これより作戦開始 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
霞沙羅と榊はこの二日はやどりぎ館に帰ってくる事は無く、ずっと横須賀で過ごしていた。
純凪夫妻も横須賀に行ったきり戻ってきていない。ヤマノワタイに残っている息子のエナホは、実家に預けているというから、そちらは一応問題はない。
「カサラさんも大変だな」
朝食を食べながらアンナマリーは、このところいたりいなかったりする同居人が気になっている。
英雄と呼ばれるのも大変だ。
それでも自分の将来のために、これが終わったら色々と話しを聞いておきたいところだ。
「普通の大佐と呼ばれる位置にいる人は、大勢の部下を従えて、前に出ることは無いんだけど、あの3人は戦闘力が高すぎて、いざ大きなトラブルになるとどうしても前に出ないとダメだから。最近のヒルダなんかはどう?」
アシルステラは今でも戦場では、上に立つ人間による「皆の者、我に続けー!」が通用する世界なので、例えばヒルダやハルキスなんかが戦場に姿を現して、先頭で武器を一振りするだけで敵が震え上がるような効果が期待できるので、国の中心にいる貴族でも、例えばレオナルド将軍のような現場大好きな人もいる。
現代の戦争だって最前線も大事だけど、兵器のおかげで戦術の距離が遠近あって、情報戦もあるし、広い戦場を管理しなければならないので、上になればなるほど前に出てはいけない。
でも現代の戦闘が通用しない、主に幻想獣のような人外を相手にする魔術師団は、どうしても有能な人間も前に出なければならない。
必ずしもでは無いけれど、下っ端の兵隊をいくら集めても、解決しない敵がいるわけで、個人の戦闘力が戦場を左右してしまう。
「ヒルダ様はモートレル周辺の見回りをすることはあるが、基本はおとなしく町の中だけで済ませている」
「まあそうだよねー」
逆にヒルダが領内を頻繁にウロウロしていたらそれはそれで「何かある」と住民にとられかねない。
今は国々がいがみ合っている状態ではないから、領主としての顔見せ程度でいい。
「アンナの方は見回りをしているわけだ」
「私はな。町の外の時もあれば、中のこともある」
「騎士団は警察でもあり、軍でもあるからねー」
「一度アンナのお仕事を観察してみたいわね」
「この英雄様のコネが使える間に、ヒルダ様に頼んで見せて貰うのもいいかもしれないな」
一日中ずっとは無理だけれど、アリシアが案内役として付き添うのなら、アンナマリーの巡回を見せてくれるかもしれない。
でも一度くらいは、シャーロットもアシルステラを見てみたいとは思っている。
* * *
附属高校の入試は無事に終わり、受験生の評価が始まるので、今日の高校はお休みの予定。
特に魔術師の試験は時間がかかる傾向にあるので、明日もお休み。
結局吾妻社長の娘はどうだったのだろうか。
何回か勉強を見た感じでは大丈夫な感じはする。小樽校に来たいといっていたから、校内で会うことになるだろうか?
「どうなるんでしょうね?」
システィーはこれから始まる星堕の剣の破壊作戦を気にしていた。
現場にいる空霜が羨ましいから。
「あれだよ、レオナルド将軍が畑を作ってほしいって言ってるみたいだよ。領地で赤辛子を生産するみたい」
「それはそれで楽しいんですけどね」
でもそれじゃないんだよなー、とシスティー。
これから大きな戦いが日本で始まろうとしている。
予定だと今日一日で終わるそうだけれど、大丈夫だろうか。
「このテレビとかいうのでは見れないのか?」
今日はお休みのアンナマリーは、そんな大きな戦いがあるなら、安全なところからでもいいから見てみたい。
この前の大きな幻想獣とかいうのとの戦いはすごかった。
あの時のはテレビで放送された編集版だったり、ネット配信のアーカイブだったけれど、この世界はそんな戦いを家で安全に見られる事に興味を持っていた。
「今日は現場の戦闘は非公開だと思うけど、何をやっているかは、敷地の外から見られると思うよ」
こんな機会は他に無い。シャーロットも見たい側だったりするけれど、現場の話は後日に編集して放送されることだろう。
ちなみにこの話は一般市民には内緒。新聞のテレビ欄も、HPでの今日の番組表も平常運転。
「まあテレビをつけてみたら?」
テレビをつけると、国営放送局のニュースの時間になって、アナウンサーが「緊急放送です」と言い出した。
そして大きな災害でも起きたようなL字型の画面レイアウトになった。
緊急とか言っておきながら、ちゃんとマスコミには事前の通達が行っているので、実のところこれが予定されていた番組編成ではある。
当然、一般人には連絡してないから、緊急なのだ。
「どこまでやるのかしらね」
旧23区で特別軍事行動が行われることが報道された。場所は新宿駅周辺。一般国民もよく知る、マリネイラの魔力溜まりがあるところである。
「フィーネさん、どうするんです?」
朝食後に自室に戻っていたフィーネが一階に降りてきたから、伽里奈は確認した。
そして部屋に引っ込んでいたエリアスも出てきた。
「おおー、何かあるんですか?」
さっきまで空霜を羨ましいと言っていたシスティーがこの空気に反応した。
前回もフィーネによって二子玉川に行けと言われたから、今回もかと身構え、というより期待してテンションが上がった。
「小僧よ、仲間の5人を集めるがよい。あやつらは霞沙羅に協力すると言っておったであろう?」
「解りましたー、予定を空けて貰ってますからねー。エリアス、5人に話しをつなげてくれる?」
「ええ、いいわよ。それから今回も私が出るから」
「そのくらいしないと、入居者の霞沙羅さんの株が落ちちゃうからね」
これはあくまで管理人の仕事。入居者の保護だ。
「とうとう8人でやる時が来たんですね。アシルステラではないのが残念ですけど」
「あそこでこの8人が揃っちゃダメでしょー。地球だから出来るんだよ」
「え、何が始まるの?」
画面の向こうの新宿では軍の作戦が始まろうとしているのに、なぜか全然関係の無い北海道にいる伽里奈達が動き出しているので、シャーロットが気になって質問した。
「戦いだよー。起きるのは、多分小さな厄災戦かなー」
「そうじゃな」
今起きている状況的にこんな方向性だろう、と予想はしていたけれどフィーネは否定しなかった。
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