忘れていたあの事 -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「アーちゃん、今日は見ない人がいるわね」
また日が変わって、いつものメンバーが揃った鍛錬に、共通魔法の勉強会が終わったカナタ達3人が合流してきた。
「今起きている事件で霞沙羅さん達に協力している、ヤマノワタイって世界の人なんだ」
「お、よく見たらこの前の傭兵じゃねえか。なんだ、そんなところの住民だったのか」
やどりぎ館に関わっているからか、異世界ということに対してハルキスも何か感覚がずれてきてしまっている。
本来はそんな簡単に行き来ができるわけでもないのに。
それと、異星人なんだけどそこはもう言わない。
「じゃあ強いのね?」
霞沙羅達に協力しているという説明から、ある程度以上の能力があると予測して、ヒルダも興味を示した。やはり強い人間となれば気になるというもの。
「この、カナタさんという人は特に」
伽里奈は試した事は無いけれど、霞沙羅と榊が2人がかりでも勝てないほどの、槍の使い手でもある。
モートレルを襲った帝国残党の後ろにいた、占領計画の準備に手を貸した人間だという事は、ヒルダには言いたくはないからその辺は黙っている。
この事件が終わればもう会うことも無いから、今だけは我慢だ。
まずは霞沙羅と榊、そしてカナタの2対1を見ることにする。やはり今はこれが優先だ。
それとあんまり意味はないような気はするけれど、カナタは、自分のことに興味がありげなハルキス達の相手もしてくれるそうなので、それはこの後順次相手を変えていく予定だ。
「私はこの、かわいい子とやりたいわ。前回はお互いに武器が悪かったものね」
いつも通り、女子高生的な制服とブーツに白衣という25歳、船形アオイが伽里奈の相手に手を上げた。
正直、この場で現代の日本らしいまともな服を着ている人間が少ないので、服装の件はもういいような気がする。
その歳でそれかよ、と霞沙羅は言うけれど、視線を移すとそれとは別のセンスを持った伽里奈がいるので、もうどうでもいいと思ってしまった。でも今日は市販のスポーツウエア…、の女性用。
もう一人のソウヤの方は一転して、まともなスポーツウェアなのでなかなか爽やかさがある。
ただカナタはOLさんのような黒い事務服の上に白衣。大学構内でも歩いていればまともそうだが、こちらも一癖ある。これで霞沙羅と榊のペアよりも強いというのが信じられないような服装だ。
そしてアシルステラ勢はやはり前時代的な服装だ。
あまり人には見せられない。
「だったらやりましょうか」
服装はともかく能力的な相性は悪く無さそうだ。伽里奈も一度やってみたかったので、アオイの申し出を受ける事にした。
アオイの武器はいわゆる刀。カナタの槍もソウヤの短刀もほぼ日本のモノと大差無い。純凪さんからはヤマノワタイノ文化の事は聞いていたけれど、遠く離れた場所で日本と同じような武器が作られているのが面白い。
「それじゃあ結界を張るわよ」
エリアスに結界を張って貰い、思い思いに鍛錬を始めた。
* * *
折角だからと、伽里奈も霞沙羅と組んで水瀬カナタと戦ってみたけれど、力も技量も経験も全てが違っていて、勝つことは出来なかった。
榊を入れた3人組になっても果たしてどうだろうかという槍さばきだけでなく、他の武器にも精通しているし、『気』の技術も極めているという具合。
魔術では吉祥院を上回り、これまで何度も唸らされてきた魔工具の作成も出来る。本当に鍛冶屋なのかという腕前だ。
これほどまでの能力を悪事に使っていたら、魔工具などに頼らず、カナタ単体でも甚大な被害が出ていただろう。
逆にそんな事は無いのだから、彼女の目的は最初から別にあったという事だ。
「ほんと強えな、この姉ちゃんは」
以前に霞沙羅とやった時に、練習用のハルバードを真っ二つにされても、知らない技だと興奮していたハルキスも、カナタのあまりの強さには呆れるほどだ。
「世の中は広いのね」
何といっても300万光年離れたところから来た人だから、確かに世界は広い。
ところで地球とアシルステラはどのくらい離れているのか、フィーネなら答えてくれるのだろうか。
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