これからもやどりぎ館で -6-
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地球 :アリシア
アシルステラ :アリシア
「ほう、とうとう学生はやめるのじゃな」
これから生活環境が変わるのでアリシアは学院に色々と報告に行った。
ルビィからは地球での戦闘に参加したという事を聞いていて、その映像的な記録をこっちに持ってこれるとかアリシアが言ったので、天望の座としてはその確認もあって報告の場を開いた。
異世界云々では無くて、アリシアとルビィが本気で戦闘に参加する姿は希なので、それを見てみたいと言うわけだ。
ただその前に、ようやくアリシアが地球で学生をやめるという事に興味がわいた。前々から時間の無駄だと思っているからだ。
「週一日か二日ですけど、教師をやるんですけどねー」
「アーちゃんそれはズルいのでハ?」
「でもその代わりと言っては何ですけど、霞沙羅さんと吉祥院さんが頻繁にこっちに来たいみたいですよー。一年間だけですけど、軍を休みますからねえ」
「どういう状態ダ?」
「この半年くらいで自分たちの欠点が解ったから、その克服のためにこっちの魔術師といろいろ魔法談義をしたいんだって」
「あの2人にどんな欠点があるというのだ?」
天望の座としてはとても嬉しい話だけれど、まだそこまで深い付き合いがあるわけではないとはいえ、霞沙羅と吉祥院に欠点があるようには思えない。技術的にはこの学院に伝えて欲しいモノを持っていると
思っているくらいだ。
それもあってこっちに来れば間違いなくアリシアやルビィと同じ階位が貰えるだろう。
「大きな組織に属していると、色々あるんですって。人を管理したり教育したり、自分たちだけで戦うわけじゃ無いですからねー。これまで仕事であんまり考えられなかったから、色々と事例を見たいそうです」
「そうか、それであればいつでも来るといい、と伝えておいてくれ。出来れば事前に話のテーマを決めてくれるとなお良い」
「そう言っておきます。吉祥院さんはルーシーさんにお礼で、作った人形を一つ渡したいみたいですからね」
「あら、どんな人形かしらね」
バッチリな結果を出した「お龍さん」を今後のために何個か作ったそうで、そのうちの一つだ。見た目も日本人形特有のあのなんか気持ち悪いままなので、文化は違えどルーシーは気に入ってくれることだろう。
「それでですねえ、ボクらの映像なんですけど、誰かから話が漏れてると思うんですが、機材の試作品があるんですよねー」
「王女様がアンナマリー嬢から、ペンギンとかいう鳥を見せて貰ったとか聞いておる。どんな具合なのだ」
「15分くらいにまとめただけですけど、とりあえず持ってきましたよ」
アリシアが記録してきたのは自分たちの札幌での戦闘をちょっとと、自分で撮っていた、ずっと霞沙羅から借りている指輪からの映像だ。
「記録盤じゃなくて、再生盤って名前にしてるんですけどね」
まだ試作品の板状の再生盤が起動すると、空中に半透明の魔力のディスプレイが浮かび上がり、そこに記録した映像が再生された。
記録した映像といっても、まだテレビは記録盤で画面を映したもの。指輪の画像は、ちょっと魔術を変換して記録したモノ。
将来的にはテレビやらPCの動画なんかを魔術解析の上、変換して記録出来るようにしたい。
編集機材もまだ試作品だ。
「お前達の戦いをこうやって見る機会はなかなか無いものだ。だか、カサラ殿もなかなかだ」
カナタは面倒になりそうなので、収録してはしていない。
「お前はこれをどうするのだ?」
「学校か魔術師団の教材で使えればと。普通に魔法の勉強で使うのもいいですし、どういうケースで使ったのかを伝えるのもいいですしね。騎士団向けとかでもいいですし」
地球は勿論この程度は普通にやっている。でもこっちにはない。
映像に納まっているハルキスとヒルダの戦い方を知るのもいいだろうし、イリーナやライアも勿論イレギュラー枠としていい教材だ。
「ふむ、やってみるといい」
「そうですか。じゃあルーちゃん、これに使用する素材に関して相談したいなー」
「お、相談されようじゃないカ。ところでクラウディアはどうなるんダ?」
あれからずっとやどりぎ館から学院に通っているクラウディアは、事件が終わって、カナタがヤマノワタイに帰ってから事態が動くことになった。
「その件はねえ」
純凪夫妻が事情を知ってしまったこともあって、カナタのやらかしによって一ヶ月以上も学校を休むことになってしまって、栗栖は水瀬家が預かることになった。
栗栖がいない間のことは、カナタがとある事件の手伝いをして貰っていた事にして貰った。
正直、学校では落第レベルの成績だったとかで、中退もしくは普通科への編入もあり得たという。そんなところで、あの水瀬家が師匠としてバックアップしてくれる事には学校も栗栖の家も驚いていた。
正直、本人にはそこまでの魔術的な才能は無い。けれどクラウディアの側にいたことで考え直して、今はやる気を出しているという。
それとファンタジー世界に行ったことで、マンガ制作へのモチベーションも上がった。作品を描く上で、魔術の知識もあった方がいいと感じたらしい。
カナタもこれでしばらく目的を失ってしまったので、このダメな魔術師の卵を一人前に育てるには、というテーマを持ってみたくなったそうだ。
ひょっとすると自分の子供や、その先の子孫にまた母親のような人間が出ないとも限らないので、その為のノウハウ作りをしておきたいそうだ。
それで、さすがに一日中栗栖を教育するわけではないので、空いている時間はアシルステラに行って、クラウディアの家事を、ラスタルにいる期間だけやればいい、という結論になった。
問題なのは、館の廃墟の扉がリバヒル王国の王都に開くところだけれど、これはフィーネがヤマノワタイの神々に働きかけて、この魔法学院に変更してくれるという。
ただしあれは廃墟なので、もう栗栖以外はあの廃墟の扉は使用出来ない状態にするという条件は提示された。
水瀬家ももう世界の秘密を解き明かしてしまい、他の星に行く用がないので、それでいいそうだ。
勿論ここまでの本当の事は言わないで、単純にカナタが責任を持って栗栖を魔術師にしてくれることになって、その空き時間にクラウディアの世話をする、という話にした。
「そういうわけで栗栖が出入りするから、クラウディアもラスタルに帰ってくるよ」
カナタには、クラウディアが栗栖と魔法談義を出来るように、アリシアがヤマノワタイの魔術を教えると伝えてある。
変換用の道具が無ければクラウディアであってもヤマノワタイの魔術をアシルステラで使う事は出来ないから、問題ないだろうとのこと。
「そうか、あいつも心配していたからナ」
帰った方がいい、とは言いながらも栗栖の料理と絵が好きだったそうだから、まだ色々話をしたいと、アリシアにも言っていた。
あと2年だけの付き合いになるけれど、ちょっと特別なお付き合いを続けてもいいかなと思っている。
「クラウディア殿には苦労をかけたが、解決したのだな」
「苦労どころか、アーちゃんの家で2週間も生活が出来たのが羨ましイ」
「ボクは大変だったよ、この半年」
「それはアーちゃんが悪イ」
「えー、そうかなあ」
「そんな事よりも、また北のノルス王国から来賓がある。お前には王からまた晩餐会の依頼が来ておるぞ」
「そうなんですか? じゃあまたロビンさんにでも相談してきます」
アリシアへの料理依頼はまだまだ続きそうだ。
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