迎え撃つ準備を始めよう -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
翌日も純凪さん夫婦が来てくれて、軍を中心とした対策会議に参加してくれた。
半ば信用していなかったカナタ達も何かが入った大きな箱を持ってやってきた。
まだ星堕の剣に関しての報道はしていないけれど、人を近づけさせないために、先日の事件の調査、という名目で旧23区には低めのレベルで警報が出されている。
「何が入っているんだ?」
「シールと手持ち武器と手投げ武器と銃弾ですね、手持ち武器は主に杖ですよ。一つの魔法しか撃つことは出来ませんが、対星堕の剣専用のものですわ」
「大丈夫なんざんすか?」
「今我々が将来に備えてストックしている武器には彼女が発案したモノが少なくない。しばらくは出番はないが、アリサ達専門家によって安全かどうかの検証はされているよ」
「地球の魔術で作られていますから、気になるなら検証してくださいな」
カナタの態度は堂々としたモノで、この数ヶ月で幾つかの事件が起きた、その元凶となる人間だとはとても思えない。悪くいえば悪びれていない、良く言えば覚悟か決まっている。
ただまあここは邪龍神様の反応を信じるしかない。実際に自分の星に来られた時は追い返しているようだから、地球でウロウロしているのを無視したというのは、それによる益があると踏んだのだろう。
会場に入ると、既に何人かが座って待っている。
そこには空知桜音を中心とした寺院庁の人間の姿もある。
彼の祖父である大僧正の方は、空地家施設からの通信での参加になるようだ。
そこから防衛大臣や将官達、警察上層部、総理大臣も通信で参加してきて、会議が始まった。
「まずは異世界の方々、純凪夫妻の協力を感謝したい」
大僧正からの声に対して
「いえ、こちらこそ。我々の側の問題が持ち込まれて申し訳ない」
遠くにある別の銀河からやって来た、とは言わない。これまで通りの異世界人だ。
この辺は、霞沙羅が数ヶ月前から異世界人を追っていたのを知っている人間がいるし、魔術師からは、世界の歴史から見てもあり得ることと見ている。
事実は定かではないけれど、昔からあり得ないモノの存在は記録されていし、大僧正のような一部の人間は秘密にしながらも交流を続けている。
まあ霞沙羅が追ってきた、悪い異世界人がここにいるわけだけれど結局その辺は内緒にして、カナタの事もあって信憑性のある話となっている。
「まずは星堕の剣についての解説をしましょう」
「星雫の剣であれば千年世様のところにいるのではないか?」
一部の人間は同音の名称であることを知らなかったようだ。
「紛らわしいですが、星を侵食する特性を持つことから、星を堕落させる、と書くのです。それと一番最初の個体が、十字の形をして地面に刺さったので、その姿から「剣」という名称になったのですね」
「そうであったか」
モガミは持ってきた資料をアリサに配らせて、ヤマノワタイにおける星堕の剣と、その戦いの歴史についての説明を行った。
各個体の写真もあって、カナタが言ったとおり、初代は地面に刺さった大きな剣のような形だった。
「軽くデータを見させて貰ったが、さすがに全土を侵食することはないのですな?」
「今はこちらの、水瀬カナタが設置した仕掛けによって止められてはいますが、放っておけば、これまでの歴史的に、関東全土とその周辺くらいは支配するのではと思われます。ただそれは最も撃破に時間がかかった時の話ですので、実際にはどこまで拡大するのかは解っていません。ただ、神ではないのでその影響力は限定的です」
水瀬カナタの名前で霞沙羅から不審人物とされてきたけれど、今回の件の調査をしていた人間で、犯人は別にいるということになった。
「星の成り立ちには幾つか説があると思いますが、我々の星は大小様々な天体を混ぜ合わせた事によるよる形成と考えられています。その時に星になれなかった小惑星に宿った意思が、新たに神に加わるべく我々のヤマノワタイを襲うとされています」
「よりにもよって、というかなんというか、あまり影響のないところに落ちてきたのが幸いか」
防衛大臣は言うが、確かに旧23区に来てくれたので今のところの被害はゼロだ。
「ヤマノワタイの歴史上、すべてが撃破されていますから、マリネイラの魔力をどうにかして嗅ぎつけて、それを目印に転移して来たのではと考えておりますわ」
実際に目標物として設定されていたわけだけれど、あの2人は厄災戦を観戦しているわけだから、やってくれたモノだと娘としては呆れてしまう。
「そちらの世界を狙うのをやめようとしたのでしょうか?」
「まだほんの16年程度前に前回の戦いが終わったので、当時の…、例えば純凪さんのような経験者がいますからね、分が悪いと思ったのでしょう。私的には、何も知らない地球では対応できないからと思っておりますよ」
単に娘がいないところで結果を出そう、というのが両親の考えではあるけれど、その中には、余所の星では経験が無いから対応できないという、星堕の剣自身の計算はあっただろう。
実際に、カナタが動きを止めているから何も起きていないわけで、何の対策もしていなければ、今頃も粛々と浸食が進んでいるだろう。
「結論を聞くが、アレを破壊する方法は?」
「星雫の剣と同じで意思があります。その意思が宿っているコアを破壊すれば終わりです」
「あの状態だとゆっくりと土地を浸食することしか出来ないので、攻撃を開始すると戦闘状態をとります。そこを叩くしかないですね」
「あの大きさのモノが戦闘形態を?」
「いえ、一部だけです」
そこでモガミさんは映像を見せた。
同じように岩のような姿をした星雫の剣の表面が砂のように動いて、巨大な人のような姿となっていく。ただ、岩の部分はそのままで、歩行をするわけでは無い。
これは地面に浸食の根を生やしているから、移動が出来ないからだ。
「ほお、こういうことなのか」
見ている霞沙羅達も敵の姿に対してどう攻略するべきかと考えている。
「通常兵器は効くのか?」
「小惑星自体には当たりますが、あの戦闘形態部分は魔力が形成した部分なので当ててもあまり意味はありません」
ヤマノワタイでもとりあえずはミサイルなどでの攻撃は行う。
「牽制くらいにはなりますが、とても堅いですの」
「という事はこちらも魔法を使用するしかないと?」
「そうです」
「それから浸食した土地から生命体を生み出します。一応神に憧れているわけですからね。これが兵隊として機能します」
これは同席しているアオイが実際の画像と、役に立つかは解らないけれど、ヤマノワタイの歴史上、人類が対面したその生命体のサンプル画像を表示した。
人型もあれば虫型もあれば、多種多様な姿をしている。
これは本人の趣味嗜好による。
「これは星堕の剣ごとにセンスによって作るモノが違うので、共通点はありません」
「これには通常兵器は効くのか?」
「こちらは魔力の有り無しに関係なく対処できます」
モガミとアリサは16年前に自分が戦った時の数々の作戦データを提示した。
どういう人員で、どういう武器で、どういった作戦行動をしたのか、というサンプルだ。
「これはありがたい」
恐らく一般的な兵隊も出動せざるを得ないのだから、将官からからも安心の声が聞こえた。
地球とは文明レベルが違うとは聞いているけれど、どのように武器と戦闘員を運用したのかというデータがあるのと無いのとでは雲泥の差だ。
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