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迎え撃つ準備を始めよう -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 共通魔法が広まると神が黙っていない事もあって、カナタはそのような話は軍には一切していない。


 それもあって、最前線まで出て行く霞沙羅(かさら)吉祥院(きっしょういん)と後方のサポートをするアリサにはヤマノワタイの魔術を教えるという名目で、カナタとアオイが相手をしてくれている。


 ただこの2人は魔術師の立場から、軍に協力して、作戦を練る必要もあるので、時間は限られる。


 それでもテキストも準備してくれて、空いた時間にでも自習出来るようにはしてくれた。


 こういうところは伽里奈(アリシア)と思想が似ていて、これで性格さえ良ければいい講師なり師匠になれたのではと思ってしまう。


 榊の方はというと、こちらも同じく、魔術を使えないソウヤが相手をしてくれる。


 ソウヤは忍びという事もあって、今回の作戦に使えるかどうかは別として、榊が経験を必要としていた立体的な動きを多用する戦闘技術を持っているので、体を動かすにはちょうどいい機会になった。


「なるほど、よく見つけたな」


 まずは共通魔法の概念から説明があった。


「100年以上かけましたからね。各星の魔術を比べて、共通点があるのではという事を見つけたのは曾お爺様なのですが」


 フィーネが言うにはその共通点には気がつかないという神の奇跡がかかっていた。


 エリアスが、やどりぎ館にアンナマリーが来た時点で伽里奈(アリシア)にかけていた「認識阻害」という奇跡と同系統の強化版で、一つの星の魔術では当然解らないし、三つ四つでも霞沙羅と吉祥院、それと水瀬家でも長いこと気がつかなかった。


 結局「異世界」という概念がその思考の邪魔をしていたのだけれど、カナタの3代前が何かのきっかけで気づいてしまったのだそうだ。


「概念を理解できたようであれば、共通魔法が上位でも何でも無いことも解りますでしょう? 現在あなた方がこの地球で使用している魔術は使用場所の制限がかかっているだけですからね」

「というわけで、これが各系統の初級魔術よ」


 アオイが新たなテキストを2人に配った。


「用意がいいな」


 これまでの話や、すすきのの件で魔術師としては上であろうという水瀬カナタが、きちんと魔術の概念も初級魔法もしっかりと説明が出来るという事に、吉祥院も唸る。


 水瀬の家は本家からは分家したとはいえ、ずっと鍛冶や剣術も魔術技術の知識も継承している家だ。


 その部分は吉祥院の家もそうで、ちゃんと先代から次代へと魔術の継承は行われている。


 ただ千年にわたる歴史の中で、一族はいつしか当たり前のように魔術が使える人間になっていて、初級魔法はある程度会話が出来るようになる頃には息をするように使えても、初級魔法を他人に教えることが出来ない。


 それをこの水瀬の家は基礎の基礎からちゃんと教える事が出来て、完璧に知識を次の代へと継承している。


 カナタは6歳で大学まで出ているというが、まだ親と仲が悪くなった時に教えられていたりする。


 前にも同じような状況のルビィと冗談交じりで「同じじゃん」と言い合った事もあったけれど、日本の魔術師の総本山に属する人間としては、後進を育てなければならない身なのでいいわけはない。


 ルビィも冒険中に、ヒルダ達に魔術の基礎を教えた伽里奈(アリシア)が羨ましかったと言っていた。


「なんだお前、どうした?」

「吉祥院の家の甘えみたいなのが見えたでござる。それはともかく、話しを続けて欲しいで候」


 家の事はこれから考えれば良い。とにかくあまり日にちは無いから、目の前にある魔術を覚える方が先決だ。


   * * *


 霞沙羅達が何をやっているのかはもう軍事上の機密事項なので、所詮は外注の伽里奈(アリシア)は日常生活に専念することにした。


 魔術師としては、共通魔法とやらにちょっとくらいは触れてみたかったけれど、フィーネからもあまり広めるでない、と言われているので、その辺は運営側である女神に従うしかない。


 日常に目を移すと、学校の方は期末テストの時期も間近になってきているから、その対策としての練習場所の拡張が始まって、伽里奈とシャーロットは教師達に依頼されて、放課後にゴーレムを使っての練習の手伝いが始まった。


「シャーロットも扱いが上手くなってきたねー」


 一度にゴーレムを複数体なんていうのは無理だけれど、一体なら安全に運用できるようになった。


 今後は数を増やすのではなくて、一体の造形とか細かい動作とか、命令とか。クォリティを上げる追求をしていきたいのがシャーロットに求める伽里奈(アリシア)の方針だ。


 このまま、ロンドンに帰るまで一般学生や、一ノ瀬達と付き合えば、現地の魔術師協会でも屈指のゴーレム使いとなれるだろう。


 本人もこの魔術を使いたいという興味を持っているから、他の魔術師とは違う特技として、技術を持って帰って欲しい。


「はーい、またすぐ作るわね」


 シャーロットが作ったちょっと大きめな騎士型のゴーレムが破壊されたので、練習しに来た生徒達のために新たに作り出した。


 伽里奈(アリシア)が指定した通りのゴーレムではあっても何度も作っているから、完成するまでの時間は大分短縮されてきた。


「私たちの練習は出来なくなっちゃたけど、まあ試験前だし仕方がないわね」


 勿論、一ノ瀬達も他の生徒達に交ざって、放課後の練習に来ている。


「今林君達はこっちじゃないんだね」

「今はあっちの方で、一つの魔法に絞って練習しているそうよ」


 あっちとは、レーンとか結界とかの方。持ち時間は多くはないけれど、ゴーレムでは他の生徒との共同になってしまうし、どうしても慌ただしいから、ゆっくりやりたいらしい。


「そういえば今日も神戸校から雪中演習が来てるのよねえ」

「そうそう、今日からね」


 今回は2年のB組。普通のクラスだ。


 しかし、まさか小樽校ではこんな感じで魔法の練習をしているとは思うまい。


 「横浜校を出し抜け」という霞沙羅の方針を聞いて、生徒達は皆が共通の秘密を持つようになったから、なんとなくの連帯感のようなモノが生まれている。


 「他ではやっていない設備と練習法」を構築している最中という事もあって、結構積極的に意見をくれるようにもなった。


 A組だけでなく、全体的な生徒の意見が集まっているから、皆がやる気を出してくれているのを感じている。


 そういうのが解ると、やっている側も嬉しくなるというもの。教師達も次は何がいいかとか日夜考えているとか。


「6月頃にはなんか三校での大会があるんでしょ。一ノ瀬さん達は頑張ってねー」

「ロンドンに帰る私は手伝えないけど」

伽里奈(かりな)アーシアはどうなのよ?」

「さすがにボクはダメでしょ」


 資格を持った本物の魔術師が学生の対抗試合に出てはいけないだろう。大会までの特訓を手伝ったり、現場まで付き添って、大会中にアドバイスをするくらいは許されるだろうけれど。


 それに「じゃあ何級なんです?」なんて訊かれて「B級なんですよー」なんて言おうものなら、インチキと言われかねない。大人げなさ過ぎる。


「その辺は、2年になってから考えようね。はいはい、練習練習」

「はーい」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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