久しぶりに変わったことが無い日常 -5-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「急で悪いが、お前の予定がわからないモノでな、折角来たのだから受け取っていくがいい」
飛行船を見た後に、アリシアの新しい階位の授与が行われた。
最近はアリシアがいつ来るのか解らないので、元々今日は来る予定が確定していた事もあって、この時とばかりにやったようだ。
「では魔道士階位10位だ」
「10位ですかー」
これで1つ上がった。しかし10位ということは、とうとう自分も「研究バカ」の仲間入りをしてしまったという事。
「理由は、言わずとも解るだろう? これからも学院と国の発展のために精進して欲しいものだな」
ということで階位11位の証から10位の証に取り替えが行われた。
わずか数ヶ月で、愛着が沸く間もなく、ああさようなら。でも今度は長いだろう。
「ここから先はいかにお前でも厳しいぞ」
「そうでしょうねー」
正直、平民のいち宿屋出身の自分がよくこんなところまでたどり着いたモノだとは思う。
うれしいことはうれしいけれど、もうこんなところでいいかなとは思う。
しかもここから先は更に一歩一歩が重いモノとなるだろう。9位になろうとすれば何年かかるだろうか。
と思ってみたけれど、まだまだ日本で学んだ事のフィードバック項目は多い。
特に学院の教育に関するネタは正直まだ何も始まっていないと言ってもいい。
逆の場合は結構、向こうの世界にもたらしているのだけれど、普段はこっちにいないのだからそんなものだろう。
ふと見ると、メンバーの中にルビィがいる。自分と同じ「研究バカ」のところに来ようとしていることを、今回は喜んでいるけれど、自分はまだあの位置に行きたくない。
確かに、日本側ではここしばらく続いた金星の虜の件で霞沙羅と吉祥院に付き合った結果、魔術の研究への抵抗が無くなっている。
でもそういうのじゃない。今やりたいことはこれじゃない。
「ここから先はボクの力だけでは難しいと思いますね。ボクがいない間も学院に居続けたルー…、ルビィの方が色々とアドバンテージがあると思いますので、出来たら協力というか、最近は吉祥院さんともお互いの魔術の話が出来るようになって来たようなので、ボクとは別の視点から手を借りたいかなと思います」
「アーちゃん…」
ルビィはその言葉にちょっと感激してくれたようだ。
「あのキッショウイン殿と、そうか。お前も裏で勉強しているのだな。それでは昔からのライバル同士、アリシアと手を携えて我が国の魔術発展に力を貸して欲しいものだ」
タウ達も満足がいく答えをアリシアが口にしたので喜んでいる。このところの、以前に11位になった時以上に、精力的な行動をしてくれているように見えているので、うれしく思っているのだ。
* * *
「実際のところ、吉祥院さんの向こうでの立ち位置はどのくらいなのダ?」
「魔術師のランクで言えば、こっちで言う賢者レベルみたい。吉祥院さんの家を除外すると、この前大きな事件があって、その功績で霞沙羅さんが日本一になっちゃったんだけど、その上の、主に吉祥院の家用に作られたランクがあって、そこにいるから」
「なに、カサラさんてそんなところにいる人なのカ?」
階位の授与が終わって雑談になった。
「まあその、霞沙羅さん本人は軍人としての功績が大きく影響しているからそうでも無いと思ってるみたいだけど」
実際のところ、魔術の腕前はアリシアと同等くらいなので、そこまで優秀な魔術師であるワケでは無いは本人も自覚している。
ただ、数々の魔工具や魔装具を作り、それを操って大きな事件を解決したりと、魔術の使い方は国内でもトップなのは間違いない。
「この前の人? すごい人なのね」
「クラウディアはあまり見ていないが魔装具製作の腕前となると、間違いなくこの大陸に来てもトップクラスだとは思うゾ」
アリシア達の武器をいじれるという事は、最低でも同等のモノを作れると思ってもいい。
それにヒルダとハルキスが持っている練習用の、特になんの力も持っていない武器であっても出来は素晴らしく、恐ろしく頑丈だと評されている。
「キッショウインさんもすごいんだナ」
「戦闘力ならルーちゃんと互角だけど、知識と熱量は上だからねー」
「あの人、時々人格が変わるからなア」
それに、吉祥院の方が積極的にこっちの知識に触れようという意識が大きい。なんと言っても、天望の座にすら顔を覚えられるような行動力がある。
霞沙羅と違ってまだ講義はしていないけれど、タウ達とも話し合いはしていて、アシルステラの魔術で完璧な交流が出来る。
「吉祥院さんも言ってたけど、今は落ち着いたから、自宅で色々話そう、と伝えて欲しいって。まあ文明が違って怖い世界だけど、町に出ていくわけじゃないし、エリアスもいるし、システィーも貸すから」
「それならどこかで時間を取って…」
やどりぎ館で話しをするのもいいけれど、資料がたっぷりある吉祥院家の本宅か、本人が住んでいる横浜のマンションの方が色々と見る事が出来るだろう。
「クラウディアも霞沙羅さんが気になったら連絡してね。どうにもエルフとお近づきになりたいみたいだから」
「そうね。口は悪いけど、結構素敵な感じの人のようね」
「イリーナが参考にしたい人だからナ」
「なぜイリーナが? あの人は神官ではないのでしょう?」
「霞沙羅さんの神様に対するスタンスが軽くてね、それでいて真実を突いてくるから」
「オルガンがめちゃくちゃ上手いのダ。楽譜を一度見ただけでほぼ間違えないし、教皇様が演奏を頼んだくらいだ」
「鎮魂の儀は彼女がオルガンを弾くのだろう?」
いきなり声をかけてきたのはレオナルド将軍だ。
「なぜこんなところに?」
ここは学院だから、レオナルド将軍は魔術とはあまり関係ないと思うのだが、なぜかここにいた。
「騎士団の魔装具の件で相談にな。そう、鎮魂の儀にはオレも行く事になった」
「そうなんですか」
「そのカサラという奴はセネルムントでも話題になっているからな。本当にあの性格の人間が教皇様が呼ぶほどの演奏が出来るのか?」
「向こうの世界でも新年祝いのコンサートとかで大勢の前で弾いてるんですよ。軍でも殉職者向けの行事がありますから、そこでも弾いてます」
「彼女は軍の中ではどの程度の位置にいる人間なのだ?」
「あのー、北海道っている地方の、対魔獣用部門をまとめている人です。それでいてこの前は首都を脅かそうと邪教徒が呼び覚ました、強大な力を持っている魔獣を倒したりしてましたけど」
幻想獣は説明が難しい。
「なんと、強さだけでなく組織内のポジションも相当の人物だったのだな。あのハルキスが先生と呼ぶだけはあるというのか」
「私ら6人が全員信頼している人でス」
「お前達英雄がか? そうか、そこまでの人間なのか。ならば一度ゆっくり話しをしたいものだ」
当然それなりの人物であるだろうとは考えていたけれど、その情報に納得をして将軍は行ってしまった。
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