迎え撃つ準備を始めよう -8-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
翌日もエリアスが来てくれたので、これまで通りに強固な結界を作って貰って、霞沙羅達と同じような能力を持つ3人組同士でやって貰うことにした。
伽里奈達は場合によっては3人ずつに分かれることもあったそうなので慣れているそうだ。なのでまずは伽里奈とハルキスとルビィの組を作って貰った。
霞沙羅と同じオールラウンダーな伽里奈が、よく解っている仲間の中でどういう動きをするのか、それを見てみたかった。
多分、これを参考にすれば霞沙羅達3人がより高いレベルで能力を発揮出来るようになるだろう。
その理想の形を見せて貰いたい。
「おう、じゃあ先生達、始めるか」
3対3にもかかわらず結界のサイズはサッカーコート並みで、かなり広めになっている。伽里奈の方もこのくらいでいいと言っているので、カバーできてしまえるのだろう。
持っているのもお互いに愛用の武器。つまり魔剣同士だ。
ただ、そこまで本気でやる気は無い。お互いにどういう動きをするのかを確認するのが第一の目的だ。
「じゃあいつも通りいこうかなー」
今の環境は、お互いに自分の得意な環境の魔術を使用出来るのがいい。
普通ならどちらかが相手側の星に行けば不利な状態になるけれど、これはフィーネにやり方を聞いてアシルステラの環境を持ってきたエリアスに感謝だ。
まずはハルキスと榊が前で斬り合いを始めて、吉祥院とルビィが離れた所から援護を始めた。
同じ魔術師なのに主な行動は吉祥院が榊への防御で、ルビィが攻撃なのが面白い。
じゃあ伽里奈はというと、ルビィから飛んでくる雷撃系の魔法を、冒険中に開発した専用の魔法で拝借して、霞沙羅に飛ばすという行動をして来た。
無作為に、勝手にやっているのかと思うと、吉祥院に防御されそうな魔法をピックアップして、その軌道を変えてくる。
そういえばガーディアン事件の時にも、ルビィの撃った雷撃を上空で分割した事があった。この辺の連携はさすがに、幼なじみで学院のライバル同士なだけはある。
この辺はどうやっても魔術ではルビィには勝てない、と冷静に自己分析したからこそ、ルビィが使う魔術を頭に入れて、それが飛んできたらどう利用しようか考えていた事にある。
霞沙羅も当然、吉祥院に専用の武器を作れるくらいなので、仲間内の能力の分析をしているわけだけれど、利用するという発想は無い。
こんな事をやられてもルビィも怒ることはないので、伽里奈がこれをやることは当たり前として認識している。
そしてハルキスは後ろは大丈夫だと信頼している。
霞沙羅だって伽里奈のサポートを受けたことがあって、ちゃんと自分の立ち位置をその時の環境に合わせられる柔軟さを今、あえて敵に回すことで実感している。
勿論前方でやっている2人の斬り合いに霞沙羅が参戦してきたらハルキスは1人での対応は無理だから、妨害を始める、というか、霞沙羅が前に出ることを今妨害している。
どちらかというと「これが見たかったんでしょ」と教えてくれているようにも見える。
「アリシア君て、かなり食えないもんだねえ」
言ってしまえば、伽里奈だって剣と魔法にかけては達人とか天才とかそういうレベルなのだが、仲間内にその上がいる事をちゃんと認めていながらも、各々のダメなところも解っている。
他に担当者がいると本人があんまり出しゃばらないから、かなり広い視野も持っていて、剣も出来て魔術も使えるからカバーできる範囲も広い。
小樽校襲撃の時から気になっているけれど、魔力の省エネ志向も強いので、切り札を隠しているであろう事も解る。
冒険者時代は何かあった時のために、常に空間転移が出来る余裕は残していたとも聞いている。
たった6人で生き残る、と考えての行動らしいけれど、霞沙羅もそろそろこういう事を考えてもいいだろう。
軍人とはいっても、自分達3人についてこれる人間は、戦場のレベルが上がればドンドン減って、頼れる仲間が脱落していく。
それはどこかで伽里奈達と同じ状況になるということ。そんな中、オールラウンダーな霞沙羅がやるべき事は…。
「なんかやれることねえか?」
伽里奈はぼちぼちとしか攻撃をしてこないので、霞沙羅も動こうと思えば動けるけれど、今回はそうじゃない。伽里奈を参考にする為に、今の位置に踏みとどまることにした。
そしてそろそろ、これはハルキスか榊のどちらかを勝たせるという勝負になってきている。どちらの援護が適切なのか、当然霞沙羅が出ていってもいいけれど、ここは同じく3人組のリーダーとして、あえて伽里奈に魔法で対抗するのがいい。
吉祥院も攻撃魔法を飛ばすようになって来たけれど、相変わらず威力が大きくて、援護どころか回避のために2人の距離が離れてしまうなど、邪魔になっている。
同じように魔法一発の威力が高いと言っていたルビィは、巧みに威力を切り替えている。
「ルーちゃん、巧くなったねー」
そういえば館ではでシャーロット相手に小さな魔法の練習をやらせていた。当然、再会した仲間にも同じ事をやらせていても不思議では無い。ルビィの課題点を知っているのだから尚更。
「霞沙羅さん、ボクと同じコトしなくてもいいですよー」
「あの野郎」
年下のくせに上から目線でアドバイスをするとは。
ならまあこっちはこっちで今霞沙羅が出来る行動をするしかない。
吉祥院の杖を作ったのは霞沙羅だ。これだけは伽里奈には出来ない。
攻撃の割合を高めることで動きが鈍った防御壁を5枚ほど掴んで、制作者である霞沙羅ならではの整備モードにして支配権を奪った。
たった5枚とはいえ、剣士でもある霞沙羅が榊の防御に回ることで、吉祥院からの攻撃の余波を軽減して、ハルキスからの剣撃も防御するようになった。
「おい、ウチのリーダー」
「解ってるよー。【薄氷柵】につき、龍顕掌」
伽里奈から氷で出来たような、シャボン玉の泡のようなモノが多数に発射された。
援護されたハルキスの方も、伽里奈のこの魔法は見たことはありながらもいつもと様子が違うと感じたけれど、吉祥院と榊の攻撃が続くので、とりあえずそのまま防御に専念した。
「な、まずいぞ」
龍顕掌は霞沙羅も使えるけれど、伽里奈はあれで何をやる気なのだ。それにハルキスの切り替えが早い。
シャボン玉のような氷は、ある程度の場所まで来ると割れて、中からは内蔵されていた龍顕掌という『気』の攻撃が飛んできた。
まるで龍の頭部のような形をした気の塊が、榊めがけて多数飛んでくる。
霞沙羅は防御壁で防御をするけれど、全てが龍顕掌によって大きく後ろに持って行かれ、ついでに榊の斬撃も相殺される。
「これなら良さそうだな」
一発だけ、ハルキスのハルバードにもとりつき、龍顕掌の影響で斬撃から打撃に変わった斧部分で、バランスを崩した榊に一発入れた。
ふらつく状態でなんとか受け止めた榊だったけれど、体勢が悪かったので足の踏ん張りが効かずに大きく吹き飛ばされることになった。
「この辺はアーちゃんが巧いナ」
「まずは一本ですかねー」
さすがずっと仲間のサポートを行ってきただけあって、4年近いブランクがあるといってもアドバンテージがある。
だがまだ鍛錬は始まったばかりだ。
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