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これからもやどりぎ館で -3-

ここから主人公名の表示が変わります

  地球      :アリシア

  アシルステラ  :アリシア

 その夜には早くも政府と軍から新宿の事件についての速報的な発表があった。


 結局は星堕(セイダ)(ケン)という存在については極秘事項となり、新宿という危険地帯の中で育った超大型の幻想獣との戦いであるという形に収めることにした。


 これまでの観測データも含め、厄災戦の置き土産とも言うべき幻想獣を倒したことで、新宿周辺からは大幅にマリネイラの魔力が減ったことも、この事件に関連付けたように、信憑性のあるデータとして公表された。


「多くの人間の命を奪い、多くの人間をこの土地から追いやった厄災戦の象徴とも言うべき新宿の状態が、ひとまず一段落ついたと言って良いでしょう」

「旧23区の扱いについてはすぐさまどうこうするという段階では無いけれど、以前から語られていた数十年、あるいは100年以上はかかるだろうと言われていた土地の正常化へは、この戦いでの勝利をもって、大きく進展することでしょう」


 軍と魔術協会はその様に発表した。


 といっても、まだ内部の警戒は解かないけれど、旧23区周辺の環境が良くなることは確かだ。


 これについては、魔術協会や寺院庁と連携をして大規模な調査を行い、近いうちに解放へのロードマップを作成するという。


「今回も新城大佐、吉祥院中佐、榊中佐が作戦の中心を務めたとの話ですが、同時期に発生した、北海道の最上級幻想獣を倒し、新宿に合流してきた人物達についても教えていただきたい」


 という報道からの、当たり前とも言える要求に対しては


「明日をお待ちください。本人達も今日は戦いで疲れておりますから」


 とだけ答えた。


   * * *


 翌日も付属高校は休み。それもあって結局アリシアはまた軍の本部に連れてこられてしまった。目的は勿論、昨日起きた事件の説明。それも全国放送。


「ボクはこっちの世界に来て、世間から目立たないように静かに下宿を運営したかっただけなんですけどねー」


 アシルステラで目立っちゃって、貴族になりたくなくて、誰も知らない場所で静かに趣味の料理の研究をしながら宿の経営でもと願って、神様に紹介して貰ったのに、どうしてこうなるのか。


「結局私らもお前らも能力が高すぎるんだよ」


 それは私も同じだと言いたい霞沙羅。霞沙羅だって面倒な日本の中心から逃げてきた人間だ。結局ここのところは関東で起きた事件の対応ばかりやっていた。


 不満はともかく、実際に霞沙羅の横で軍に協力していたという実績があるから、説明をするためにアリシアは連れてこられてしまった。


 エリアスは奇跡の力で情報がボカされているので、ここにはいないヒルダ達と一括りにされて、アリシアは代表者扱いだ。


「で、その格好は何だ?」

「メイドでいこうとしたら、執事で行けって女神様達に注意された結果です」


 黒いスーツの執事風。長い髪は一本の三つ編みにして、肩から前に垂らしている。


「冗談じゃないです」


 でも愛するエリアスからのリクエストだからこれで来た。あと小樽の魔天龍様からも。


 燕尾服ではないから、まあスーツに近い形にも見える。


「悪くは無いでありんすよ。女子が執事のコスプレしているみたいで」


 実は以前のコスプレ衣装では無くて、フィーネが買ってきた本格仕様のスーツ。占い客のお店に発注したらしい。


 どうやってサイズを測ったのか、それは女神だからだろう。


「伽里奈君も男なんだから、たまにはこういう格好もいいじゃないか」

「おい榊、これ向こうの世界じゃ人気らしいぜ」

「そうなのか?」

「箱入り貴族令嬢とアウトローで実はインテリな冒険者による、初恋の物語があるんだとかで」

「まあ伽里奈君は素材は悪くないからなあ」


 ちなみに服のサイズが無い吉祥院だけはいつのもの袴姿で、霞沙羅と榊も制服姿。こちらはさすがに軍人としてビシッと決まっている。


「そろそろ時間のようでありんす」


 会見を仕切っている国営放送のディレクターの1人が呼びに来て、4人は会見会場に入っていく。


 日本では絶大な知名度を誇る英雄3人のおまけのような形で、霞沙羅の右側に座らされるアリシア。


 北海道での大活躍ぶりを期待されて、どういう人物なんだと思われて、いざ目の前に現れたアリシアの姿を見た報道関係者達は、一様に拍子抜けしたような顔をした。


吉祥院の身長は規格外として、霞沙羅ですら174センチと背が高めなのに、男であるアリシアは164センチ。女子っぽい顔立ちの穏やかそうな顔も相まって、とても強そうには見えない。


「む、お兄ちゃんでござる」


 軍の会見とは言え、国営放送とは魔術関連の分野でアドバイザー契約している吉祥院の兄が、質問役の一人として現れた。


 こんなのでもいないと、今回ばかりは魔術レベルが高すぎて理解不能なやりとりになってしまう。吉祥院兄はその辺は慣れているので、視聴者にも解るようにしてくれるはずだ。


 そしてこちらも妹にはかなわないにしても、203センチと大柄なので、画面の中でアリシアが余計に小さく見えてしまった。


 他には、この事件を指揮した徳佐(とくさ)准将の姿がある。それと軍の広報が進行役というこのメンツでやるのだ。


 やがて時間になり、全国民が待っている生中継が始まった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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