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その一撃のために -2-

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  地球      :アリシア

  アシルステラ  :アリシア

「な、また障壁が」


 星堕(セイダ)(ケン)が持つ自慢の障壁が無くなっていく。先程の攻撃で機能不全になったのでは無く、何者かが力を散らしている。


「まあこいつに頼るのはこの辺までだな」


 霞沙羅にも障壁が無くなっているのが解っている。その原因はエリアスだ。


 アリシアはとんでもない存在をパートナーに選んだものだ。ただ、とても扱いが難しい。人間社会では女神として力を存分に振るうわけにはいかない。


 ただ、その近くにいるのが人間社会でも超人レベルだとすれば、ある程度の事までであれば自分たちでどうにか出来てしまうので、力を抑えて貰って仲間の一人として収める事が出来る。


 そのアリシア的には、あまり破壊的な力は使わせたくない。今回は、アリシアと同じやどりぎ館の管理人として、住民である霞沙羅と榊を助ける気で来ているけれど、障壁を浄化するというサポートで抑えて貰っている。


 でも同じ立場のアリシアもサポートに徹するから、こんな力の使い方でも本人も納得はしているようだ。


「あれは何者?」


 カナタの両親も研究のためにアシルステラを訪れているけれど、魔女戦争は星間転移中に起きた出来事だったから、初対面のエリアスが女神であるとは解っていない。この辺がカナタとの違いではあるけれど、それでも人間では無い事は薄々わかっている。


 だからといってこの場面ではどうしようも無いが。


「さあさあ、仕切り直しといきましょうか」


 これでもう邪魔な障壁は無くなった。


 あとは耐久力との戦いだ。


   * * *


「フィーネさんまで出てきてくれるとは思いませんでしたよ」


 純凪(じゅんな)夫妻がいる場所にはフィーネがやって来た。


「あの小童(こわっぱ)を泣かせるわけにはいかんからのう」


 それはともかく、兵隊にも神官にも顔が売れている小樽の魔天龍(まてんりゅう)が現れた事に、動揺が広がっていく。


 占い師がこんな所に何をしに来たのだろうか。


 しかし噂の占い師。何か助言を授けてくれるのかもしれない。


「お主ら、草原から出てくる堕人(だじん)とやらに押されておるようじゃが、この大地の神々も、あの無礼な来訪者に黙ってはおらぬぞ」

「魔天龍様、何か手立てがあると言うのですか?」


 純凪夫妻の側にいた、この前線をあずかった指揮者が尋ねて来た。


 でも戦いの最前線であっても「魔天龍様」呼ばわり。この中にも過去に占って貰って、信者のように信頼している人間はいる。


「各々が信じる神に祈るがよい。強烈すぎる祈りは時に厄災にも発展してしまうが、此度は静かに祈るがよい。命を差し出したあの狂信者共の声だけで無く、この大地のために命をかけて戦っておるお主らがこれだけ集まれば、その心は神々の心をも動かすであろう。そこな大僧正の孫よ、お主はかつて霞沙羅の元でその様な光を見たであろう? 今はお主が音頭をとる時じゃ」


 同じ戦いに身を投じた空地(そらち)桜音(おういん)は見ているけれど、そういえば現場だけで無く、霞沙羅(かさら)は出陣前にも曲を奏でることで兵達に力を与えたこともあった。


 あれも祈りの力だ。


「自分に出来ますか?」

「出来るかではない、お主はやれるのじゃ」


 やるのじゃ、ではなく、やれるのじゃ、という言い方に空地桜音の心は震えた。


 実際にやれるのか解らない。けれど小樽の魔天龍様から言われた言葉、なぜか天啓でも受けたように強い。


 今だけでもいい、やれるのだ。なら、やるしかない。


「通信を。ここにいるみんなに聞こえるように通信を」

「ええ、解りました」


 大僧正の孫がやるという。なら、軍も協力するしかない。


「フィーネさん、大丈夫なの?」


 多分地球人の祈りとは関係の無い、ヤマノワタイ人であるアリサは疑問に思った。


「問題ない。先程クレームを入れて来た」

「スケールが大きな話ですね」


 純凪さんも15年ほどの管理人生活で、一度だけこれを言われた事があった。


「奴らにも事情はあろうが、今日はまた一つミスを犯した。それであればたまには奇跡を見せい、とな」


 こっちだって人間ごときに色々迷惑かけてるから、アリシアに頼んでラーナンに新しい料理を広げようとしているのだ。この星を守る人間の為に、ある程度はやって当然だろう。


   * * *


「く…、支配の領域までもが狭まってくる」


 ごちゃ混ぜになった神の力が新宿周辺に、淡い光となって降り注いでくる。その光が地面に差すと、折角広げていた草原が後退していく。


「何か祈っているようでござるな」


 吉祥院は通信機をONにした。空地(そらち)桜音(おういん)の声で、神々に祈るように、という初めて聞くような聖職者らしい穏やかな声が流れてくる。


桜音(おういん)君、やるじゃないか」


 奇跡にしては小さいけれど、彼がここまでやれたことは大きな奇跡だ。誰かに焚きつけられでもしたのだろうか。


「なんとなーく、ボクは予想がついたんですけど」

「どういう事だ?」

「ここに来る時にフィーネさんが送ってくれたんですけど、来たらいなくなってて。さっきマリネイラにクレームを入れに行ったみたいなんですけど、多分そのついでに何か言ってきたんじゃないかな。それで桜音さんに何かやらせてる」

「まああいつは運営側だからな」


 という事はこの奇跡はフィーネによる仕込みなのだろう。それでもこの成功体験を通して桜音も聖職者として自信がつけば良いのだが。


「システィーも準備が終わったみたいだから、とどめを刺しましょう」


 システィーが不意打ちで突撃してもさっきの状況なので、ここまでやって貰ってもまだ油断は出来ない。


 だけどこれで光明は見えた。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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