迎え撃つ準備を始めよう -6-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
各自それぞれが用意された飲食物に手を出しながら、2時間ほど経ったところで仕事があるライアが帰って行った。
…食べ物を色々と持って。
「この骨のついた鶏を揚げたのがいいわね。前にアンナマリーがお昼に食べていたような」
「フライドチキンは今度作りに行くよ。衣の味付け用の材料も見つけたしねー」
「美味いからオレのところも頼むぜ」
「骨抜きしたのをパンに挟んで食べても良いよー」
「なんかこの巻いたのいいナ」
「ブリトーもいいよねー。これは前にヒーちゃんのところに持っていったっけ?」
「この折ってあって辛い感じのは? 野菜も多めだから神官達にも良さそうね」
「タコスでしょ。ブリトーとは同じようでちょっと違うんだけど、赤い辛子をレオナルド将軍が生産したいとか言ってたから、かかってるチリペッパーソースもそっち向けに開発したよ」
折角だからとよく解らない料理をクラウディアも黙々と食べて楽しんでいるけれど、相変わらず伽里奈の研究心がすごかった。
地球にある有名料理を全てアシルステラに持ってくる気なのかと思ってしまう。
「アリシア君達はこんな感じで旅をしていたのでござろうか?」
吉祥院達も一休みして、お昼ご飯で駅弁を食べている。
仕出し弁当じゃなくて駅弁にしたのは、冷えていても美味しいからだ。
「私も国内を何回か、ちょっと移動しただけだけど、宿に入った時は食べ物の話しをしていたわね」
クラウディアでも魔女戦争時は事件解決のために、国からの依頼を受けたこの6人と一緒に現場まで移動とかの仕事はあった。
リバヒル王国はフラム王国と土地の環境が違うので、あの時の伽里奈はリバヒルに行く度に「この国は羨ましいなー」と言っていたものだ。
「1泊2日でいいから、あっちを歩いて旅してみたいもんだな」
軍の訓練を経験している霞沙羅なら、舗装もされていない街道を一日歩くのも苦ではない。それがダメでも、せめてラスタルとセネルムントくらいの移動でもいい。
旅のプロがいるので、きっと上手いことエスコートしてくれることだろう。
それにしてもいい加減、この日本の状況が落ち着いて欲しいモノだ。
「軍を辞めて鍛冶に専念するか」
「霞沙羅が軍を辞めたら、吉祥院の家が雇い入れるでやんすよ。今よりいいマネーを出すじゃん」
地区人員のマネジメントをやらなきゃならない身分なのに、こう大きな事件が何度も起きては、いちいち最前線に出て行かなければならない状況ばかりで、そろそろこういうのは卒業したい。
軍はさぞや慌てるだろうか。
「現実的にはお前が自主的に前に出ているような気がするがな」
「いやー、それな」
榊のツッコミに頷く。多大な戦果をあげて昇進してはみたけれど、結局はそういう性分なんだろう。
それでもあそこにいるアリシアとかいう英雄様みたいに、嫌なことがあれば遠い場所に移住するくらい拒否してみる、という態度を示してみるのもいいかもしれない。
「霞沙羅が軍を辞めたら大変じゃない?」
星雫の剣を破壊するぞと言っているのに、辞める辞めないの話をしているから、心配になってエリアスが移動してきた。
「純凪さんも向こうの事件が終わって、こっちに来て、ほぼ引退状態だったんだぜ。軍なんてモンは人の集まりだからなんとかなるだろ」
「これが終われば、多分しばらくは無いでやんすよ」
「降格になって構わんから、一年休みてえな」
嫌になったのでは無くて、ここ半年くらいで多くの人と非現実的に出会う結果になって、それでやりたいことが増えたのが正しいから、休暇が欲しい。勉強するための長い休暇が。
「お前らのせいだぜ」
霞沙羅にとってアシルステラの大地はとても魅力がある。
アリシア達が間に入ってはいるけれど、向こうの知り合いも出来たから、ずっと滞在するというワケではないけれど、頻繁に行きたい。賢者の人達とももうちょっとちゃんと意見交換をしたい。
まだ気持ちの中ではなんとも言えない状態だけれど、水瀬カナタとも、純粋に魔術や剣術、それと鍛冶について語ってみたい。
辞めたいというよりも、その先のキャリアのために、一度現場から離れてやどりぎ館を利用した、多くの体験をしたい。
「本人がいるからあまり大きな声では言えないが、あいつはもう高校にはいられないだろ?」
あいつとは、もちろん伽里奈である。
「そろそろ私でも止められない状態になっているでやんす」
本人にやる気は無くても…、やる気が無かったかと言われると首をかしげるけれど、ここのところ活躍しすぎてしまった。
事情を知らない協会も、事情を知っている寺院庁と軍上層部も、戦闘面に関しては霞沙羅に匹敵する能力を持っていることが解り始めているから、手を貸して欲しいような空気を出してきている。
「そうなると暇になるだろ?」
「アリシア君のことだから暇ってワケじゃ無いざんしょうが」
やどりぎ館の管理が本業なのでヒマになるわけではないけれど、学校に通わなくなればこれまで以上にフラム王国に行き来が出来る時間は増えるだろう。
1人が帰ってしまったけれど、あそこで食べ物の事で盛り上がっている5人は、以前とは別の繋がりが出来上がっているから、伽里奈も自分の世界に出入りする事に抵抗が無くなっている。
これまで以上にフラム王国に関わっていくかもしれない。
「お前も学院の連中と話がしたいだろ?」
「科学がろくに無い文明における魔術の立ち位置には大変興味があるでござる」
「みず…、榊も剣の修行がしたいだろ?」
「あれほど手持ち武器にあふれた世界だ。色々な使い手と使い方に出会えるだろう」
またかと。そろそろ普段から名前の方の「瑞帆」と言えよとエリアスと吉祥院は呆れる。
まあとにかく、榊としては、強い弱いはあるけれど、騎士団やハルキスの自警団などがどういう戦法をとっているのか見てみたい。
そんな感じでここ半年で、3人とも学びたいことが出来た。
これこそが、フィーネが言っていたやどりぎ館がある理由だ。アシルステラでもかなり高い位置の技術を持っている伽里奈達から学ぶことも多い。
結局は伽里奈が高校にこだわったのは、文化を学ぶ為だったから、本人はそれが必要だと思ったのだろう。
実際、結構上手くやっていたし、魔法術科に転属しても視点を変えて、日本の高校と学院との差異に目を向けていた。
「聞いていなかったがクラウディアはいくつなんだ?」
「私は104才よ」
「104年も生きてまだ魔術の研究が出来るんだぜ。20代の私らもまだやることあるぜ」
星雫の剣対策だということで、こうやって集まってくれた伽里奈達6人と追加1人からだって学ぶことはある。
以前に、初対面の榊とヒルダが馬鹿馬鹿しいくらいに長く手を握り合っていたことがあったけれど、そんな馬鹿がここに集まっている。けれどまだまだ学び足りない。
「くだらんもんをさっさと片付けて、次にやることやろうぜ」
「そうざんすな」
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