世界にですか?」

「意味も無くこの大地にちょっかいをかける事はあるまい。まだ何も解らぬが、そのように想定しておいて間違いはないであろう」

「カナタさんとは別で?」

「あれはもう何もせんであろうが、事前にあの者の知識も借りた方が良いかもしれぬな」

「なんだ、何か事件か?」


 期間限定で日本軍の任務から解放された霞沙羅が興味を抱いた。これまではアリシアに色々と手を借りていたから、今度は自分の番だと言わんばかり。


「ふむ、この大地に災いを呼ぶ者が現れたようじゃ」

「おう、なんだアリシア。事件か? 魔族の事件が中途半端に終わって不完全燃焼だったんだよ」


 タンドリーチキンを食べた後の指を舐めながら、力が余っているハルキスが早速手を上げた。


「うーむ、アーちゃんよ、今回はこの私も学院の同僚として手を貸そうじゃないカ」


 異世界案件ともなれば、異世界の魔法技術を学べるだろうと考えたルビィも、タコスを食べながら手を上げた。


「アシルステラの事なら私も手を貸せるわよ」

「エリアスー、なんか大変な感じなんだけど」

「大丈夫よ、私がいれば」


 この世界の女神だけれど、エリアスはいったいどこまで手を貸してくれるだろうか。でも今回はありがたい、というかなぜか自分が解決する流れになっている。


「ボクがやるの?」

「ラーナンが絡んでおれば、お主の出番であろう。我はやどりぎ館の入居者である。入居者を助けるのが管理人の仕事であろう?」

「フィーネさん…」


 あなたなら一人でやれるでしょう、と言ったら怒られそうなのでやめた。


「オレ達は管理人を引退したワケだが」

「呼んでくれれば臨時で館を見てもいいわよ」


 フィーネ案件なので、純凪(じゅんな)夫妻もこれは仕方が無いかなと、助け船を出してきた。


「よう我が弟よ。早速明日から動こうじゃねえか」

「霞沙羅さんがいつの間にかボクの姉さんに」

「勉強するとは言ってみたが、テーマがあった方が学びやすいというモンだ。私とお前が組めば大概どうにかなるだろ?」

「こっちの世界なら伽里奈(かりな)君も仲間がいるわけだしな。俺も武者修行がてら呼んでくれよ」

「なにか、いつの間にか大人数になってるわね」

「ええー、じゃあ今回はエリアスも頼むよ」

「同じ管理人じゃないの。それに夫婦でしょ」

「我の事も頼ってくれてよいのじゃぞ」

「そりゃあ頼りますよ。ラーナンの事はあんまり解ってないですからね」


 結局の所、のんびりとした管理人生活はいつ戻ってくるのだろうか。


 誰も知らないところで、のんびりと下宿の経営でも、と願ったハズのに、地球でも有名人になってしまって、しばらくは忙しい日々が続きそう。


「私らは能力が高すぎるんだよ。まあ諦めろ」

「霞沙羅さんに言われたら諦めるしかないですかねー」


 とにもかくにもまた新しく発生したこの騒動。


 次はどういう出会いがあることやら。


 やどりぎ館の管理人になって、まだ1年くらい。今後が思いやられるアリシアであったが、この先の話はまたの機会に語るとしよう。

これまで読んで頂きありがとうございました。

今回のこれで話は終了となります。

当初の予定通りとはいきませんでしたが、終わりまでやると決めて活動してきました。

評価とか感想とかブックマークとかいただきまして、ずっと頑張れました。

これの次をやるにしても大分先になるかと思いますが、その時はまたよろしくお願いします。

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