雪の季節の思い出 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
先日の横浜校に続いて神戸校からも雪中研修の生徒がやってきた。
これまで2年A組同士の妙なぶつかり合いは無いものの、自分たちのテリトリーに他校生徒が来るというのはやっぱり気持ち的によろしくないようで、数ヶ月後には選抜大会でぶつかり合う相手の気配を感じて、1年と2年のA組のモチベーションは上がる一方。勿論いいことだけれど。
それは教師も同じようで、折角ロンドンから帰ってきたのだからと、伽里奈とシャーロットの2人に対して協力の要請が入る事になった。
選抜、と付くように、A組所属だからといって全員が大会に出場するわけでは無い。
その選抜メンバーを決めるのは学年が変わってから、学生それぞれの成績や種目に対する適性を見て決まるわけだけれど、今はやる気を出した全員のケアをして欲しいとのこと。
シャーロットも大学進学後の準備をしたいということで、E組の子達には悪いけれど、これからはA組の実習時間を優先に手伝うことになった。
「やっぱりああいうのを見ちゃうとさ」
とは一年A組生徒の感想。
一ノ瀬達からは聞いているけれど、上野での霞沙羅達3人の戦闘動画は皆さん、結構ヘビーローテーションで見ているようで、学生らしく「いつかああなりたい」という事を夢見るようになっているとか。
「女子の励みになるわよね」
鮮明に映っていないけれど伽里奈達の方は、女子ウケがいい。
吉祥院と空霜を除いて、ここ小樽に住んでるし、2人が附属高校に通ってるし、今ここにいるんだけどね、と伽里奈は苦笑い。
「あの、大会は競技ですよね?」
教師達から説明を受ける際に、ここ数回分の選抜大会の内容をまとめて動画を見せて貰ったけれど、それは個人かグループ単位で行われる技術競技だ。
命中率とか、破壊力、連続発射とかで争って、高校では対人要素は無い。ましてやゴーレムを破壊するとか、そういう事はない。与えられたミッションや目的をどうこなすのか、それが腕の見せ所。
「今は彼らに自分の出来る限界を知ってもらいたい。それぞれどの競技を目指しているのかというものがあるだろう。それが出来るのか、何が足りないのか、何が必要なのか考えて貰いたいのだ」
先生いいこと言うわね、とシャーロットは思う。
今の自分に何が必要なのか、と本人に考えさせる機会を与える。このままA組にいたければ、ただ教えられるだけではダメだ。
「メモ、メモ」
「じゃあまあ、やる気になるやつ、作りましょうか。{立てゴーレム}」
連日の降雪で余っている雪を使ってサラマンダーを5体作り出した。
一ノ瀬達は解っているけれど、他の生徒にはまだ見せていない。1体じゃなくて5体もの、いかにも敵という小型ドラゴンのような姿に、生徒達は喜んだ。
「喜ぶのかなあ」
さすが日本といったところか。ゲームやアニメで知ってはいるけれど、本物を知らないって事は素晴らしい。
「雪のゴーレムだし。じゃあ伽里奈、術式を教えてよ」
「はーい」
シャーロットはまずは1体から始めた。でもなんか造形が甘いような感じがする。伽里奈はこれをポンと思いつきで作ってしまうのだから恐ろしい。
数もそうだし、さすがに伽里奈レベルで運用しようというのは、いかに天才少女でもまだ早いといったところだ。
それもあって6月の大学入学まで、もうちょっとここにいたいなと思う。
「よし、では始めようか」
教師の号令で生徒達は動き回るゴーレムをターゲットにして、各々考えながら魔法を打ち始めた。
ウチの高校はこんな授業が出来るんだぞ。森の向こうにいる、雪に四苦八苦しているであろう神戸校の生徒に向けて、各々が心の中でつぶやいた。
* * *
「シャーロットは雪まつりは見に行かないの?」
放課後の実験にもシャーロットは参加した。
とにかく今はゴーレムの制御をモノにするという目標のためだ。
その休憩時間に一ノ瀬が声をかけてきた。
「明日行く予定よ」
「私達も折角いい時期にここにいるんだし、初めての雪まつりを楽しみたいわね」
秋田から北海道に来て初めての冬だから、隅っことは言え札幌で生活をしている一ノ瀬と藤井はこの大イベントを楽しむ予定だ。
「俺たちはガキの頃から行っているが、楽しんでこいよ」
今林三兄弟は札幌の人間なので、子供の頃からずっと行っている。まあそれでも雪像を作っている最中から会場を見ているので楽しみにしている。
金星接近の影響中でもせっせと大通公園に雪像を作り続けた人達には感謝しか無い。
「小樽も地味に雪イベントやってるからねー」
「ランタンのやつよね。方向違うけど、学校が終わってからでも見て帰りたいわ」
折角いつもの日常を取り戻したのだから、終わりが見えてきた日本での滞在時間を楽しみたいところだ。
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