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忘れかけていた男 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 伽里奈(アリシア)が気になる話をし始めたので、霞沙羅(かさら)は空いた時間に函館の駐屯地に連絡を取ってみた。


 大佐である霞沙羅の所には、ここ最近に函館から少尉…、三本木(さんぼんぎ)少尉に関する人事的な件で相談を貰ったことは無い。


 札幌駐屯地での騒動の後は、金星接近もありながら、駐屯地内で少尉が絡んでの裏切り的な騒動があったというような報告も無い。


 とにかくまずは事の真相を伝えないように、上官である山縣(やまがた)中佐に電話をつないで貰った。


「新城大佐、どうかしましたか?」

「ああいや、ふと気になったことがあってな。以前に札幌で事件を起こした三本木少尉がいるだろ?」

「彼ですか?」

「随分真面目そうなヤツだったが、その後はどうだったんだ?」

「その件ですか。しばらくは観察期間を設けたりもしましたが、あれから問題も無く、しっかりとやっていますよ。先日の金星接近でもいくつも現場を飛び回っていました」

「そうなのか」


 だとすると伽里奈の心配も杞憂に終わりそうだ


「隊の中でも特に軋轢なども無かったのですが、時々悩んでいる素振りもありまして。数日前ですが、しばらく休みをとりたいと、休職の申請を出しまして」

「それはひょっとして、私が未処理だったりするか?」

「大佐は特別任務で横須賀に方にいるとのことで、本部の方とは調整がついています」


 軍の上が今の自分の状況を加味して、手を回してくれたのはいいのだが、こういうことがあるから、この事件が終わった後は、多少のことでは自分が前に出ないで済むように教育をしていきたいところだ。


「ただ、その前に何度か面談をしたのですが、やはり思うところがあるようで、辞意も示していましたよ。何であれ、上官である私に斬りかかったのを悔やんでおりまして」


 あの女、余計なことをしやがって、とカナタの顔が浮かぶ。


 とにもかくにも、あの日以降は問題を起こしていなかったのは、処置としては正しかったのだろう。


「個人エージェントとして教育関係か、警察への協力をしたいと、独立のための情報集めをしているような動きはあるようです」


 取り押さえた時も、多少の混乱めいた素振りはあったけれど、捜査へはおとなしく協力していたし、心配するような事は無いような気がする。


 ただやはり、組織に属している人間としての色眼鏡が無い、外注ながらも部外者である伽里奈がおかしいと言っている部分には引っかかりがある。


 なぜカナタと接点があったのかということだ。


 さすがのカナタも、無断で他人の持ち物に細工をするような事はしていないだろう。そもそも知らない人間だ。


 とりあえず函館での現状は解った。


 霞沙羅は連絡をそこまでにして、今度はカナタの方に、事情を聞くことにした。


   * * *


「処分していなかったのですか?」


 三本木少尉のことについて、カナタに事情を聞くと逆に驚かれてしまった。


「説明したと思いますが、私は勝手に武器を手渡すようなことはしていませんよ。危険な思考を持つ、将来的に事件を起こす可能性の高い人物に営業をかけて、合意の元でその邪心を満たす道具を作りますからね」

「カナタが作る道具は、営業で引っかかった人間が何をしたいのかを聞いた上での物なのよ」

「実験ですから、思いつきで作ったような適当な物は渡しませんよ。一応方向性が必要なわけで」

「しかしなあ」


 あの少尉は事件当時にはかなりのショックを受けていたようだし、その後の事情徴収にもしっかり応じていた。


 山縣中佐からの連絡でも、事件後も真面目な勤務態度で金星接近時に現れた幻想獣への対処もしっかりと行っていたという。


「あの少尉は金星の虜ですわよ。どこかの集団に属するというわけでは無く、声がかかったら情報を提供したり。戦力として合流する傭兵的な立ち位置でしたの。それで金星の接近に備えて、配属先に被害を与えるために、シールの前段階である剣術知識をサーベルに込めたわけですが、まあ実際、土壇場でストッパーが起動するように細工をしておりまして」


 つまり山縣中佐の腕を軽く斬った状態で霞沙羅達に取り押さえられたのは、それ以上は魔剣の力が止まってしまったから、というもの。


 カナタとしては想定通りに動いたという事が確認出来れば良かった。だから少尉は使い捨てだった。


「上官への刃傷沙汰であれば、さすがに怪しむだろうと思ったのですが、どこの公務員も身内に甘いのですねえ」

「失敗した時のために、どう演技をするのかを考えていたのかもしれないな」


 ソウヤも潜入をする時には、色々な場面で使える言い訳を考えておくモノだ。


「あの時は逃走用に仲間が車を用意してなかった? さすがに失敗が解って逃げたかな」

「そうであれば、なかなか喰えない男でしたわね。先程の人間は愚かにも自分から出てきてくれましたが、間に合うのなら早めに動いた方がいいですわよ」


カナタは三本木少尉の、金星の虜内での別名を教えてくれた。飯能の農家からリストを得たのであれば、そこに書かれているかもしれないという事と追加情報で


「さっき私が頭を掴んだぴーちさんが知っているようでしたわ」


 確かに北方に思い人、とも言っていた。


 リストは警察にあるので、そっちの知り合いが多い榊に声をかけて手を回した方がいいだろう。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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