これからもやどりぎ館で -8-
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地球 :アリシア
アシルステラ :アリシア
今日はモートレルのヒルダの屋敷で、先日起きた新宿と北海道での戦いの打ち上げを行う事になった。
皆の予定的にランチだ。
人数も多いし、ついでに鍛錬も行いたいので、敷地の広さ的に食事会しか出来ないやどりぎ館ではダメなので、ヒルダの屋敷になった。
料理は現地でも作れるバーベキュー以外はやどりぎ館で作って運び込む事になる。
「こ、ここが異世界。アンナと伽里奈の世界なのね」
家に誰もいなくなってしまうので、シャーロットとアマツも連れてきた。ネコであるアマツはともかく、一度アンナマリーの職場を見てみたかったシャーロットはデジカメも持って観光気分。
異世界で食事とは言っても、食材は地球のものだし、料理はアリシアが作るのでその辺は気にならない。
料理はアリシアとシスティーとエリアスで運んで、庭にテーブルを出して貰ってそこに並べる事になっている。
「お前、さすがにここの事は黙ってろよ」
霞沙羅と榊はやどりぎ館から運んできたアウトドアテーブルセットを設置している。
なんでこんな事を言われているかというと、シャーロットは札幌の事件に参加した事もあって、大学入学前だというのに、当日のレポートを作成している。
実際に体験してしまったものは止められないし、映像もネットに残ってしまっているので、イギリスの立場として、幻想獣についても、アリシア達が使用した魔術にしても、とてもいいデータになるので、纏めるようにと、向こうのトップ集団である、魔術師協会の編纂者会議から依頼されている。
ただまあ、このアシルステラの事は書かないようにと釘を刺された。
「あの国でもこんな感じで人を集めてパーティーをやっているでやんすか?」
吉祥院はピザ作りのための、即席のピザ窯を作成中。ダンジョン魔法の応用で、その辺の土を圧縮して固めて作った石を組み上げている。
「ウチの国はそういう場所じゃないです。もっとお上品でエレガントに食事会をします」
「そうでありんすか」
「ねこ」
「ネコ」
準備をしているとヒルダの子供、メリルとライアンが庭に出て来て、キャンプチェアの上でくつろいでいたアマツを見つけて、触ろうとやって来た。
「あらかわいい双子ちゃん」
「ニャー」
「あそぶ」
「かーいー」
「ランチが始まるまで遊びましょうねー」
今はまだ、二人から信頼を得ているフィーネが来ていないので、この双子の相手はシャーロットがしてあげることにした。
エナホよりも年下で、まだまだ赤ちゃん的な部分が残っているのでなかなかかわいい。
「あら、新しいお姉ちゃんが遊んでくれるのね」
「あまりワガママを言って困らせるんじゃないぞ」
レイナードを連れてヒルダもやってきた。
「それにしてもカサラ先生とサカキさんがこっちに来れる時間が増えたらから、日課の鍛錬が楽しいわ」
「私は騎士団の一日を見れて楽しいぜ」
「レイナード達団長達の日々の動き方はいい参考になるな」
個人的な戦闘力ではなく、余所の組織が機能している様を俯瞰して見るというのも、2人の今後を考えると悪くない。
アシルステラは地球に比べて、時代も装備も違うのでやっていることは古くさいけれど、集団を纏めるという事を、自分たちの仕事を考えずに見るという機会がこれまで無かった。
2人から見て良いところだけではなく、ダメな部分も少なからずあるけれど、それを見つけるのも勉強だ。なぜダメなのかを理解する事も必要だ。
そのついでに、毎朝どちらかがヒルダを訪ねて、彼女の朝のルーティンに付き合っている。自分とまともに相手が出来る人間がいないヒルダにとっては、とてもいい機会だ。
そこにガラガラとカートを押してアリシアとアンナマリーが屋敷に入ってきた。カートにはクーラーボックスが幾つか積まれているいる。中にはバーベキュー用のお肉とか野菜とかピザ生地とかデザートとかが入っている。
「今日は人が多いから大変だな」
テーブルの方の準備は出来た。
「キッショウインさん、このピザ窯っていうのは残しておけるの?」
「領主殿はこれを使うでやんすか? 残すのであれば屋根とかつけた方がいいでありんす」
「なら早速大工を呼ぶことにしましょう」
続いてシスティーがやって来て、バーベキューとピザの準備をして、一旦やどりぎ館に帰ったアリシアが料理を作っている間に、ルビィとハルキス、イリーナとライアがやって来て、純凪一家もやってきた。
ついてきたエナホは自分よりちょっと下の子供がいるので、興味を覚えたのか、近寄っていった。
カナタ達にはとりあえず声はかけたけれど、遠慮されたので来る事は無かった。
「今日は小童共が多いのう」
「おばたんだ」
多いと言いつつも3名だけ。シャーロットが相手をしていたけれど、その小童共に招かれて、フィーネも相手をしにいった。
「じゃあ料理をならべていくよ」
エリアスとアリシアが現れて、エリアスがやどりぎ館に置かれている料理達を呼び寄せて、テーブルに並べていく。
「ピザはどう?」
「もうすぐ焼けますよ」
「それにしてもヒルダとライアが興味津々みたいだねー」
こうやって窯でピザを作るのは初めてだから、二人は中がどうなっているのか覗いている。
劇場の料理で出すのも悪くはないだろう。
「あと二回分ありますからね」
「ちょっとその窯の中で回すのやらせてよ」
ライアはシスティーが窯の中にピザピールを突っ込んでピザの位置替えしているのが気になったようだ。
やがて料理がテーブルの上に並び、バーベキューも焼き始めた。
それぞれ自由に取っていくビュッフェスタイルなのだけれど、子供達は動きにくそうなので、まずはお子様ランチ的なセットを作って出して、大人達も食事を始めた。
「おいちい」
「うまうま」
「うーむ、悪くないかもしれない」
貴族の屋敷ではこんな、肉とか野菜を庭で焼くような事はやらないけれどいいかもしれない。ならば家に言って、他の将軍達も集めて一度やってみるのもいいかもしれない、とアンナマリーは思う。
アリシアに頼んで。
「このピザっての、いいよな。ぱっと見、特別な材料はいらない感じだしな」
ハルキスの部族の自治区にチーズはあるから、あとは具材だけだ。
「孤児院で作っても良さそうね」
小麦粉の生地に具を乗せてチーズを蒔いて焼くだけなら、それほど贅沢品にはならないのではないか?
「まあ、今度作りに行くよー」
以前よりはアリシアも時間に余裕が出来た。
「お肉も焼けましたよ」
アリサとエリアスが世話をしていたバーベキューも出来上がり始めた。
「前もこんな感じで食べた気がするが、いいもんダ」
あの時は火山対策をしながらのドラゴン討伐だったけれど、雄大な景色を見ながらの実にのんびりした食事だった。
「熱いから少し冷ましてから喰らうのじゃ」
フィーネが子供用にウィンナーと小型のハンバーグを取ってきてくれた。
「アマツは?」
「アマツはあそこで肉を喰らっておるであろう」
エナホはアマツが肉を貰って食べているのを見て安心した。ただ焼きたてなのでちょっと熱さに苦戦しているようだけれど、嬉々として挑んでいる。
そんなこんなで皆で美味しい料理に舌鼓をうっていると、空を飛んでいるある生き物に気がついた。
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