トラブルの後始末 -4-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「ルビィが熱弁していたけれど、この下宿の食事はントに美味しいわね」
オムライスの卵部分に揚げ物が埋め込まれてケチャップとタルタルソースがかかっているハントンライスなんてモノは食べたことが無いから、クラウディアは珍しそうに、スプーンに乗せたハントンライス
の一部を眺めながら食事を始めた。
「館に来てこういう初々しい反応をするヤツは久しぶりだな」
「しばらく地球の人が続きましたからね」
しかも一人は日本人だし、何度もここに来ているから料理で驚くような事は無かった。
先に来たシャーロットは、最初のウチは異世界人以上の反応を見せてくれた。
「アンナマリーお嬢様はどうだったの?」
「かなり感激しましたよ。最初はこの人がアリシア様だったとは知りませんでしたしね」
もう何回も食べているけれど、アンナマリーはオムライスが好きだ。アリシアは毎回ちょっと違うのを出してくれるのもあってとってもいい。
豪華にビーフシチューがかかっているのも良かったし、チキンライスの上に乗せた柔らかいオムレツを切って広げるパフォーマンスも好きだし、シンプルに薄焼き卵で巻いてケチャップだけかかっているのも好きだ。
自宅の料理のような豪華さは無いけれど、美味しいのだ。これは仕方が無い。
「栗栖の料理はどうだったの?」
「麺料理とソテーとかの焼いた料理が得意だったわ。色々と材料が無いって言ってたけれど、それもようやく意味がわかったわね」
管理人時代に純凪さんから聞いたけれど、ヤマノワタイという世界、というか星は、全体的に日本に似た文化圏が広がる場所だから、お米をよく食べるそうで、フラム王国はあまりお米をメインとはしないから大変だっただろう。
そんな栗栖は帰ったばかりだけど、結局どうするのだろうか。こういうケースは聞いたことも無いから、クラウディアの世話をする人間はラスタルで見つけるしかなくなるのだろうか。
今日は急な話だったのでクラウディアはやどりぎ館で引き取ったけれど、明日は学院と話をして、栗栖の件で解決しそうになければ、寮を一人用のモノに変えて貰うとかした方がいいかもしれない。
「霞沙羅さん達はこの後どうするんです?」
食事が終われば次の問題だ。
「この吹雪だろ。転移をすればいいんだが、3人で話もあるから二人部屋を貸してくれ」
「いいですけど」
吉祥院に対応するために、ベッドの交換はしないとダメだけれど、そのくらいは簡単なモノだ。
「じゃあネコちゃんを借りていくわね」
「にゃーん」
霞沙羅が帰らないという事は、アマツもこっちにいることになるので、シャーロットが今晩一緒に寝ようと借りていった。
アマツも今日は雰囲気的に誰かのところに潜り込む予定だったので、喜んでシャーロットに連れて行かれた。
霞沙羅達は話し合いで二人部屋に行ってしまい、シャーロットは自分の部屋に戻り、フィーネは温泉に行ってしまった。
「折角大きな事件が終わったと思ったのになー」
一応アンナマリーにも日本で起きていることは伝えておいた。関係ないとは言っても、住民が何をしているのかは知っておいた方がいい。星の事は置いておいて。
「今回もアリシア様が手を貸すのか?」
「今回は話が大きくなってるから無いんじゃないかなー。そのかわり元々ここにいた純凪さんが協力するみたいだからね。事件が起きているところも東京っていう、ここからずっと離れた場所だし、今回は国家レベルで対応するから、余計な異世界人が介入してもねー」
今のところは霞沙羅からも手助けして欲しいとは言われていない。準備で手伝うことはあるかもしれないけれど、現場に来いというような事にはならないだろう。
前回のように、不測の事態があればフィーネが指示を出してくることはあるかもしれないけれど、伽里奈が進んで手を貸しに行くことは、今のところはない。
管理人だし。
「こういうことって多いの?」
この館の外の世界を知らないクラウディアでも多分そんな事は無いとは思っているけれど、とりあえず聞いた。
「そんな事は無いよ。1年半に一回程度、妙な神様の影響を受けるけど、そこまで生活に影響が出る状況じゃ無かったしねー」
前回は狂信者が動いたから大事件に発展しただけであって、通常は金星の接近があったからといって、あんな事件が起こるようなことは無い。
「でも随分逞しくなったわね。最後に、魔女戦争の終わり頃に会ってから4年くらい経っているし。大人になったのかしらね」
「そうかなー」
「私はまだ子供だったから、ちょっと憧れが入っていたかもしれないんですけど、クラウディアさんから見て、このアリシア様は変わったんですか?」
「昔はもうちょっといい加減だった気がするけど、動く前に考えるようになったわね」
「あ、ひどーい」
妙に冷静なところはあったけれど、服装からしてあんまり考えていない天然なところもあった。
まあこれがなければ世界は救えなかっただろうけれど、そんな裏の話はクラウディアも知らない。
けれど、なぜか正解を引くことは多かった。
「それにしても、リバヒル王国のクラウディアさんとこうやって同じ建物の中で話が出来る日が来るとは思いませんでした」
クラウディアも、冒険譚を書いているのが魔術師のルビィなだけに、結構ちゃんと書かれている。そういう意味で冒険譚を愛読しているアンナマリー的に、物語の登場人物の一人としていつか会ってみたいと思っていた。
「私としてはお世話の子が異世界人だったり、知人の手で別の異世界にある家に連れてこられたりで大変だったわ」
「私もある日、急にこの家にたどり着いて、本当に何ですぐに受け入れたのか不思議です」
「アリシアがいたからじゃないの?」
「あの時はなんか記憶がどうとかって、正体がわからなかったんですよね」
「それは大変ねえ」
「それはそうと、今日は寝れそう?」
「うーん、どうかしら。ちょっと興奮してしまいそうね」
霞沙羅達がこの世界のトラブルの対策会議をしているというのに、館の中は静かだ。それもあって、雪が窓に当たる音がして、外はどうなってしまうのか気になる。
それにしても温泉はとても良かった。あのちょっとぬるっとした感じのある、なめらかなお湯は、長寿で若いままのエルフであってもお肌に良さそうだと解った。
どのくらいここにいるのかは解らないけれど、いる間は毎日温泉に入ろう、と思えるくらい。
「ボクとエリアスとシスティーはあそこの部屋にいるから、家の事で解らないことがあったら聞きに来てね」
「ええ、そうするわ」
フィーネが温泉から出てきて、部屋に帰って行こうとした時に
「小僧、またマッサージをせい」
「はーい」
「あら、マッサージもあるの?」
「まあ時間がある時にねー」
男である伽里奈が女にマッサージをする。これでいいのかと思わないこともないけれど、クラウディアも伽里奈を危険性のある男とは見ていないので、良さそうかもと考えた。
「エルフよ、よく眠れるぞい」
「それなら頼もうかしら」
最初の野外演習で捻挫をして、英雄様にとてもよくして貰ったアンナマリーも、個室でやってもらう事は無いけれど、なんか足が疲れた日には、この談話室で軽く揉んで貰ってから寝ているくらいだ。
「え、まあいいけど、寝るのを覚悟してね。今日はもう何もやる気がなければ、血行をよくするために温泉で軽く暖まって、それから行くよ」
「じゃあそうしようかしら」
「ボクは明日の料理の準備をしてるから、声をかけてね」
この時間から料理? と思うけれど、アンナマリーは何とも思っていないから、伽里奈はそういう人なのだろうと納得して、クラウディアは二度目の温泉に向かった。
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