祈りの声を聞く者は無し -4-
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地球 :アリシア
アシルステラ :アリシア
「おおー、やったーっ!」
霞沙羅とは違って、知らない人は誰も知らない、国立小樽魔術大学付属高校の伽里奈=アーシアとその一団が、最大級の幻想獣を滅ぼした場面を確認して、札幌の町には歓喜の声が溢れる。
なんといっても、今回はあまりにも突然だったからかなのか、市民の避難意識を煽るためか、報道規制もろくにされないまま、巨大幻想獣との戦闘が終始放送、もしくは配信されたものだから、みんなリアルタイムにその喜びを分かち合あった。
これで終わった。北海道は救われた。ただ、被害はゼロではない。主には空軍基地の人員がどの程度かまだ解っていないけれど、殉職者を出しながらも、札幌は守られた。
「すごいすごーい!」
厄災戦の時の、霞沙羅達が立ち向かった最終決戦の映像はここまでハッキリとは残されていないので、初めて見る、超がつくほどの達人集団による戦闘をノーカットで見ることが出来て、シャーロットも興奮している。
アンナマリーも、魔女戦争時は安全なラスタルの屋敷に閉じこもっていたので、アリシア達の、6人と1本が全員揃った戦闘を見るのは人生で初めてだ。
これを見れば解る。
そりゃあ大陸中に名をとどろかすわけだ。これは多分、後で報道番組とかで放送とかされるし、インターネットとかいうのでも残されるだろうから、それを録画とかいうのをして、父にも見せてあげたい。
こんな戦いを見たことがあるのは、あの6人について行けるようなわずかな人間だけだろう。今後のフラム王国のためには、アリシアに聞いて録画して、あの記録盤の簡易版に記録して貰おう。
本人は嫌がるかもしれないけれど。
「最後のあれ、なんだよ」
「圧倒的だったな」
とにかく連携することの偉大さが解った。今林三兄弟は、これからも3人仲良くやろうと思った。
一ノ瀬と藤井の2人も、これだけの事をやれるアリシアが、高校ではその高い技術力を提供しようとしてくれている事に感謝して、これからも協力したりしてついていこうと思った。
「作戦終了だそうだ」
作戦本部のあった千歳駐屯地の方からも、連絡が入った。幻想獣の反応は全て消滅したそうだ。
軍人達も喜んで握手して、近くにいた、あまり面識が無い警察やその協力会社とも勝利を分かち合った。
* * *
「これで終わりか?」
沢山あった幻想獣だった灰もどこかに散っていってしまい。残されたのはもう何も残っていない空軍基地があった場所だけ。あの幻想獣が乗っかっていた建物や車両や戦闘機は取り込まれてしまったようだ。
「お主ら、まだ動けるかのう?」
軍人達が事後処理のために動き出している中、もう行き場の無いアリシア達の所にフィーネがやって来た。
「全然ですよ。準備運動レベルじゃないですか」
「彗星の剣よ、お主がこれほどまでに戦闘狂だったとはのう」
ここ3年くらいで絶品なスープカレーを自作するまでになったシスティーは、あれだけ暴れたのというのにまだまだピンピンしている。
「まだ行く場所があるのね?」
今日はこれだけ自分の力を思う存分使えて、ヒルダも嬉しそうだ。
実際の所、アシルステラでは久しくこういう事件は無いから、思う存分日々の鍛錬の成果を披露できる。
「あるといえばあるけど、行っていいんですかねー?」
「この国の、下手をすればこの星の一大事じゃ」
「でも向こうは共通魔法を使ってきますでしょ? ボクは対策立ててませんよ」
共通魔法が解らない人員が追加でやって来たら、霞沙羅達はそのフォローで大変になるのではないだろうか。
「我は∃≫∝じゃ、と言うたであろう。小僧は使い方を間違えることは無いと信用しておってな」
また「創造神」の言葉がバグっている。これはフィーネによるプロテクトだ。
「ということは?」
「我はラーナンの魔法を伝えたわけではない」
「そうですか、解りました」
この女神様は未来予知が出来るのだった。この時のためにフィーネは嘘をついていたらしい。そしてそうとは解らないように、アリシアを霞沙羅達から離していたのだ。
「先生のところに行くのね?」
「もう行っちゃおー。勝手に」
「なんだったら私が回復してあげるわよ。貴方たちの女神なんだから」
「女神さんよ、このくらいのちょっとの疲れが体を動かすのにちょうど良いんだぜ」
「そうね。体が温まってきた感じよ」
「せ、戦闘狂ね」
天空魔城での暴れっぷりが思い出される。最後に四天王的なのを用意したのに、楽しそうに戦っていたっけ。
「ボクらは冒険者だしねー」
「我は後方支援でもしてやろう。あの小童に泣かれても困る。しかし新宿はこことは違って足場が悪いので、気をつけるのじゃな」
「アシルステラは一歩町を出たら足場は良くないですよ」
「そうじゃな。ファンタジーな世界はそれが悩みじゃ」
言うまでもなかったか、とフィーネが行った空間移動に巻き込まれて、アリシア達は新宿に移動した。
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