出撃する英雄達と女神 -3-
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地球 :アリシア
アシルステラ :アリシア
「なんていうか、歯ごたえが無いわね」
イリーナがハンマーを振ると、いつもよりやや小さめサイズになっているカニの幻想獣が空高く飛ばされていく。
「動きも悪いナ。何にも考えてないようだゾ」
ルビィが幾重もの小さな落雷を起こし、周囲のクマのような幻想獣を次々に塵に変えていく。
「ゴブリンとかコボルトとかみたいに生き物じゃなくて、人の恐怖が形になったような物だからねー。しかも今いるのはその弱いのばっかりなんだよね」
「誰が作っているんダ?」
「マリネイラっていう神様がいて、本当はささやかな願いを叶える役割を持っているんだけど、その力が人が抱いている恐怖っていうイメージに作用して出来ちゃうんだよ。今回はその信徒の、多分千人以上
集まった人達の想像が作用してに作られたんだろうけどねー」
今回は恐怖では無くて、取り込まれた人が望んでいる「殺し」のイメージで出来上がっているようだ。
「面白い設定ねえ、劇のネタに使えるかも」
建物の壁伝いに走って移動していたライアが降りてきた。
大きな通りは、南の千歳市方向からやってくる幻想獣から逃げる形で、人々が北に向かって移動してきている。
当然、札幌の中心部なので、車両は逃げ惑う人に阻まれて渋滞状態になってしまい、場所によって軍や警察が入って来にくくなっている。
「システィー、軍とかの増援はどういう状態に見える?」
「車社会の弊害ですねー。道が詰まって移動が遅れてますよ」
「この国の騎士団は薄情なのねー」
「そうじゃなくてねー、あの車ってので乗って来るんだけど、所々で道が詰まっちゃっててさー」
札幌の町は碁盤の目のようで、至る所にある交差点ではパニックになって我先に逃げようという車が詰まってしまっている。東京を追い出された人が移住したのもあって、厄災戦の時よりひどい。
「それにしても人が多いわね」
「この町だけで200万人以上住んでるからねー」
「なっ、フラム王国の国民より多いじゃねえか」
「こっちの世界は食料生産とぁ保存とかとか医療とか色々克服してて、人が生活しやすくなってるからねー。その代わりに人の生命力がちょっと弱いかなー」
「第二波接近してます」
システィーからの連絡が入った。
また千歳方向から幻想獣が飛来しているようだ。
* * *
「わあ、エリアス、なんて格好してるのよ」
エリアスはオフィスN→Sの事務所に行って、運良く全員が揃っている事を確認した。
吾妻社長達からすれば、このエリアスの魔女時代の服装は胸元が大きく開いているし、下は大胆なスリットで脚があらわになっている。いつもと違ってセクシーすぎて違和感がすごい。
「中心部は伽里奈達が食い止めてるけど、この場所にいる事はこの後はあまり良くないから、小樽に移動して貰います」
事務所がある場所は、大通公園から地下鉄で新さっぽろ方向に何駅か行ったところではあるけれど、今回は幻想獣の数が多く、市街地と呼べる場所の全地域が危険そうなので、ここは小樽に逃げて貰った方がいい。
「今は霞沙羅が札幌にいないから、軍も動きが遅れているのよ。他の人には悪いけど、私の大事な人達だけでも、館に避難して貰うわ」
皆が見ているテレビの番組では千歳の空軍基地の話も、札幌の話も流れていて、だからといって道は混んでいるし地下鉄は止まっているというしで、どこにどう避難しようかという話しをしていた所だ。
「え、エリアスはどうするのよ」
「私は…、私達は霞沙羅の代わりにあれをどうにかするから平気よ」
一応テレビは全局で放送されていて、その全てがL字になってしまっている画面に「逃げろ!」と文字が延々と流れている状態。
そして、大通公園沿いに本社があるテレビ局は混乱する札幌市内を映している。
報道に関わっているという根性なのか、誰かがオフィスに残っているのかなにかで、カメラが映している向きが移動して、システィーの巨体が札幌上空を縦横無尽に飛び回って、空中の幻想獣を蹂躙している場面になった。
「な、何あれ」
知らない人間からすれば、幻想獣を追い回しているその動きからして悪者ではないけれど、姿も大きさもあまりにも現実的ではないから、素直に喜んで良いのか解らない。
「あれはアリシア…、伽里奈が持っている星雫の剣よ。名前はシスティーだけど」
「システィーって、あの館にいたメイドさん?」
「そうよ。だから私たちがやるから、皆さんはやどりぎ館に逃げて貰います。今はアマツが留守番してるだけれど、安全な場所でお茶でも飲んでゆっくりしててください」
エリアスは吾妻達があれこれ言ってくる前に、強引にやどりぎ館に飛ばして、本人はアリシアがいる場所に戻った。
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