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合格祝いに行こう -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 ペンギンがかわいすぎてアンナマリーが大興奮した水族館を後にして、今日のメインとなるクマちゃん牧場に移動した。


 麓から施設の入り口までを結ぶロープウェイに別の意味で興奮するアンナマリーをなだめながら、たどり着いた山の上のクマちゃん牧場も、こんな冬だというのに観光客は多かった。


「今日は晴れているからいいんですけど」


 けど、やっぱり寒い。


「家にも温泉はありますけど、登別温泉で日帰り入浴でも探しましょうか」

「それがよいであろうな」

「はやくクマちゃんのいる場所に行くわよ」


 そして今度はシャーロットが興奮する番だ。


 ネット情報で既に学習していた、クマへのおやつ投げを体験するべく、シャーロットは現場へ一直線。日々の登下校の甲斐あって、もう雪の地面もモノともしなくなっている。


「リンゴじゃないのね…」


 販売している投げ込む用のおやつはリンゴでは無く、特製のクッキーと鮭だった。


「見たのは別の施設だったんじゃないの? 何カ所かあるみたいだし」

「そうかも。でもいいわ。クマちゃんはリンゴより鮭が好きだもの」


 ヒグマといえば鮭が似合う。シャーロットは納得して、販売機から2種類のおやつを買って、早速クマの展示場前に立った。


「で、デカいな」


 シャーロットが「クマちゃん」とか言うのでかわいい感じを期待していたアンナマリーだったけれど、相手は日本最大の肉食獣ヒグマ。


 どう見ても無害そうなペンギンとは違ってそのでかさはありがたくない。


 安全のためにお客とは高低差と距離があるとはいえ、これは大きい。その扱いに、危険そうな生き物である事はわかる。


「小僧であれば一撃であろう?」

「まあそうなんですけど」


 軍の演習の時に隊員が遭遇してしまって、仕方なく殴って気絶させた経験はある。それどころか、冒険中は魔獣に分類される系のクマを何体消し炭にしてきたことか。


「クマちゃーん、いくわよー」


 迫力のある見た目とは裏腹に、クマたちは噂通りに片手をあげたり、手を振ったり、立ち上がったり、座って足を広げたりと、おやつちょうだいアピールをしている。


 シャーロットが投げたクッキーは一番手前にいた一頭がキャッチして、もぐもぐ食べた。


「かわいー」

「ま、まあかわいいもんだな。…なんでフィーネさんと伽里奈は一歩下がっているんだ?」

「飼い慣らされているとはいえ、元は人も襲う猛獣じゃ。警戒心も多少は残っておるであろう。そこに我の姿を見せるのはあまりよくない」

「ちょっと前にモートレルの森で怖がられたことがあるから。アンナマリーはシャーロットと一緒におやつを投げてあげてよ」


 それなりに距離があるので伽里奈(アリシア)はどうなるか解らないけれど、神であるフィーネはこれまでずっと経験しているから、これ以上近寄るとクマ達が恐怖で震え上がるのが解っている。


 そうなるとこの和やかな雰囲気が一瞬で凍り付くだろう。


「ペンギンは問題なかったじゃないか」

「ペンギンは警戒心が無いから」

「そうなのか?」


 しかし仕草を見ているとなかなか愛嬌がある。そんなクマ達を見て周囲の観光客達も和やかにおやつを投げている。


「またいくわよー」


 楽しそうなシャーロットにつられてアンナマリーも一緒になっておやつを投げまくった。


 特にアンナマリーは腕力があるので、場所取りに負けてあまりおやつが飛んで来なさそうな奥の方に仕方なくいるクマにいくつも鮭を命中させるので、そこに数頭が集まってちょっとした争奪戦になった。


 何度もおやつを買っては投げて、やがてシャーロットが満足したところで他の施設も回ったあと、施設内にあるレストランで遅めの昼食をとった。


「…寒かったわ」

「多分一番寒い時期だし、海に近かった水族館と違って山の上だからねー」

「お前はそんなに寒くないだろう?」


 アンナマリーはペンギンのぬいぐるみに話しかけた。水族館で買ってからずっと抱いていることから、またベッドの上の住民が増えるだろう事が予想される。


 しかも赤ちゃん。ペンギンの雛だということが解っているから、保護欲も沸くというもの。


 チンアナゴの方はシャーロットのリュックの中に入れられている。さすがにクマの魅力には勝てなかった。


「クマちゃんのぬいぐるみは売ってるのよね?」

「いっぱいあるみたいだよー」

「それは私が自分で買うから。このためにお金を持ってきてるから」


 何はともあれ、大学入学が決まってよかった。元々大丈夫だっただろうけれど、研究テーマも決まってよりよい形で入学できそうだ。


「アンナマリー、あんまり王女様にペンギンの話しをしないでね。ラスタルの町でペンギンが流行り始めてるから」

「そうみたいだな。エリックからもぬいぐるみが欲しいと言われた。今度貰っていくぞ」

「貴族の…、そんなところまでいってるんだね」

「くう、キングもかわいかった。今日は寒かったろうから、家に帰ったら私のベッドに入れてやるぞ。友達も待っているからな。クマもいるぞ」

「ショップではどんなクマちゃんが私を待っているのかしら」


 二人とも楽しかったのならいい。


「小僧、日帰り温泉は、やめておいた方がよさそうじゃのう」

「え、どうしてです?」

「わからぬか?」

「あー…、やめましょうか」


 彼女達は買った、もしくはこれから買うぬいぐるみを早く部屋に配置したくなるだろう。


 どうせ館にも温泉はあるし、シャーロットもアンナマリーもその他大勢のお客と一緒に入る広い浴場には慣れていない。


 だったら、限定された人しかいない、気兼ねなく入れる館の温泉の方がいいだろう。


 食事を終えるとショップに行き、シャーロットは一人では持ちきれないくらいのクマのぬいぐるみを買ってやどりぎ館に帰った。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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