久しぶりに変わったことが無い日常 -6-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「それで前に言ってたぬいぐるみを持ってきたよ」
学院での用事は終わり、アンナマリーと約束した時間までまだあるので、アリシアはクリスにペンギンのぬいぐるみを渡しに。クラウディアの部屋までやってきた。
「ホントにこの人が作ったんですか?」
「裁縫の腕はライアの方が上手いが、こういうのはもっと小さかいのを作っていたけれど、冒険中でも作っていたナ」
今回も実物大ジェンツーペンギンなのでなかなか大きい。
「えー、かわいい」
クリスはうれしそうにペンギンのぬいぐるみを抱きしめた。
そういえば日本ではまたペンギンを見に行かないといけない。あとクマも。というか今回はシャーロットのお祝いなのでクマがメインだ。有名なクマちゃん牧場と水族館はまあまあ近くと言ってもいいかもしれない場所にあるので、同じ日に行く予定だ。
「街を見るとこれっぽいのを持ってる子供がいるわね。王女様が持っているのが民衆の目をひいたみたいね」
「なんかそうみたい。王女様が出かける時に連れて行ってるから、見よう見まねで親が作ってるのかな」
「クリス、王女様には見せないようにしなさいね」
こちらのぬいぐるみも実物大だから、家族が欲しい、と取られるかもしれない。
「そうしておきます」
クリスはぬいぐるみを持って部屋に入っていってしまった。なぜペンギンを知っているのか解らないけれど、気に入ってくれたのならそれでいい。
その後は、空いたスペースになんか無理矢理椅子を3つ置いた場所でアリシア達は話を始めた。
「それでここでの生活はどうなの?」
「まあこんなものじゃないかしら。ルビィのところからリューネも来てくれるし。最近は色々と散歩をして、ラスタルの町を見て回っているのよ」
「そうなんだー」
「そうそう、お店に売ってる生のお魚って、買って大丈夫なの?」
「今は国が運営している店舗しかなくて、アーちゃんが作った冷蔵箱の技術を使った箱で魚介が保冷されているから、問題なく食べられルゾ。ブルックスに行ったり、依頼して買って来て貰ったりしなくてよくなったから、貴族達は喜んで買っていくし、ウチも最近は時々買っていル」
「そうなのね。王都カーレーンに比べるとちょっとお値段が高いけれど、一度買ってみるわ。クリスも魚の料理ができるみたいだし」
値段が高いと言っても、アリシアが帰ってくる前に比べれば価格はかなり下がっていて、毎日お店に並ぶ程度には需要があるといえる状況になった。
リューネの実家である高級ホテルでも魚料理が出るようになったくらいだ。
「カーレーンの市場みたいに庶民の手にも届くくらいになればねー」
平民の家庭にとっては家族に何かいい事があった時に記念に、という値段だし、そんなだから大衆的な食堂で出せる訳でもない。
これにはまだ時間はかかるだろうが、いずれ普通に魚が食べられるようになって欲しい。安く買えるようになれば、実家の食堂用にも魚料理を教えることが出来る。
それを望んでいるのはアリシア本人なのだから、流通とか、箱の改良とか、ブルックスの再開発に手を貸さないとダメだろう。
そうなるとまた忙しくなりそうだ。でも話しを聞いてからは、ちょっとだけネットで漁業のことを調べてみたりとやる気はある。
「あれ、この絵なに?」
小さめな絵が額に入れられて、インテリアとして壁にぶら下げられていた。
リバヒル王国は芸術に力を入れているので、現地の人の創作品かな、と思ったけれど、アリシアの目には何かの漫画かアニメのキャラにしか見えない。
「クリスが私を描いてくれたんだけど、珍しい絵柄よね」
似顔絵というよりはクラウディアを漫画のキャラクターに落とし込んだような絵柄だ。プロレベルとは言わないけれど、なかなか悪くないレベルに達した絵ではある。このままいけばあるいは、と思わせてくれる。
アリシアはそういう趣味は無いけれど、日本に住んでいれば、日常的に触れる事が出来る類いの絵柄だ。
こちらの世界の絵は写実的な絵が主流になってきていて、たまに抽象的な場合がある。しかしこれは…。
「カーレーンにある知人の工房に見せたら、なんだこれは、って、あの子が描いた絵を一枚持っていったりしたわ。芸術家の人も気になるのね」
「芸術は解らないが、見たことが無い絵柄だナ」
「なんだろう、これ…」
なんとも不思議な女の子だ。
やどりぎ館の管理人をやっているから日本だのヤマノワタイだの、他世界の文化に触れることもあるから感覚がおかしくなってきてはいるけれど、これはどうなっているのだろうか。
何かの機会があれば本人に訊いてみたいところだ。
やがて時間になったので、アリシアはアンナマリーと荷物を回収してやどりぎ館に帰って行った。
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