遠くの場所から来た女 -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「私は北海道担当だぜ」
前日に続いて朝から横浜の軍本部に呼び出された。真っ先に自分を呼び出そうとする軍本部の体制はどうなっているのだろうか。
「おう、これを見るじゃん」
「何だよこれは」
吉祥院が見せた画像には、旧新宿駅東側の廃墟群を押しつぶすように、巨大な岩のような物が鎮座していた。
軍は今のところ情報を外に出していないけれど、こんな大きなモノが現れても誰からも報道がされていないように、全く被害など出ていないし、旧23区外からわざわざ新宿方向を見るような市民もいないので騒ぎになっていない。軍の方も深夜になってようやくこの岩を確認したという。
なにせ何の前触れも無く、出現した。
それで本部内はちょっと混乱している。この岩からは何も動きが無いのがせめてもの救いだ。
岩は楕円のような形をしていて、幅は恐らく400メートル、奥行きは160メートル、高さは60メートルくらい、と今は周囲の道や鉄路の残骸との比較からそう推定されている。
「岩というよりは、小惑星みたいな外見だな」
霞沙羅の言うとおり、表面には何かがぶつかって出来たような大小のクレーターが無数にある。
「そんな物が落ちてきたってのも変すぎだねえ。後ねえ、これ見てみ」
新宿と言えば、マリネイラの魔力が濃く滞留していて、常時うっすらと霧のようなものが立ちこめていたり、周辺からの侵入どころか観測も難しい場所だ。
それが上空に飛ばしたドローンや航空機からの映像に、岩周辺だけ割とくっきりと映っている。
ということはこの辺だけ魔力が大分薄くなっているという事。
「幻想獣関係か?」
「いんやー、そういう反応は無いんだよねー」
厄災戦の時は洞窟のような拠点を掘って作った幻想獣もいた。でもそういうのとは違う
岩からはまだ何も反応が無い。魔力を測定しても何も無いただの岩状態。
普通ならこんな大きさの小惑星が落ちてきたといったら、この星は滅亡してもおかしくはない。でも事前にそんな天体はは世界的にも観測されていたいし、見た目からして落ちてきたというような事は無いのがわかる。なにせクレーターのようなくぼみが出来ていない。
それどころか地形が変わっていることはどこも無く、あえて言えば岩が踏んでいるところの廃墟が潰されているだけで、まるで誰かが置いたような感じになっている。
何者かが空間転移でここに運んできたのか。でもこんな大きなモノを転移で運んだのなら、観測所からの観測は常時しているから、空間転移魔術の動きが観測されたはずだ。
ただ間違いなく、ただの岩のわけはない。
「もうちょっと近くまで行って見たいねえ。横浜は遠すぎだよ」
「同感だが、空霜も呼んでおけよ」
新宿から離れた横浜で、モニター越しで映像とデータを見ていても仕方が無い。しかも今見ているリアルタイムの映像はかなりの望遠で撮られているもの。
これじゃどうにもならないと、霞沙羅と吉祥院はここよりはまだ近い、いつもの新丸子の観測所まで移動をした。
* * *
何せこんな事は世界的にも珍しい。
軍だけでなく、岩の確認のために魔術協会も寺院庁も人を出してくれて、新宿に近めの何カ所かの観測所に集まって、今はどうするのかという指示待ち状態。
「さすがに警報は出したか」
何が起きるか解らない。とにかく、また旧23区周辺に注意の案内を出した。今回は警報ではない。とりあえずは先日の事件における事後調査ということで、住民を不安にさせないようにしてある。
「空霜は何か解る事はあるかい?」
「ウチもよくわからないよ。ただこの星のどこかにあったものでは無いことはわかるね」
「じゃあ何だ、見た目通り宇宙から来たとでも言うのか?」
「一応ウチも星の海を旅してこの星に来たのだ」
「そうだったな」
空霜は昔に、彗星として地球にやってきた存在だ。
ではそのセンも捨てられなくなった。ただ、空霜が知らないといっているので、同じ存在である星雫の剣ではない。
「すまない、遅くなった」
榊もやってきた。軍的にはまたこの3人をそろえておいた方がいいと判断したのだ。
やってきて早々、榊も画像を見て眉をひそめた。
「何だこれは?」
「そういう反応になるよな」
榊の反応は当たり前の事で。誰もあの岩が何なのか解らない。
場所が場所だけにマリネイラ系だと予測している人間もいる。じゃあ卵的な何かで、中から幻想獣でもでてくるのか?
「ようやく航空機が偵察に行くようでやんすよ」
旧新宿駅上空付近はまるで台風の目のように霧が晴れて、今なら写真が撮れる事が解っているから、もう少し良い観測装置を積んだ航空機が出発したようだ。
それと並行して、新しい感知器を持った、地上からの観測隊が、先日の討伐結果を踏まえて安全だと思われる位置まで行き、そこから観測用ドローンを飛ばす為に、この観測所から出て行った。
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