久しぶりに変わったことが無い日常 -7-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
次の日は霞沙羅を連れてザクスン王国にある聖都ギランドルにやってきた。
霞沙羅は事件の後処理とか軍の広報の仕事がようやく一段落したことで、しばらく休日になったから、もう数日後に迫った鎮魂の儀の最終打ち合わせに気兼ねなく来る事が出来た。
打ち合わせといっても、イベントの流れの確認だったり現場の確認だったりするけれど。
「お姉様、お久しぶりです」
いつもアリシア担当なのか、神殿ではプリシラ王女が出迎えてくれて、すすっと腕を組んできた。
「お前、その姫さんに随分なつかれてるよな」
「そんなに頻繁に会う仲では無いんですけどね」
それどころか、アリシアの人生の中で、このプリシラ王女といた日数は合計しても一ヶ月あるかないかなんじゃないかというところ。
だとしても護衛の依頼の時はずっと側にいて色々な話を聞かせてくれたから、まだまだ子供だったプリシラにとっては甘えさせてくれる優しい年上の人間だった。
あれから何年か経って、ここ最近は久しぶりに会ってもアリシアは態度が変わっていないので、引き続き甘えさせて貰っている感じだ。
「私のことを忘れて貰っては困るわ」
プリシラ王女の護衛というよりも、霞沙羅の案内役として、エルフのエミリアもやってきている。
「やっぱりこっちの方がいいよな」
「何の話?」
「ラスタルに来たクラウディアとかいうのと会ったんだが、イメージ的にな」
「クラウディアよりいいって? 解ってるじゃない」
「ボクはクラウディアの方が」
「だまらっしゃい」
霞沙羅に「こっちがいい」と言われてエミリアは上機嫌になった。何度見でも、美にうるさいエルフの目でもやっぱり霞沙羅は美人だ。
自分が認めた相手から「人気のあるあっちよりお前の方がいい」と言われれば悪い気はしない。
知り合いの中では誰からも評判のいいクラウディアだ。異世界人だけれど、いい女から迷いの無い高評価を受ければうれしい。
旦那のキールからの言葉は勿論別格だが、この霞沙羅からの言葉だけでしばらくご機嫌でいられそうだ。
「それでは当日の流れを説明しますね」
神殿にある会議室に案内されて、ギャバン教の神官から鎮魂の儀当日のスケジュールを説明された。
「なんか私がトリなんだが、教団としてそれでいいのか?」
トリといっても、儀式が始まる前に短めの一曲、教皇他、上級神官数名からの説教やお言葉、祈りの時間があり、そして終わりに一曲、だったのだが、最期に霞沙羅の出番が追加されている。
「カサラ様は先日の魔族襲来事件での演奏実績がございますので。これは教団だけでなく王家や将軍を含めた、あの時サイアンにいた武人達たっての依頼です。遠慮をする必要はありません」
「あの、この方がカサラさんの前に演奏されるのです」
プリシラ王女が補足してくれた。
なんとただの説明係では無かった。
「私も落ち着いた状態で聴いてみたいのです!」
「そう言うのなら…」
部外者なのに悪いなー、と思っていたら、本来はトリとなる人間に「あなたの演奏が聴きたい!」と全力で言われてしまったら文句の言いようがない。
先日の、王都襲撃時の演奏が思った以上に噂になっているようだ。
「じゃあ、やるか」
日本でも、新年のコンサートでも自分より上手い奴はいくらでもいるのにな、と思っているのだけれど、なぜかいつも最後のメインイベント扱い。しかも演奏後にはそいつらも感動して握手をしてくる始末だ。
まあ仕方が無い。ギャバンの野郎も「是非」みたいなことを言っていたので、怒られることは無いだろう。
「霞沙羅さんは何を着ればいいんですか? 向こうだとドレスとか着てるんですけど」
「おう、そうだよ。この世界に来る時はいつも今着ている、一世代前の戦闘服なんだがな」
「それでいいじゃない。純白の上下に紫のラインと黒い袖。カサラのちょっと日焼けっぽい肌に合っているわ」
「とても綺麗にお手入れもされているようですよ」
これについてはエミリアもプリシラもこれでいいと言う。
「私も神官の衣装で演奏していますので、デザイン的にも似通っているその服で良いかと」
「まあ霞沙羅さんのその服、ライア達にも好評ですしね」
「じゃあそうするか。で、お前は?」
アリシアにとっては住み慣れた地元の世界だけあって、あんまり服装を気にしていない。
「アンナマリーに、セレモニーの時に国から貰った服を着ろと言われてます。本当は以前に吉祥院さんに貰った巫女服セットがいいんですけどねー」
「ダメに決まってるだろ」
いくらアシルステラで素性が解らない服であっても、アリシアはフラム王国からの代表者の側面もある。
しかも死者の魂を鎮めるという意味合いのある厳格な宗教儀式。
宗教的な服であってもダメだ。
吉祥院が面白そうだと渡した女物だというのが一番ダメだ。
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