今後を見据えて -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ランチの時間になった。
アリシアとしては、鉄板の上で焼いたステーキはカットステーキにして、ニンニク醤油やワイン醤油やバター醤油など、いくつか作った醤油ベースのステーキソースを色々と食べ比べして貰う事にした。
それと魔法学院分校で作っていた味噌も持ってきた。熟成期間が短めな麦味噌だけで、残念ながら本命の大豆の材料の味噌はまだ時間がかかるからそれはまだ先だ。
その麦味噌を使って、スープ代わりの味噌ラーメンまで作った。
「何度も言うが、お前の食にかける執念は恐ろしいな」
霞沙羅も前々から聞いてはいたけれど、とうとう別の国から醤油を持ってきただけじゃなくて、味噌まで完成させた。
「ホントにあの時と同じ大豆のソースか?」
当時は興味がわかなかったので、あまり美味しくなかったという感想以外の印象は薄いけれど、言われてみればあっさりしたというかしょっぱい独特な味の微妙なソースを味わったことは皆が覚えている。
今日のソースはそれを加工をしたものではあるけれど、これがステーキに合う。
ダメだった時用に、こちらではメジャーなワイン仕立てのソースも作って貰っているけれど、新しい味として大豆ソースを使うのもありだなと全員が思った。
「同じ国で買ってきたから」
「このライスは前に家に教えて貰ったが、このソースが加わると大分変わるナ」
「ほんとね」
焼いて出た肉汁だけでなくステーキソースを加えてガーリックライスも作った。やっぱりあると味がはっきりする。
「私は食べたことないけど」
「ライアのところに教えた料理は、ガーリックライスとはあんまり相性が良くなさそうだったから」
「オレも食った事無いぜ。しかしライスがこんなに美味いとはな」
ライアもハルキスも黙々と味わっている。
リバヒル王国もまだ飛行船での交易が再開されていないけれど、今後再開するようなことがあれば、王か大臣にでも頼んで真っ先にこの大豆ソースを輸入して欲しいと思い始めた。
ステーキは劇場で出しているから、このソースはいける。説得する時にはアリシアを呼びたい。
「アリシア君、ヒルダから聞いてはいないだろうが、午後にはラスタルから飛行船が来る。飛び立つ前にブルックスで獲れた魚介のいくつかを頼んでいるのだが、夕食用に何か提案してくれないか?」
新しい食材が味わえるという事もあってルハードもやってきている。
そして今回もヒルダの子供2人をフィーネが担当している。
「そんな大事な話を忘れていたわ」
ヒルダが魚の事を忘れるくらい、霞沙羅達を混ぜた鍛錬が楽しかっただけだ。今はステーキが美味しい。ソースもいいけれど、こういう、色々なソースを自由につける食べ方も悪くない感じだ。
「この前アーちゃんが持ってきた大きな冷凍箱に各一食分ずつ積んだ飛行船が、地方領主のところを回っているのダ」
「そういえばこの前タウ様が言ってたっけ。何を頼んだんです?」
「エビとカニといくつかの魚だ」
飛行船はずっと移動しながらの宿泊が出来るようになったので、荷物を下ろす際に主には飲み水を補給したら、すぐにお隣のルーゼン領に飛び立ってしまうそうだ。
後で解ったことだけれど、以前にアリシアが提出した魚料理のレシピ帳が納品される魚介に付いていた。
海の魚料理が無い内陸では確かにこれは大事。誰がやったか知らないけれど、なかなか気が利く人がいたものだ。
「なんだ、そういう事ならウチの土地にも海の魚が来るのか?」
今はラスタルにいるからハルキスは知らないけれど、当然のように地元も航路に含まれているそうだ。きっと親と一部の人で消費されるのだろうけれど、いずれ多くの部族の人の口にも入るようになって欲しいものである。
「本格的な行き来は輸送船の完成待ちダ。あの時システィーが切った森の木がこんなところで役に立つとはナ」
どうせ噴火の影響で燃えてしまうのだからと豪快に伐採した木のおかげで、輸送船の建造も順調に進んでいる。
「そうですか。でもあれを提案したのは霞沙羅さんですからねえ」
システィーにしても、木を切るどころかその後に畑の開墾までやるとは思ってもみなかった。
「こいつのところの星雫の剣がちょうど開墾だの平地の造成にいい形をしてたからな」
「別に本人も嫌がっていないでありんすから」
先が三つ叉になっているだけに、土を掘り返すのは空霜の方は得意としている。厄災戦の時には作戦前の瓦礫の撤去にも活躍したモノだ。
「先生達のおかげでウチの甘蕪畑も拡張できたしな。何か恩を返したいぜ」
「甘蕪って何の話? 今更あんな不人気な食べ物を増産するの?」
「ライアには言ってなかったのね。あれが砂糖を生むのが解ったから、ラスタル国内で増産するのよ。ウチもシスティーに畑を開墾して貰ったわ。ちなみにこれがその砂糖よ」
ヒルダは今飲んでいる紅茶用の砂糖を指さした。
「え、あの不細工な蕪がこれになるの? ちょっとー、どうせアリシアでしょ」
「リバヒルって甘蕪の生産に向いてる土地があんまり無いでしょー?」
「漬物用に作ってる場所はそれなりにあるわよ。どういうことか教えなさいよ」
砂糖の流通量が増えれば劇場のデザートも作りやすくなる。栽培開始までは季節的にまだ間に合うだろうから、早くこの事を市長か知り合いの貴族にでも相談しないと。
「はいはーい」
久しぶりに賑やかなひとときだった。
なんだかんだでかつての仲間と会う機会は増えた。アリシアがフラム王国に復帰する前は、全員が揃うのは一年に一度程度くらいだったそうだから、5人の方もかなり考えが変わっているのだろう。
多分霞沙羅達と出会えたことが一番大きな原因だろう。やどりぎ館さまさまである。
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